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【J1:第4節 大宮 vs 鹿島】レポート:鹿島、不可解な失速。流れに乗る大宮、リーグ対鹿島戦4年ぶり2度目の勝利(13.03.31)

開始3分で敗戦を予感し、15分の鹿島の先制点で大敗も覚悟した。ベルデニック監督も「前半にあと2点3点奪われてもおかしくない状況だった」と、試合後に振り返っている。ところが鹿島は、前半30分を境に別のチームになった。終わってみれば3−1で大宮の勝利。リーグ対鹿島戦4年ぶり通算2度目の勝利に、満開の桜に包まれたNACK5スタジアム大宮が揺れた。

スターティングメンバーにズラタンの名前がなかった時点で、大宮にとって相当に厳しい戦いになると思われた。キックオフから2分の間に大宮は右サイドを3度破られ、そのうち1回、遠藤康の近距離シュートを北野貴之がビッグセーブしていなければ、あっという間にビハインドを負うところだった。大宮は最終ラインは高くしてコンパクトさを保とうとしていたが、鹿島の技術の前に、間にパスをスルスルと通された。15分にはクイックなスローインから遠藤が抜け出し、柴崎岳がペナルティエリア内に持ち込んでシュートし、こぼれ球をダヴィが押し込む。青木拓矢は「鹿島の切り替えの速さにやられた」と振り返るが、ルーズボールへの反応、球際でも大宮は歯が立たない。攻撃でも前線は孤立して中盤のサポートを受けられなかったし、そもそもトップへ良い形でボールが収まることもほとんどなかった。かつて黄金期を率いたトニーニョ セレーゾ監督が返り咲き、その黄金期を知るベテランも数多い鹿島が、そのペースを手放すとは到底思えなかった。

ところが30分ごろから、鹿島が信じられないペースダウン。運動量が落ち始め、切り替え、反応、球際でも優位を保てなくなった。34分には大宮チョ ヨンチョルが中央から強烈なミドルを放つと、立ち上がりにあれだけやられまくっていた右サイドで鹿島を押し込み、青木が体を張ってルーズボールを競り勝ち、中央から金澤慎がミドルシュート。グラウンダーのボールが右ポストに当たってゴールに飛び込み、36分に大宮が同点に追いつく。
鹿島は立ち上がりのパス回しが影を潜め、攻撃はロングボールが多くなり、孤立したまま強引にドリブルで仕掛けては奪われるようになった。大宮に脅威となったのは柴崎が前線に絡んで仕掛けてきたときくらいで、最も警戒すべきダヴィには菊地光将と高橋祥平が厳しく当たって自由を与えなかった。

少なくとも前半の時点で警戒信号が灯っていたが、鹿島は後半も立て直すことができなかった。一方、立ち上がりの出来に満足できなかったベルデニック監督から「鹿島のサッカーに対してビビっているのか! 戦術云々の前に走れている選手が少ないぞ」と厳しい言葉で発奮を促された大宮の選手たちは、運動量で鹿島を圧倒して主導権を握る。53分、鹿島の縦パスを奪った高橋が、長谷川悠にボールを当てて前線にダッシュすると、鹿島の守備は混乱に陥った。ペナルティエリア内で長谷川からのパスを受けた高橋がキーパーとDFを引きつけ、フリーのノヴァコヴィッチへ見事なアシストで追加点。
さすがに鹿島も再び攻勢に出たことでカウンターの応酬になったが、「ボールを運ばれながらも全体が戻りきることもできていたし、相手の攻撃を受けていても、そんなに嫌な感じはなかった。むしろこっちのカウンターのときに良い感触があった」と渡邉大剛が言うように、大宮はセカンドボールを拾えてリズムが出ていたし、鹿島のバイタルエリアでアタッカー陣が自由にプレーできていた。また、「ダヴィはDFラインの後ろにいることが多いのはJ2のころから知っていた」という高橋が菊地と協力してオフサイドにかけ、鹿島のチャンスの芽を摘むとともにダヴィを苛立たせ集中力を削ぐ。試合を通しての鹿島のオフサイドは9回を数えた。

鹿島は62分、遠藤に代えて本山をトップ下に投入し、野沢拓也を本来の右サイドハーフに。72分にはジュニーニョに代えて中村充孝を入れて攻撃の活性化を図るが、流れを変えることはできず、逆に79分、途中出場した大宮のルーキー富山貴光にドリブルから豪快なミドルシュートの3点目を決められた。スローインから1本のパスで左サイドを破られ、ドリブルで持ち込まれたもので、利き足とは逆であり確かにそう簡単に決まるようなシュートではなかったが、岩政大樹と青木剛の応対も彼らの名前と実績からは信じられないくらいに軽かった。あの、どこまでも勝負にこだわる、往年の『強い鹿島』の面影はそこに感じられなかった。この瞬間、大宮の勝利を確信したし、前半と違ってそれが現実となった。

鹿島は大迫勇也不在の影響は確かにあったのだろうが、30分までの出来は素晴らしかったし、それ以降の時間帯では個人の頑張りで何とかなるような問題ではなかった。失速の要因が単純にフィジカルの問題なのかどうかは判然としないが、速攻ベースの昨年と違い、積極的にプレスをかけてボールを奪いにいく今年の鹿島のスタイルであれば、ベテラン選手が多い現在のスタメン構成では今後も予想される事態ではある。かつての鹿島であれば、『省エネサッカー』もお手の物だったのだが……。ただでさえ、これから連戦が続く。トニーニョ セレーゾ監督がどう修正を施してくるのか注目だ。

ただ大宮も、スコアほどの完勝ではない。流れを支配して鹿島を失速させたというより、鹿島が自ら失速した流れに上手く乗った。2点目こそチームの意図通りの形、練習通りの崩しだが、1点目と3点目の素晴らしいミドルシュートには運の要素も強い。「粘り強く戦えたことは良かったが、最近、前半が相手の流れになりがちなので、そこをしっかり自分たちでコントロールしていくことが課題」と、渡邉は気を引き締めていた。
ともかく大宮はこれで昨年9月からリーグ戦15試合連続無敗に伸ばし、鹿島とのリーグ対戦成績を2勝5分10敗とした。星を五分とするためには単純計算であと4年が必要になるが、少なくとも選手たちの苦手意識は希薄になっていることは確かだ。ただし、大宮はまだ鹿島のホームで1勝も挙げたことはない。8月3日、折り返し初戦となる第19節で勝利したとき、苦手意識は完全に克服されるだろう。

以上

2013.03.31 Reported by 芥川和久
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