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【J1:第33節 鳥栖 vs 浦和】レポート:両者にとって痛いドローゲーム。しかし、随所に持ち味を見せ、最後まで戦い抜いた鳥栖と浦和。鳥栖はACL出場を、浦和は優勝の可能性を次節につなぐ。(14.11.30)

夢はついえた。
「何かしらのタイトルを取る」と宣言した2014年シーズン、その最後の可能性を残していた『リーグ優勝』の可能性が第33節にして消滅した。リーグ戦を残り一試合というところまで突っ走ってきた鳥栖。試合終了のホイッスルを聞いた瞬間、その悲願は来シーズン以降に持ち越さることとなった。
しかし、試合終了と同時に湧き上がった拍手と歓声は、ここまで夢を見させてくれた選手たちへのねぎらいのものだった。選手たちは、優勝をかけた大一番で、浦和とだけではなく勝たねば消えてしまうというプレッシャーとも戦った。その思いを凝縮したのが、アディショナルタイムの90+4分のゴールだった。

「いつでもピッチに立てる準備はしていた」と、市原(現千葉)、山形、神戸、甲府と渡り歩いてきたプロ13年目のDF小林久晃は語り始めた。「菊地(直哉)は肩を怪我していたし・・・」(同)とあらゆる状況も踏んでの判断だった。
その機会が69分に訪れる。CB菊地直哉が得点機会阻止の反則を犯し退場となりピッチに立った。一人少ない状況で一点のビハインドを負った状況、残り時間も20分程度と敗れても仕方ない状況とも言えた。しかし、多くの修羅場をくぐってきたDFは、「チャンスが来るならばセットプレー・・・」(同)とも感じていた。そのチャンスが訪れたのが90+4分、まさに試合終了直前のことだった。2日前の非公開練習でも決めたというセットプレーと同じところに走り込んで決めたヘディングシュート。彼がここまで培ってきた経験と勝負勘が決めたシュートだった。そして、そのシュートが選手、スタッフ、クラブ、そしてファンとサポーターに多くのものを残してくれた。それを、吉田恵監督は「希望をつないでくれた」と総括した。

一方の浦和は、自力で優勝を決めることができなくなった。G大阪の最終節の結果次第という「非常に痛いゲーム」(ペドロヴィッチ監督)になってしまった。第19節で首位に立ち、「シーズンの半分を首位で・・・」(同)戦ってきたが、勝てば優勝決定の可能性があったここ2試合を、どちらも終了間際の失点で勝つことができなかった。首位G大阪とは勝点で並ぶが、得失点差で大きく離されている。浦和が優勝を決めるためには、勝点で上回るしかないのが現状である。しかし、この日の先制点となったPKを決めたMF阿部勇樹は、「サッカーに絶対はない」と言い切った。彼らもまた、最終節に優勝の可能性を残して負けられない試合が続くのである。

最終戦の結果次第では、ACLへの出場の可能性が残る鳥栖。年間3勝しか挙げられなかったクラブが、経営母体を変えてアジアで戦う可能性を残して最終戦まで上位を争うクラブに成長した。2012年シーズンも、最終節までACL出場の可能性を残して戦ったが、今年はそれにリーグ優勝を争うということが加えられたのだ。最終節でどんな結果になろうとも、少なくともファンやサポーターにとって今までに得ることができなかった感動を感じることができたシーズンだったと思う。しかし、我々は感傷的な気分に浸れても選手たちは違う。小林はその気持ちを代弁してくれた。「今日は勝たないといけないと思っていたし、最後は追いついたけどみんなは悔しい思いの方が強いと思うし、その悔しさを最終戦にぶつけたいと思います」と。それが鳥栖でありアスリートである。小林も阿部も、すでに最終節に気持ちは向いている。サポーターも、最終戦まで共にチームと戦おう。

サッカーに“正解”も“絶対”もない。最後まで何が起こるかわからないスポーツなのである。結果で救われることもあろうが、その結果に至るまでに救われることもある。期待と不安の中で始まり、過程に起きる現状に感動し、結果に満足できるスポーツなのである。ボールが動けばドラマが生まれ、純粋にそこに惹きこまれるのがサッカー。今だからこそ、胸を張って言える。『だから、サッカーは面白い!』

以上

2014.11.30 Reported by サカクラゲン
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