シーズン終盤を迎え、柏は絶好調だ。ここまでの5連勝も、大量得点で相手を圧倒した試合ではなく、1点を争う拮抗した展開の中、柏のしぶとさや、最後を決め切る勝負強さゆえに手にした勝利で連勝という形に結び付けている。柏らしい戦い方が、いかんなく発揮できていると言っていいだろう。
しかも今節はホーム最終戦。それもただの最終戦ではなく、今季限りで退任が発表されているネルシーニョ監督の、最後の日立台での試合となる。「目の前の試合を全力で戦う」と、チームはいつもの姿勢を打ち出しながらも、最後のホームゲームでネルシーニョ監督を勝って送り出そうと、普段以上にモチベーションは高い。さらに、AFCチャンピオンズリーグ出場権も懸かっており、他のクラブの結果次第とはなるが、柏には「残りの試合、2連勝をしてACLに行く」という気持ちに満ち溢れている。
ただ、勢いや気迫という部分では、清水も引けを取らないだろう。
現在15位の清水が、残留に向けて気迫に満ちていることは、前節の名古屋戦でも明らかに見て取れた。26日には天皇杯準決勝を戦っているものの、主力の大半を温存し、若手中心の選手構成でG大阪戦に挑んだのは、裏を返せば今節の柏戦にプライオリティーを置き、並々ならぬ闘志を燃やして、必勝態勢で日立台に乗り込んでくる覚悟の表れだとも取れる。
名古屋戦では、30分に楢崎正剛のキックミスから同点ゴールを挙げたが、あそこもまた前線から圧力をかけたからこそ、瞬時に奪ったボールをノヴァコヴィッチに通すことができた。それに前回対戦の柏でも、清水の前からのプレッシングに気圧され、守備陣にミスが生じ、そのミスを確実にゴールへ結び付けられて、柏は0−3の完敗を喫した。
自陣でミスを犯せば、清水のアグレッシブな姿勢はそこを突いてくる。それを肝に銘じて戦わなければならない。
「ノヴァコヴィッチ、大前(元紀)、高木(俊幸)が前に残って、ショートカウンターをかけてくるイメージがある」と、栗澤僚一は清水に対するイメージを語る。
「清水の気迫に対し、受けに回らないこと。それを上回るぐらいの気持ちで跳ね返すことが大事」。
工藤壮人がそう話す通り、柏はとにかく清水の気迫を受けないことが大事だ。実際に、前節の大宮戦も、残留に燃える大宮の前から来る姿勢に前半は後手を踏んだが、栗澤を投入した後半から流れが変わり、むしろ大宮のプレスをわざと食い付かせて、それをパスワークでいなし、相手が前に出てきて生じた裏のスペースを突いていくという、したたかな戦い方で大宮を下した。
清水にすれば、前からのプレスによって柏の最終ラインにビルドアップを許さず、ロングボールを蹴らせれば、好調のレアンドロを中心とした前線3枚が不得手とする空中戦に持ち込める。そうすれば柏はリズムを掴みにくいが、逆に柏が清水のプレスを外し、柏がギャップを突きながら地上戦を展開すれば、最近はキレキレのレアンドロがボールを収め、そこにドゥドゥ、太田徹郎、あるいは工藤が絡み、前線3枚によるコンビネーションでゴールを奪うことができる。
そしてホームゲームの度に、毎回同じことを書き記しているが、今季の柏はホームでは圧倒的に強い。ここまで14戦無敗継続中。対戦相手にとって、日立台はまさに“難攻不落”だ。
清水の残留に懸ける強い想いと同じように、柏にはACL出場権獲得と、ネルシーニョ監督の日立台ラストマッチで勝利を飾りたいという高いモチベーションがある。
6シーズンに渡って柏を指揮し、ポルトガル語で「勝利」意味する“Vitoria”の精神を柏に根付かせ、J2、J1、天皇杯、ヤマザキナビスコカップ、富士ゼロックススーパーカップ、スルガ銀行チャンピオンシップなど数々のタイトルの獲得や、ACLやFIFAクラブワールドカップといった国際大会にも導いてくれた名将・ネルシーニョ監督に、柏に関わる全ての力を結集し、必ずや勝利を捧げる。
以上
2014.11.28 Reported by 鈴木潤