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神戸
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今季のみどころ
2016年に入り、攻守の要だったチョン ウヨンが重慶力帆(中国)へ、攻撃陣のタクトを振るった森岡亮太がシロンスク・ヴロツワフ(ポーランド)へ電撃移籍した。1月27日の新体制発表会見で村野晋強化本部長が「我々としても今季も一緒に戦ってほしい選手であり、何度も、何度も本人や代理人との話し合いを設けましたが…」と語ったように、2人の移籍は大きな痛手だ。昨季をベースにした“熟成”ではなく、チームの“再構築”を余儀なくされる可能性が出てきたからだ。
とはいえ、戦力補強は充実している。ウヨンの抜けたボランチには、鳥栖で主将を務めていた藤田直之が加入。タイトなディフェンスとパスセンスを兼ね備え、プレースキッカーも務められる逸材で、代名詞とも言えるロングスローは神戸の新たな武器になるはず。ダブルボランチの相棒には三原雅俊、田中英雄、成長著しいアカデミー出身の前田凌佑もいる。選手層を見る限り、ボランチにさほど大きな問題はないかもしれない。
だが、森岡の抜けた穴を埋めるのは難しい。2013年のJ2での戦い以降、神戸のオフェンスは森岡を中心に構築してきたからだ。相手DF裏への飛び出しを得意とする小川慶治朗が「亮太君からはいいパスが出てくるのが分かっているので、迷いなく走れる」と過去に語っていたように、パサーとしての森岡の信頼度は絶大だっただけに“替え”は効かない。小川をはじめ、レアンドロや新キャプテンの渡邉千真、石津大介、ペドロ ジュニオール、増山朝陽ら個性的なアタッカー陣をどう生かすのか。チーム全体としての連係が一つのポイントになりそうだ。
Reported by 白井邦彦
開幕時の予想布陣
フォーメーションは昨季と同様に、3-4-2-1をベースにした3バックシステムと、4-1-4-1などの4バックシステムの併用が予想される。それを踏まえて各セクションをみていく。
まずGK。蔚山現代(韓国)時代にACL優勝を経験している韓国代表のキム スンギュが正GKの最有力候補。新加入ながら積極的にチームメイトともコミュニケーションを図っており、DF陣のコーチングも期待できる。経験値の高い山本海人、徳重健太もおり、選手層はJ1の中でも厚い。
やや枚数不足が懸念されていたDFだが、2月9日に元日本代表・伊野波雅彦の加入が決定。岩波拓也、高橋祥平、北本久仁衛ら既存選手に加え、清水から期限付きで村松大輔も新加入しており、長丁場を戦い切れる布陣は整ったと言っていいだろう。
ボランチはチョン ウヨンが抜けたものの、藤田直之の加入で戦力的には昨季と遜色ない。藤田の相棒としては三原雅俊が有力。推進力のある田中英雄、テクニシャンの前田凌佑がどこまでレギュラー争いに食い込むかも興味深い。
右ウィングバックは高橋峻希を軸に、スピードスター藤谷壮の成長を待つイメージ。左ウィングバックは相馬崇人、新加入の田中雄大、アカデミー出身の山口真司がシーズンを通してポジション争いを展開すると思われる。
なかなか読めないのがアタッカー陣だ。まず1トップはレアンドロを軸に、渡邉千真、ペドロ ジュニオールが状況によって務めるはず。だが、その下の2シャドーは人材が多く、どの組み合わせがベストかを模索していくことになるだろう。昨シーズン終盤を参考にすると、右に渡邉、左にペドロか石津大介が現実的。これを軸にケガからの復帰を目指す小川慶治朗、昨季J2栃木に期限付き移籍していた松村亮、急成長中の増山朝陽らがどう絡むか。彼らシャドー候補たちの特長は全員ドリブルが上手い点。しかも、それぞれ個性が違うドリブルを持っている。逆に、ポーランドへ移籍した森岡亮太のようなずば抜けたパスセンスを持っている選手はいないとも言える。個性的なドリブラーをチームとしてどう生かして行くか。藤田らボランチのゲームコントロール力が問われる1年になりそうだ。
Reported by 白井邦彦