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【J2:第18節 東京V vs 水戸】レポート:どちらにも勝てるチャンスのあった、攻め合った末のスコアレスドロー。(13.06.09)

お互いに、「勝てた試合だった」と思っているに違いない。三浦泰年監督(東京V)、柱谷哲二監督(水戸)とも「ボールを大事にする」サッカーを標榜するなか、それぞれの意図する展開で自分たちの時間帯を作り、決定機を迎えるに至った。ただ、残念ながらどちらもそのチャンスを得点へと結びつけることができなかった。

「勝点を2つ逃した感じ」という鈴木惇、「チャンスの数やボールの運び方の精度などは、水戸よりも良い形を作っていたと思う。我々にとっては勝点1は相応しい勝点ではない」と語った三浦監督の言葉を聞けば、このスコアレスドローをより悔いているのは東京Vの方だったことが十分伝わってくる。実際、前半から主導権を握ったのは東京Vだった。

「僕のところでしっかりとボールをキープできれば」と、鈴木惇がこの試合の1つのポイントに挙げていた、アンカーの両脇のスペースを狙ってきた相手にも競り負けることなく対応し、「奪ったら、戻りが遅くなって薄くなっているサイドに素早くボール出し、そこから仕掛けていく」という狙いも、「ある程度思い通りにできたと思います」(鈴木惇)。テーマともいえる『リズムとテンポ』よくボールを回し、攻め込んでいく中、2試合連続の先発出場となったルーキー前田直輝の積極性が立ち上がりから目立った。「運動量や推進力は自分がいつも意識していること」の言葉通り、特にペナルティエリア内、もしくはその近辺でみせる中央での縦へのドリブル突破は、相手DFの驚異だったに違いない。また、サイドで起点となり、高原直泰らとの連携でシュートまで持ち込む場面も。特に前半34分、その高原からの絶好パスをダイレクトボレーで狙うという決定的なチャンスを作ったが、相手GK本間幸司の好反応によってゴールはならなかった。若干18歳ながら、「自分が決めてれば勝てる試合だったと思うので、プロとして責任を感じています」と、チームの大事な1つのポジションを任される身として猛省した。

また、チーム全体としても、鈴木惇、森勇介のミドル、森のサイド突破からクロスの形、飯尾一慶、高原のコンビネーション、常盤聡のヒールシュート、さらに金鐘必のオーバーラップなど、バラエティに富んだ攻撃アイデアが見られ、サポーターを沸かせた。だが、だからこそ、高原は語る。「せっかくあそこまで崩せて、多くのチャンスを作れているのにもったいない。崩して終わりがサッカーではない。最後のところをしっかり集中して決められるようにしないと」。今季18試合を終了し、「決めるところを決めないとこういう結果になる」と、終了後に選手たちの口から聞かれた試合は何度もあった。決定力を上げることは、「一番難しいところ」(鈴木惇)だが、それでも「チャンスをしっかりと決める力がないと、やっぱり上にはいけない」(高原)。

試合後の会見で、三浦監督は決定力について、次のように語っている。「決定力不足というと、ブラジルでは『実力不足だ』と言う人がいたけど、決して自分のチームはそこまでネガティブであるべきではないと思っている。少しずつ自分たちのスキルを上げていって、実力をつけ、決定力を上げて、より目標に近づいていくようにやっていければと考えている」。

チームはこれで、引き分けが9試合となった。「こういう状況を、ポジティブでもいけないけれど、ネガティブでもなく、やることをしっかりやって、締めるところをしっかり締めて、次の試合に向かいたいと思います」。高原は、今後へ向けしっかりと前を向いた。

「アウェイに来て、ヴェルディ相手に勝点1は評価してやらなければなとは思っています」と、柱谷哲二監督は語ったものの、水戸にも勝点3を手に入れるチャンスは十分あった。前半こそ、前節のvs神戸戦では40本以上あったという単純なパスミスを多発し、ほとんどの時間帯を東京Vに主導権を渡してシュート数も2本に終わったが、「ハーフタイムのところで、あまりにもミスが多いと。後半は、もう一度ちゃんと練習してきた、シンプルにボールを動かす。それから暑い時こそボールを大事にする。そこから入らないと、どんなに戦術をもっていたって、相手にボールを渡していたら絶対に攻められない」との指揮官の叱咤を受けたことで、後半は逆にペースを握った。

後半3分、CKから鈴木隆行の頭、同11分には山村佑樹と、後半は立ち上がりから水戸が続けて決定機を迎えると、徐々に勢いにのり、自分たちの思い通りにボールを動かしながらの展開を繰り広げた。中でも、やはり鈴木隆行の存在感は別格だった。高いキープ力、機転の効いたパスで橋本晃司、鈴木雄斗ら周りの選手の決定的シュートを導くなど、替えの効かないエースであることを示していた。

ただ、「これをずっと続けたらたら困る」と、柱谷監督。「特に10番(橋本)、中盤の2人、(西岡)謙太、細川(淳矢)、この辺がもうちょっとリーダーとしてチームを引っ張って欲しいと思います」と、後継者の台頭を熱望した。

今後、「もっともっと強いチームにするためには、苦しい時に正確にプレーできるか。そこを突き詰めていきたい」とは、柱谷監督。"決定力"も、"苦しい時間帯でも落ちない技術力"も、一朝一夕では手に入るものではないだろう。だが、それを突き詰めているのが、東京Vであり、水戸である。日々のトレーニングをとにかく大事だと位置づけている両チームが、この試合を経て今週一週間、そして、さらにその先へと積み重ね、どのようなサッカーを見せてくれるのだろうか。非常に楽しみだ。

以上

2013.06.09 Reported by 上岡真里江
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