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東京V
東京V
今季のみどころ
2014年シーズン途中からの指揮となるが、クラブ幹部も冨樫剛一監督自身も今季を「3季目」と捉えている。それ以前にアカデミー監督・コーチとして7年間種を撒き、直接育てて来た秘蔵っ子たちが中心のチームだ。1年目、残留争いという苦境を乗り越え発芽。2年目の昨季は、5連勝、3位浮上を経験するなど急成長を遂げ、蕾をつけた時期もあった。迎える3年目の今年、いよいよ大輪咲かせることができるか。
昨季の最も大きな課題が得点力不足である。ボールを保持しながらも引いた相手を崩せず苦戦し、プレーオフ進出を逃した。その改善策に、クラブは大型補強ではなく、既存選手たちの伸びしろを選んだ。指揮官も「まだまだ連携を深めていけるし、個々も成長できる。何より、みんな本当に去年の悔しさをもって取り組んでいる」と、雪辱に燃えるポテンシャル高い攻撃陣に全幅の信頼と期待を寄せている。
攻撃の鍵として、同監督は「ランニングの質と浮き球」を挙げる。足元が得意な選手が多く、グラウンダーのパスが多い中、クロスを含めたいろいろな種類の“浮いた球”で攻撃の手段を増やしていく狙いだ。高木善朗、南秀仁、杉本竜士、平本一樹といった、発想と遊び心ある生え抜きたちが、浮き球をどのようにバリエーションに加えていくか、楽しみにしたい。また、もう1つの策として、失点を減らすことで得失点差のプラス値を上げていく考えも選手たちに浸透させている。DF陣の奮闘も、攻撃力アップに直結する重要なファクターとなる。
昨年まで積み重ねてきたベースをより深め、前に進み、自分たちの価値を高めていく。『深化、進化、真価』の3つの「シンカ」を、冨樫監督は今季のテーマに掲げる。今オフに訪れたスペイン・バルセロナの象徴的建造物『サグラダファミリア』で閃いた冨樫監督による『ガウディ計画』、名付けて“トガウディ計画”完成へ向けたヴェルディの奮闘に、ぜひご注目あれ。
Reported by 上岡真里江
開幕時の予想布陣
昨季の主力メンバーからGK佐藤優也、MF三竿健斗が抜けた。まず、フラットになった正GK争いが熾烈だ。中3時から冨樫剛一監督がそのポテンシャルに惚れ、東京Vユースへの加入を打診していた鈴木椋大が期限付きとはいえ現時点で一歩リードか。「1年でF・マリノスに戻ろうとは思っていない。来たからには身も心もヴェルディの一員」と、本人も大チャンスに燃える。一方で、東京Vで12年目のシーズンを迎える柴崎貴広も経験値には自信を持っており、易々と譲るつもりはなく「負けない」と火花を散らす。太田岳志も「岐阜の時の印象より全然良い」と指揮官は高評価。新守護神の行方に目が離せない。
最大の注目は、ルーキーながら使い続けた三竿というダブルボランチの一角を失った中盤だろう。冨樫監督は「5、6年レギュラーを張った選手が抜けたわけではない。次に誰の特長を生かすか楽しんでいるぐらい」とむしろ前向き。抜けたところに代わりを立てるのではなく、保有メンバーの特長を最大限生かすという冨樫イズムからも、どのような布陣を基本線にするのかは最大の焦点となる。
現時点で有力なのが、中後雅喜をアンカーとしたダイヤモンドの4-4-2か、ボランチ3枚の4-3-3。ただ、中後が始動直後から負傷離脱しており、開幕に間に合うかは未定。状態次第では、楠美圭史にビッグチャンスが到来しそうだ。
しかし、沖縄でのスカパー!ニューイヤーカップ、帰京後の練習試合などでも、ボックスの4-4-2、4-2-3-1など、メンバーもシステムも様々なパターンを試しており、基本布陣は未だ模索中というのが現状だ。最大の補強ともいえる冨樫チルドレンの一人、期限付き移籍を延長した高木善朗をより輝かせるポジションの回答も含め、指揮官の手腕が問われそうだ。
FW陣では、一般社会でいう大学卒業の年を迎える杉本竜士が「今後の人生を左右する年」と自ら覚悟を決め、活躍を誓う。昨季学んだ「良いチームと強いチームは違う(南秀仁)」ということ。良いチームだからこそ、今季は「強さ」をより求めていく。
Reported by 上岡真里江