Jリーグではどの試合で、どんな相手に勝っても、得られる勝点は3だ。ボーナスポイントが加わる相手はいないし、ポイント2倍サービスデーが設けられる節もない。
だがこの終盤戦では、同じ勝点3に、いつもとは違う重みが感じられるのではないだろうか。選手にとっても、スタッフにとっても、サポーターにとっても。J1第33節・仙台vs徳島は、その勝点3の重さとそれに対する人々の思いを再認識する一戦となりそうだ。
この試合が今季のホーム最終戦となる仙台にとっては、この試合での勝点3は、「前節の悔しい引き分けから切り替えて、J1残留のために今度こそ取らなければいけないもの」(赤嶺真吾)。他会場の結果にもよるが、まずは自力でJ1残留に近づくためには勝利が必要だ。前節・C大阪戦では2-0、3-2と二度リードしたものの、同じ残留争いをする相手に食らいつかれて3-3で引き分けた。いつも以上に、何度も何度も試合映像を見返したという渡邉晋監督は「浮き足だって、勢いをコントロールできなかった。見れば見るほど悔やまれます」ということで、この徳島戦に向けた準備を前に、チームにあらためて「J1残留のために勝点3を取るぞ」と呼びかけたという。引き分けでもよし、というのではなく、あくまでも狙うは勝点3だ。
そのうえで、リード後に落ち着きを欠いた前節の反省から、今週の練習では、ボールを奪った後のパスの出し手と受け手の位置取りやランニングについて、特に注意したという。前節にウイルソンが復帰して、ハモン ロペスも仙台加入後初ゴールを挙げた。上り調子の攻撃の勢いは大事にしつつ、その背後の守りも怠らずに試合を運びたいところだ。
そこで今回は両チームのバランサーに注目したい。仙台では現在梁勇基と富田晋伍がボランチを組んでおり、ここのポジションが選手同士の距離感や全体で布陣を敷くゾーンの設定でカギを握る。「立ち上がりの勢いは前節と同じようにしたいし、そのなかでも自分の役割としてはポジションのバランスを見ながら、変にリスクを冒すことがないように意識したい」と、富田はこの白熱する試合でも焦れずに戦う事を強調した。彼の位置取りや、周囲との距離に注目したい。ボールが集まりやすい中央のエリアでは、この背番号17が存在感を見せているはずだ。
その富田が「油断できない相手。シーズンの最後にも何かを残すために戦っている」と警戒する徳島の中盤には、斉藤大介がいる。2008年途中から2011年途中まで仙台に在籍して富田ともコンビを組んだことのある斉藤は、徳島のJ1初挑戦を支える存在だ。前節は濱田武とともに中盤の底に位置。チームが守備的な戦いをするなかで、攻撃のチャンスには濱田とともに中・長距離パスを攻撃陣に配球した。
長身FWキム ジョンミンを頂点に据えて、その背後に機動力のある大崎淳矢とドリブラー廣瀬智靖を配置したのが、前節における徳島の1トップ2シャドーの構成だ。これに左サイドのアレックスを加えた4人は、後方からのボールを一気に相手陣内まで運べる力を持つ。守備でスペースを埋めながら攻撃への切り替え役を担う徳島のボランチは、この攻撃ユニットへの繋ぎ役でもある。
斉藤は昨年12月28日のJPFAチャリティーサッカー2013で、JAPANスターズの一員としてユアテックスタジアム仙台を訪れた。「仙台にいたときも決められなかったから嬉しかった」というゴールを決めるなど活躍した彼が、今度は徳島の一員として同所にやってくる。士気は高いはずだ。徳島のチーム全体としても、降格は決まってしまったとはいえ、J1にひとつでも多くの足跡を残すために、全力で戦うだろう。
普段より重いかもしれない勝点3のために、仙台と徳島は意地を見せる。両チームの戦いを、ぜひ多くの方々が見届けてほしい。
以上
2014.11.28 Reported by 板垣晴朗