J1&J2クラブ戦力分析戦力分析一覧へ
浦和
浦和
今季のみどころ
毎年、鹿児島県・指宿合宿で行われる二次キャンプでは、ミシャ式サッカーの独特な戦術の修練に時間が割かれる。ビルドアップやコンビネーションプレーの精度を高めるべく、徹底したすり合わせ作業によりイメージの共有が図られる。
今年のキャンプでもチームの骨子となるそういった部分に磨きをかけていたが、そのなかで指揮官が特に強調していたのは、攻守の切り替えである。口を酸っぱくして選手に指摘するだけでなく、練習メニューにも攻守の切り替えを意識させるものが組み込まれていた。
浦和は昨シーズンの1stステージを無敗で制したが、その時のキーファクターとなっていたのが素早い攻守の切り替えからのハイプレスだった。だが、その戦い方は機能すれば破壊力抜群だが、うまくハマらなければ自分たちが致命傷を負いかねないハイリスクなものでもある。そのため、今年の合宿では精度をさらに上げることに注力した。対戦相手が浦和の手口を研究するなかでも機能させることができれば、おのずと結果はついてくるだろう。
浦和はミハイロ ペトロヴィッチ監督が就任した2012年から明確なスタイルを築きながら戦っており、その姿勢は2016年も変わらないはずだ。ただ、チームが成長していく上では「継続」の姿勢も必要だが、一方で「変化」も重要だ。現状維持では下降線をたどるだけだ。
浦和の場合、プレースタイルは決まっている。変化を加えるなら陣容を変えるのが手っ取り早い。実際、今オフには2年越しのラブコールで湘南から遠藤航を獲得し、海外からはチャンピオンズリーグ出場経験のあるイリッチを招くなどチームに新たな刺激を注入した。
浦和は毎年のようにタイトルに肉迫しながら最終的に涙をのんでいる。今シーズンこそ負の連鎖から抜け出し、歓喜の瞬間を迎えたい。
Reported by 神谷正明
開幕時の予想布陣
フォーメーションは、もはや浦和のサポーター以外でもイメージできるくらいお馴染みの3-4-2-1。その形から攻撃時には4-1-5に変形して戦うスタイルも就任当初から一貫している。
今シーズンの陣容で注目が集まるのは、やはり後ろの顔ぶれだろう。昨シーズンまでは槙野智章、那須大亮、森脇良太の3バックが不動のレギュラーだったが、今オフに遠藤航、イリッチを補強したことで無風地帯だった最終ラインにポジション争いが生じている。日本代表でも主力を担う槙野はスタメン濃厚と思われるが、3バックの残り2枠をめぐる戦いは熱くなりそうだ。
ただ、遠藤は馴染みのない特殊な戦術に適応するための時間が欲しい中で、1月に行われたリオデジャネイロ五輪予選の影響で合流が遅れ、イリッチも言葉の問題でチームメートの指示を理解できずに噛み合わない場面がキャンプ中に見られるといった不安要素がある。とはいえ、遠藤とイリッチはボランチでもプレーできるため、ボランチを含めた守備陣の選手起用に幅が生まれそうなのはプラス材料。
一方で、攻撃で中核を担う1トップ2シャドーのユニットも注目ポイントだ。昨シーズンはキャンプ、実戦で様々な組み合わせを試して最適な形を模索したが、今シーズンもキャンプから試行錯誤を繰り返しており、チーム内競争が活気づいている。
2015年はそういった中で武藤雄樹がブレークしたが、その武藤にしても安泰というわけではない。李忠成は不調が続く中でも昨年末の天皇杯で躍動して存在感を改めて示し、右膝前十字靭帯損傷で長期離脱していた石原直樹も戻ってきた。新加入で突破力のある駒井善成は主にサイドアタッカーとして京都では活躍していたが、シャドーのポジションもこなせる。不動のエースと言われてきた興梠慎三でさえ調子を落とせばベンチスタートもあり得る状況だ。攻撃陣はレギュラーを掴んだとしても気は抜けず、チームメートが刺激を与え合う好循環が期待される。
Reported by 神谷正明