J1&J2クラブ戦力分析戦力分析一覧へ
広島
広島
今季のみどころ
佐藤 寿人が移籍、ピーター ウタカの選手登録もできず、そして森﨑 浩司が引退。キャンプでは、森﨑 和幸が体調不良で離脱したのをはじめ、林卓人・柴崎 晃誠・佐々木 翔が負傷。昨年までの主力級を7人も欠いた状態で、チームは開幕を迎える可能性がある。だが、それでもあえて、言おう。広島は成長して2017年開幕を迎えることになる、と。
鹿児島・タイとキャンプを重ね、戦ったトレーニングマッチは5試合。その全ての試合で3得点以上を叩き込んで勝利し、トータル24得点。特に、ここまで日本勢が1勝5敗と圧倒的に分が悪かったトヨタプレミアカップでタイ王者のムアントン・ユナイテッドを3-1と撃破した意味は重い。
ただ、戦術的にはまだまだ発展途上で、特に守備面では改善の余地は大きい。森保 一監督は今季、「運動量とプレー強度」の向上を前提に、今までよりもよりアグレッシブに「ボールを奪いにいく」「奪われたボールをすぐに取り返す」守備を志している。ただ、この守備の形には両刃が存在。うまくはめた時には強烈なショートカウンターを発動できるし、ボールを一方的に支配することも可能。だが一方で、奪いにいくことで相手にスペースを与えてしまうことも事実だ。これまでの広島を支えてきた「ブロックをつくる守備」と「アグレッシブ」との使い分けや90分のペース配分も含め、11人全員の意志が揃わないと組織的に破綻してしまう怖れもある。タイキャンプまでの相手よりもJ1は戦術的には洗練されているだけに、この課題をなんとか宮崎キャンプで解消してほしい。
4試合5得点の工藤 壮人や4試合4得点のフェリペ シウバ、さらに稲垣 祥や中林 洋次といった新戦力たちの実力は確かで、アンデルソン ロペス、宮吉 拓実、茶島 雄介、皆川 佑介、高橋 壮也、野上 結貴と若くて勢いのある選手たちがキャンプで躍動を見せている。さらに、昨年は自身も認める不調にあえいだ青山 敏弘のコンディションがよく、今季から新たに3年契約を結んだ柏好文の充実ぶりは例年以上だ。
不安はある。決して小さくはない。だが、期待もまた大きく膨らむ。プレシーズンとはいつもそうしたもの。今年もまた、Jリーグの季節がやってきた。胸の鼓動が激しくなるばかりだ。
Reported by 中野 和也
開幕時の予想布陣
開幕戦のスタメン予想を書いてはみたが、今季の広島は「これで絶対」という感覚ではない。たとえばFW。実績からすれば工藤 壮人ではあるが、キャンプで得点を積み重ねている皆川 佑介や宮吉 拓実といった選択肢もある。シャドーでも、宮吉や茶島 雄介ら若者たちの躍動も見たい。ワイドは実績組の2人が好調ではあるが清水 航平や高橋 壮也が名前を連ねても違和感はない。ボランチは丸谷 拓也、センターバックは野上 結貴、GKでは中林 洋次と経験のある選手たちが虎視眈々だ。競争が全てのポジションで存在するのがプロフェッショナルだが、今季の広島はさらにその傾向が強い。
とはいえ、やはり注目したいのは工藤 壮人とフェリペ シウバ、攻撃的な新戦力だろう。
ストライカー・工藤の能力はJ1で既に証明ずみだが、プレシーズンでの輝きを見ると、改めてそのゴールセンスには驚かされる。特にクロスに対する入り方は秀逸で、タイキャンプまでの5得点のうち4得点がサイドから。高さがあるわけではないが、抜群の位置取り感覚で相手の裏をとってクロスを叩き込む。ワイドアタッカーの質が高い広島にはうってつけの人材だ。運動量も豊富で攻守に積極性を失わない背番号50がチームを牽引していくことは疑いあるまい。技術レベルの高い広島に順応しようと居残りで自ら工夫してトレーニングを続ける姿を見ていると、どうしても期待したくなる。
シャドーで攻撃の支配権を握るフェリペ シウバは、かつて川崎Fや鹿島で活躍したジュニーニョがデビューした時のようなインパクトを受ける。2人とも日本では無名だったが、攻撃に関する全ての能力が高い。若い頃のジュニーニョほどのスピードはないが、フェリペ シウバのアイデアと技術は圧巻で、相手の裏をとることが何といっても上手い。タイ王者・ムアントンとの1戦では自分が失ったボールをアグレッシブに追い掛けて奪い返し、工藤のゴールの起点となった。そういう献身性もいい。
主力クラスに離脱者が続出しているのは痛いが、それでも戦えるだけの戦力は保有している。戦術的にも新しい形を模索している2017年の広島は、きっと面白い。
Reported by 中野 和也