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【J2:第33節 柏 vs 岐阜】レポート:あの悲嘆に暮れた涙の降格から1年。柏が3発快勝で3位以内を決め、日立台が歓喜に包まれた。(10.11.08)

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11月7日(日) 2010 J2リーグ戦 第33節
柏 3 - 0 岐阜 (13:04//9,388人)
得点者:57' 北嶋秀朗(柏)、90' 大谷秀和(柏)、90'+5 レアンドロドミンゲス(柏)
スカパー!再放送 Ch185 11/8(月)後08:00〜
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日立台が特別な歓喜に包まれるのは初めてことである。2006年の昇格はアウェイであり、もっと遡って1994年のJFL2位を決めた試合も川越だった。むしろ、ホームで節目の試合を迎えた時には悲嘆に暮れることの方が多かったせいか、選手・スタッフ一同が肩を組んでサポーターとともに歌う『レッツゴー柏』、さらにネルシーニョ監督の胴上げなど、ホームでサポーターとともに喜びを分かち合う光景には新鮮さが感じられた。

勝点1以上で3位以内を確保できる絶好のチャンス。「今まで通りで臨む」と試合前日の取材では選手たちは語っていたものの、いざ試合が始まると茨田陽生、酒井宏樹といった若手は「最初は緊張して硬かった」とプレッシャーを受けていたことを打ち明けた。そういった若干見られた硬さに加え、柏は本来の両サイドバック、小林祐三、橋本和を負傷で欠いている。プレビューでも述べたように、サイドバックがサイドの高い位置でポイントを作れるからこそ、柏はピッチをワイドに使い、中盤をボックスにしたポゼッションが生きるのだが、この日右サイドバックで出場した酒井は「前半はポジショニングが中途半端だった」と反省の弁を語り、左の藏川洋平は攻撃の意識を見せる反面、時折不用意なボールロストも目立ち、サイドでの起点を作り出すには至らなかった。

岐阜は前節こそ敗戦を喫したが、その前まで5戦無敗。ここ6試合で失点4という強固な守備は、スタンドが黄色一色に染まった日立台でも健在だった。カウンターを狙うが決してラインを下げすぎず、コンパクトな陣形から繰り出す連動したプレスにより、柏のアタッキングサード侵入を阻止した。「前半に関しては特に守備をしっかり固めてカウンターアタックで得点を狙うというパターンに徹した」という岐阜・倉田安治監督の思惑と、柏・ネルシーニョ監督の「こういう試合展開になるのは予想していた。相手はうちのミスを待つか誘ってからでチャンスを見出そうとしていた。カウンターに対する準備はできた」との策略が激しく火花を散らす。柏は大谷秀和、栗澤僚一が岐阜のカウンターを遅らせ、攻め切らせずに遠目からのシュートに終始させたために決定機までは作らせず、両チームを通じて有効打の少ない前半45分間となる。もっともスタジアムが沸いたのは33分のレアンドロ・ドミンゲスの直接FKがバーを叩いた時だった。

試合後の選手コメントからもはっきりと見受けられたのだが、一見攻めあぐねていたように見えても、柏の選手たちには共通意識の高さがあった。「前半に点が取れなくても、しっかり残りの5分、10分で取れればいいと思っていた」(近藤直也)、「1試合通してあの(岐阜の)ディフェンスが続くとは思わなかった。前半が0−0だからといって焦りはなかった。スペースができれば自分たちの形で攻撃できると思っていた」(大谷)、「0−0でしたけど、焦ってはいけないと思いました。あれだけポゼッションしていたので後半は取れるとは思っていました」(林陵平)など、ほとんどの選手がそういった展開を読みながら試合を進めていた。一方で、岐阜の選手たちが「前半はしっかりと守れたけれど、後半は相手の勝利への執念で押し込まれてしまった」(押谷祐樹)、「前半は守備はうまくいっていた。後半になって自分たちの運動量が落ちてきた」(嶋田正吾)と対照的なコメントを残している点が、まさに後半でのポイントを物語っている。

前半は機能不全に陥っていた両サイドバックについても「サイドのスペースにMFが流れてボールを受けろ」と、ネルシーニョ監督がサポートの意識を高めたことで、酒井、藏川、彼らの特徴が前半よりも目立ち始め、酒井は茨田とのリターンや前線のポストプレーの落としを受けて、サイドの裏のスペースへ飛び出し、果敢に攻撃を仕掛けた。そしてサイドを有効に使えれば、中央でスペースを得たレアンドロ・ドミンゲスがより生きるという相乗効果を生んだ。

ジワジワと柏に流れが傾きかけた57分、「柏の強いところはポゼッションプレーも特徴と言われていますけど、セットプレーが大きな武器」(倉田監督)と岐阜が警戒していたセットプレー。レアンドロ・ドミンゲスの精度の高いキックがファーサイドに入り、林がDFと競り合いながら頭で叩きつけると、北嶋秀朗が体ごとゴールに押し込むような低い体勢のヘディングで詰め、先制点を挙げた。

リードを許した岐阜は攻めなければならないため、当然前へ出ようとする。何度か中盤左サイドの押谷が良いタイミングでオープンスペースへ、あるいはゴール前ファーサイドへ飛び出す場面は見られたが、そこへのパスの精度を欠き、ラインを割るか柏の守備にあっさり引っ掛かってしまう。したがって効果的な攻撃が見られず、後半に岐阜が放ったシュートはわずかに2本のみ。逆に柏は守備陣形をセットした状態で岐阜をおびき出しながら、奪ってからスペースを狙う攻撃が可能になる。「ポゼッションだと言われているけどカウンターもある。選手の判断で多彩なことができている」(大谷)。その言葉を裏付けるかのようにポゼッションとショートカウンターを織り交ぜ主導権を握る柏。83分、2度目の警告を受けた岐阜DF新井涼平の退場によって「決まりました」(倉田監督)と勝負が決した感はあった。90分には高い位置でボールを奪った田中順也から林とつないで、最後は大谷が鮮やかなシュート決め、アディショナルタイムにもレアンドロ・ドミンゲスが冷静にPKを沈めて、柏が3−0と突き放した。

敗れたものの、「ポジティブな印象を持っている」と倉田監督が振り返ったように、岐阜はゲームプランを確実に遂行しており、守備面に関しては強固さを十分証明したと言ってよい。それだけに、パスの精度不足やミスでカウンター攻撃のチャンスをフイにしてしまった点が悔やまれる。柏戦だけに限らず無得点試合が目立つが、押谷や嶋田のように得点ランキングに名を連ねる選手がいるのも事実。課題を「伸びしろ」と考えれば、飛躍できるポテンシャルを備えているチームであろう。

そして柏はこの勝利によって、自力での3位以内を決めた。鮮やかなパスワークは岐阜の守備に封じられ鳴りを潜めたが、その時にはどのように試合を運ぶのか、どう勝ち切るのか、様々な状況に対応できる柔軟性はこの一戦でも垣間見られ、あの涙に暮れた昨季J1第33節からチームとしての大きな成長を感じさせた。だが、これでシーズンが終わったわけではない。試合終了後、「J2で優勝して堂々とJ1へ行きましょう!」とサポーターを沸かせた北嶋。3位以内は確保したが、「J2優勝」という目標と、J1チームと対峙する天皇杯が残っている。まだ、柏は手綱を緩めはしない。

以上

2010.11.08 Reported by 鈴木潤
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