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今季も「2チーム分の戦力」を構築し、厳しい競争を戦いつつ、連戦に挑む

今季のみどころ

Jリーグでは、自分たちの思うようにチームを構成できるクラブはない、と言っていい。いや、あのバルセロナですら、ネイマールやメッシの移籍の噂が絶えないのだから、主力流出の心配がないクラブなど、世界中にないと言えるのだろう。

したがって、広島が昨年のチーム得点王であるドウグラスが流出したからといって、嘆くことはない。なぜならば、「広島でプレーしたい」という選手が現れてくれるからだ。ある意味、こんな幸せなことはない。

その代表格がピーター ウタカだ。「Jリーグで最も美しいサッカーを見せる」と広島を高く評価。「広島こそ、自分が探していたチームだ」とオファーを喜んだウタカは、キャンプから精力的に走った。「身体中が痛いよ」と苦笑いしながらも、鹿児島キャンプを全力で駆け抜けた。ボールをおさめキープする技術は天下一品。周りも見える。冷静さ。判断の確かさ。自分でゴールを陥れるだけでなく、周囲を的確で使える戦術的な能力も高い。練習試合2試合で2得点1アシスト。それでもまだまだ、自身の本当の力は見せていない。

「ドウグラスの21得点は、誰かが埋めなければならない」とミキッチは言う。もちろん、昨年のチーム得点王が移籍した穴は、そう簡単に埋まるはずもないことを理解した上での言葉である。ウタカや宮吉拓実(京都からの移籍)の能力は確かに高いが、自分で強引にゴールを決めるよりは「周りを使いながら」というプレーヤーだ。新戦力が個人として20得点以上を決めてくれれば嬉しいが、なかなか思惑どおりにいかない。個人ではなくチームとして少しずつゴールを上積みし、ドウグラスの穴を埋めていくしかない。

その可能性は、十分にあると見ていい。リオ五輪最終予選決勝で2得点をあげた浅野拓磨やクラブワールドカップで負傷離脱してしまった野津田岳人、さらにその世界の舞台で自分の力を見せつけた茶島雄介や皆川佑介など、若者たちの成長が著しい。ACLとの並行日程というハードスケジュールを乗り越えるためにも若手の台頭は必須なのだが、昨年から今年のキャンプにかけて可能性は大きく感じさせているのが心強いのだ。

攻撃陣だけでなく、守備陣、中盤、ワイド。「今季も2チーム分の戦力が必要」とは森保一監督の言葉だが、そういうチームを構成できる可能性は十分。今季の広島でも質の高い競争が常にチーム内で展開されていることもあり、新しいタレントが台頭する可能性も十分だ。

Reported by 中野和也

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