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【J1:第33節 甲府 vs F東京】レポート:神が創った巡り合わせか。ベストゲームではない、しかし、360度・青赤サポーターの前で城福浩が伝えたサヨナラで満たされた気分になった引き分け。(14.11.30)

「私が退任の挨拶をするのは初めてです。その初めての挨拶をこの360度・青赤で埋まったスタジアムでできるというのは神様から頂いた機会だと思います。神様に感謝したいと思います。3年間ヴァンフォーレに携わった全ての人にお礼を言いたいと思います。3年間本当にありがとうございました」
ジョーフク・コウフ、ジョウフク・コウフ、ジョウフク・コウフ、ジョウフク・トゥキョー、ジョウフク・コウフ、ジョウフク・コウフと、止まらない入り混じったコールを聞きながら脳みそのシナプスが何本か繋がった。

試合後のセレモニーにはF東京サポーターが7割近く残って城福浩監督の言葉に耳を傾けてくれていた。城福監督のこの言葉を聞いて、3年前に就任したばかりのころの雑談を思い出した。F東京監督時代の嬉しい話や悔しい話を聞かせてもらったが、クラブを去る時にサポーターに別れの挨拶が出来なかったことをものすごく悔やんでいたことはヤマザキナビスコカップ優勝とその後の国立から味スタまでの大移動の話と同じくらい印象的だった。2014年のJ1第33節にこのマッチメイクをしたJリーグが誇るスーパーソフト「日程くん」は、開幕前から城福監督がタスクを全うして退任することを知っていたとしか思えない全能ぶりだけど、城福監督のいう「神様」に「日程くん」が含まれているのかどうかは分からない。ただ、コンピューターというかソフトというかその両方が合わさると人間の期待以上というか、映画・ターミネーターの世界も絵空事でないような気がしてくる。

優勝もACLも降格もない人間様の戦いだったが、甲府の選手はなんとしてもホーム最終節で勝って城福監督を送り出したかったし、チームを去ることが決まっている水野晃樹のように家族とサポーターにいいところを見せたいと魂をこめて先発した選手――甲府の選手の”去”就は2人しか発表されていないので――「サヨナラ」と「アリガトウ」の気持ちを密かに魂にこめた選手もいたと思う。ケガからの復帰でコンディションが十分に上がっていなかった選手がいて最強のF東京ではなかったが、盛田剛平のがんばりのお陰で先発平均年齢が30歳を超えた甲府は、「現」と「元」と「未来」の日本代表がごろごろいる先発平均年齢25歳のF東京より予算規模が大きなクラブのような戦いを見せた。Jリーグが開示した昨年のデータ(営業収益)ではF東京が約35億で、甲府が約15億。阿部翔平と阿部拓馬を獲得した2014年のJFK甲府のアベチャンノミクスは実体の経済力よりもチーム力を大きく見せることに成功している、いいバブル。もちろん、盛田や石原克哉や山本英臣のベテランに新井涼平や佐々木翔ら若手も貢献しているし、津田琢磨のように試合出場の数が少なくても常に最高の準備する態度で好影響をもたらせてくれる選手の貢献も必要不可欠。
甲府は先発した11人の選手が、約4ヶ月ぶり先発の水野を含めてお互いのプレーの特徴や意図をものすごく分かり合っていたし、城福監督やコーチングスタッフによる相手チームの分析と対策もハマっていた。もちろん、それはJFK甲府の積み重ねの上にある。F東京の中盤が広がり難い3枚だということも突けていたし、武藤嘉紀の特徴を甲府のウォーリア・青山直晃がケア出来ていた。ただ、内容の割にはゴールが決まらなかったことは気になるが、決定力の若干の不足とF東京の吉本一謙や森重真人の最後の最後はやらせないシュートコースを消すスラィディングの判断のよさと上手さを足せば、甲府のゴールが決まらなかった理由の95パーセントくらいは埋まる内容。ただ、F東京の選手がこの状況で焦ることなく、我慢の前半だと思っていたそうで、後半はF東京がボールを奪う圧力を高めて「こういうゲームで1点とって勝ちきらないと上には進めない」(吉本)という戦いを見せた。米本拓司の運動量を活かせば中盤の3枚が4枚になるくらいの勢いが出る時間帯もあったし、甲府のファン・サポーターも前半のような安心感はなかったはず。75分ごろになるとオープンゲームになりつつあり、打ち合えば甲府が不利になるのが確実な流れ。渡邉千真が投入された61分ごろからは頭の中のどこかにある、悪い予感をつかさどる部分が動き出していたが、結局は当たらなかった。チームの成長に予感のバージョンアップが追いついていなかった。お互いにモチベーションの構成要素にセンチメンタルが入ってしまう試合で、いろいろなことが決まる前のリーグ戦とは違う難しさがあったが、ホーム最終戦であり、リーグ戦終盤に向けて完成度が高まっていくJFK甲府がその最大値を比較的上手く出せた試合だった。水野のゴールで勝つのが一番盛り上がるホームラストマッチではあったが、水野が自身のストロングポイントをアピールできていたことは嬉しい点。来年も甲府でやってほしい選手であるが、他のクラブの関係者の目にも魅力的なプレーに映ったはずだ。

JFK甲府は2年連続でJ1残留することは出来たし、特に前半のサッカーは急速冷凍して来年の春に解凍したくなるくらいの内容。多少水分が出ても気にならないくらいよかった。しかし、城福監督はチームを去るし、選手の去就もこれから。まだ見ぬ新監督も全力で応援するし、新しいチームに対する思いも同じ。ただ、今年降格が決まったクラブや、最終節まで残留を争うクラブの姿は来年の甲府であるという危機感を持たざるを得ない厳しい現状。どんな去就になるかは受け入れるしかないが、新しい曲がり角を曲がると思ってポジティブに覚悟したい。F東京はF東京で悩みは浅くはないようだけど、優勝やACLを目標とする悩みとJ1残留を目標とする悩みを同じ店で語り合うのは難しい。ただ、ものすごいサポーターが支えるF東京や松本と同じリーグで戦える幸せを大事にしながら、甲府は2015に新しい挑戦をするだけ。城福浩にサヨナラをいうのはまだ早い。

以上

2014.11.30 Reported by 松尾潤
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