今日の試合速報

J’s GOALニュース

一覧へ

【J2:第33節 鳥栖 vs 徳島】レポート:予感的中!豊田陽平のゴールで快勝した鳥栖。守備も機能し、徳島の強力FWを押さえ込む。徳島は、持ち前の攻撃サッカーが出来ずに、不完全燃焼に終わる。(10.11.08)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
11月7日(日) 2010 J2リーグ戦 第33節
鳥栖 1 - 0 徳島 (16:03/ベアスタ/3,658人)
得点者:78' 豊田陽平(鳥栖)
スカパー!再放送 Ch183 11/9(火)前10:00〜
試合速報一覧 | クラブサポーター対抗totoリーグ
J2シーズン表彰 投票受付中!!
----------
もし、サッカーの試合でボールを1個ではなく複数個使える競技だったら、もっと得点が入り守備と攻撃の役割がさらに分業化されることだろう。でも、そうなったら争点でのドラマを楽しむこともできないし、最少得点差で勝つ喜びも感じることができなくなるだろう。今節の鳥栖対徳島は、1個のボールに対して徹底的に“形”にこだわった試合だった。

プレビューでも述べたように、鳥栖のFWには、豊田陽平がいる。徳島には、津田知宏がいる。両者のチームにおける役割は、ゴール前でどれだけ多くの仕事をこなせるかということである。
豊田陽平を生かすためには、鳥栖はサイドからクロスを多用して、徳島DFの注意を散らさなければならない。同様に徳島は中盤でボールを動かし、鳥栖DFを緩めなければならない。両チームとも徹底的にこの“形”に持ち込むために、激しく身体をぶつけ合った。そして、その成果が78分に鳥栖に出たのである。
鳥栖が左サイドから徳島を崩そうと試みた時間である。そうはさせまいと徳島の選手はプレッシャーをかけた。鳥栖は、そのプレッシャーをかわそうとボールを右サイドのMF早坂良太まで送った。ここでも、徳島のプレッシャーは厳しく、早坂良太はクロスを入れる機会を失った。この瞬間に、この試合でいぶし銀の存在だった男が仕事をやってのけた。
その男が、2試合ぶりにボランチの位置に入ったMF丹羽竜平である。鳥栖に加入後は、サイドバックを主戦場としていたが、天皇杯予選からその場をボランチに移した。これで、鳥栖の中盤での守備に厳しさが増し、DFが高く保つことができるようになったのである。
丹羽竜平は試合後に「あそこには、必ず豊田(陽平)さんがいるはず」と狙って、早坂良太から落とされたボールを徳島ゴール前へ低い弾道で送った。この位置での早坂良太へのフォローと低い弾道が今節の隠れたMVPである。

しつこいようだが、この状況を解説させていただくことをお許し願いたい。
今節のボランチは、丹羽竜平と藤田直之が組んだ。どちらかというと、丹羽竜平が守備的位置で仕事をし、藤田直之が前目に位置して、FWを操ることが多い。しかし、鳥栖が得点した78分には、前述したように左サイドから徳島を崩そうと試みていた時間帯である。当然のごとく藤田直之は左のボールサイドに寄っていた。ここで、丹羽竜平も攻撃参加をしていたら、鳥栖には得点が生まれていない。右サイドの早坂良太にボールが渡った瞬間には、丹羽竜平はその下でボールを受けられる準備をしていたのである。あとは、落とされたボールを豊田陽平に送るだけの状態を作っていたことになる。そして、もう一つ語らないといけないのが、低い弾道でのクロスボールである。
豊田陽平は高さと強さを併せ持つFWである。当然のごとくヘディングシュートを期待してクロスボールを入れる機会が多い。しかし、この78分の決勝点のアシストとなったクロスボールは、低い弾道だった。あれ以上高ければ、徳島のGKオ スンフンが出てきてパンチングでクリアしただろうし、あれよりも低ければ徳島DFペ スンジンがインターセプトしただろう。結果論だが、あの高さのクロスボールでしか得点は生まれなかったのである。丹羽竜平のポジショニングとキックの精度があってこその決勝点だった。

この78分の決勝点のシーンを徳島側から見てみたい。
早坂良太を追い込んだところまでは、普段の練習通りだったと思う。ここから落とされたボールに対してのプレスをかけたかったと思うが、サッカーはボールを保持して動かしている側に主導権がある。できれば、あそこでプレッシャーをかけたかった。かけることができなくても、出されどころにあたる前線の選手へのマークやパスコースを消す動きが必要で、ここまでは徳島もできていた。後は入ってきたボールをどのようにして奪うのかの手段の選択だけである。

DFペ スンジンは、GKオ スンフンが出てくると予想したようだし、GKオ スンフンはDFペ スンジンがクリアをするものと信じた動きを見せた。この当事者2人のボールを奪う手段の選択の違いが、豊田陽平(鳥栖)のヘディングシュートまでつながった要因である。あの位置からのあの高さに対してのクロスボールに対しては、普段からの練習で培っておかないといけないし、声を掛け合って役割をハッキリしておかないといけない。当然、やってはいるだろうが、集中力と体力が切れそうな時間帯でもあったし、ここまで押されこまれながらもよく耐えていただけに、その一瞬だけは悔やまれて仕方が無い。若い選手達なので、これを経験値として今後のサッカー人生に生かして欲しい。

この日の鳥栖は、シュート18本を放った。中でもFW豊田陽平が5本を放っている。最近の鳥栖は、中盤の選手のシュートが多く、FWのシュートが少ない試合が多かった。しかし、クロスを多用することで、FWが生きた試合となることが証明された。次節からもこのサイドを有効に使った攻撃を見せて欲しい。
逆に徳島は8本のシュートに押さえ込まれた。期待された津田知宏はシュート0に終わり、得点王争いに一歩遅れを取る結果となった。徳島は、MF柿谷曜一朗が3本シュートを放ち一人気を吐いたが、GK室拓哉(鳥栖)の好守に阻まれた。その要因は、中盤での主導権が取れず、いい形でFWにボールが入らなかったことによる。次節は、あの流れるようなパス交換からFWでのフィニッシュを見せて欲しい。

もう一つ、この試合でのポイントを解説させて欲しい。長文になることをお許し願いたい。
それは、GKからFWまでを含めた守備の位置である。FWがボールをチェイスし始めると守備ラインを高くとって相手へのプレッシャーを厳しくしたい。しかし、そこにはDFの裏に大きなスペースを作ることにもなる。これを埋めるためには、積極的な出足をもつGKの存在が不可欠なのである。
鳥栖の室拓哉と徳島のオ スンフンともに守備の広さには定評があり、この試合でも度々そのシーンを見せてくれた。彼らの出足が無ければ、今節のようなコンパクトなサッカーを見ることができないだろう。それだけ、球際に厳しく激しいあたりができて、随所に見所が多かった試合だった。互いに有利に試合を運ぶために身体も精神も熱くなった試合だった。

1個しかボールを使わないから、奪い合いが起き激しさが増す。手が使えないからこそ、激しく身体を寄せるし激しく当たる。相手に十分な陣形を取らせないためにボールを動かし、90分間を選手は動いて回る。
このサッカーでは当たり前のことをお互いがやろうと試みるから、ミスも出てくるし、失点も生まれる。ミスが無ければ、サッカーでは得点は生まれないし、勝敗はつかない。長いシーズンを戦うリーグ戦は、位置する順位がそのチームの実力である。名選手を揃えても、組織で機能しないと連携は生まれず、ボールをゴールまでも運ぶことはできない。
日頃から培ったチームワークにハードワークを加え、さらに有効にベンチワークを機能させないとサッカーは試合として成立しないスポーツなのである。
サッカーは、練習で繰り返しやったことしか試合では出すことはできないスポーツでもある。

以上

2010.11.08 Reported by サカクラゲン
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

テレビ放送

一覧へ

明治安田J1リーグ 第37節
2024年11月30日(土)14:00 Kick off

旬のキーワード

最新動画

詳細へ

2024/11/25(月) 10:00 【週末のゴールをイッキ見!】明治安田J3リーグ全ゴールまとめ【1124】