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【2009Jユースサンスタートニックカップ 準決勝 広島 vs 磐田】レポート:明暗がくっきりと分かれた一戦。広島、やりきっての決勝進出!!(09.12.24)

12月23日(水) 2009Jユースサンスタートニックカップ 準決勝
広島 2 - 0 磐田 (11:01/長居/776人)
得点者:38' 宮本 徹(広島)、76' 早瀬 良平(広島)
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広島と磐田。明暗がくっきりと分かれた一戦となった。準々決勝の柏戦で磐田のMFと吉田光範監督が退場処分を受けた時点で、戦いの歯車は狂っていた。高円宮杯全日本ユース(U-18)の勢いそのままに準決勝まで駆け上がってきたのは同じだったが、この舞台で自分たちのサッカーを貫いたか、相手に合わせたサッカーをしたか。この違いが勝敗を決した。

「3バックにしてみないか?」
試合前日、準決勝のベンチに入ることのできない吉田監督から、選手たちはこう提案を受けた。そこから選手たちは自分たちで話し合いの場を設け、実践すべきかどうかを考えあった。
「アグレッシブに行くために、3バックで行こうと決めました」(主将・上村岬)。
選手たちが考えた結果、いつもの4バックを基調にした4-2-3-1ではなく、広島と同じ3-2-4-1の布陣で挑むことを決意した。右サイドでチャンスメーカーとなっていた清水不在の穴は大きいが、それを全員で埋めようという意思もこの決断に含まれていた。磐田はこの大会、清水だけでなくそのほかの主軸が離脱すると言う危機を迎えたが、それを全員で乗り越えるだけの力があることを、柏戦で実証したことも大きな要因となっていた。

だが、皮肉にも、この決断が試合の行く方を左右してしまった。磐田が布陣を変えてきたのをみて、広島の森山佳郎監督はこう感じたという。
「うちらにあわせてきたのかなと。中盤の枚数を合わせてきて、正直びっくりしましたが、相手がいつもと違うことをやるということは、それだけこっちが有利だと思いましたね」。
結局この選択のため相手に付け入る隙を見せてしまった格好となり、試合は立ち上がりこそお互いの出方をうかがう慎重なものとなったが、30分を過ぎると、徐々に広島がペースを握っていった。
「高円宮杯で負けているので、何が何でも勝ちたかった。相手のやり方とかは一切に気にしなかった。とにかく自分たちのよさを出して、勝ちたかった」。
このMF大崎淳矢の言葉が、この日の広島のサッカーを如実に表していた。試合前に高円宮杯の準決勝で磐田に負けた試合の、最後のPKを外して全員が倒れこんでいるシーンを見せて、「この悔しさを絶対に忘れるな!」と森山監督に発破をかけられたことで、彼らの中に『勝ちたい』というという思いがさらに強くなり、相手のシフトチェンジを反対にプラスに捉えて、自分たちのサッカーを全力で出し切ることに集中することが出来た。
中山雄登と茶島雄介のダブルボランチ、大崎と水頭廉の2シャドーが、1トップの砂川優太郎と連動し、激しいポジションチェンジで中盤を活性化。そこに右の早瀬良平、左の宮本徹が激しいアップダウンで、両サイドを切り崩し、磐田を縦に横に大きく揺さぶっていく。特に左サイドの宮本は効果的なドリブルと、正確なクロスで左サイドを完全制圧。磐田は内田恭兵と湯本凌の両ウィングバックが低い位置でプレーせざるを得なくなり、守備は5バックの状態に押し込まれる。上村岬と和久田章太のダブルボランチが左右に押し広げられた結果生まれたバイタルエリアのスペースを、広島の流動的な中盤に有効活用されるという悪循環に陥った。
そして38分、ワンタッチ、ツータッチの見事な中盤のパスワークから、水頭の左へのパスを受けた宮本が一気にペナルティエリア内に進入し、深い切り替えしから、見事なコントロールショットを決め、広島が先制に成功する。

後半、磐田は湯本を右SBに下げ、本来の形である4-2-3-1にシフトチェンジするが、一度狂った歯車は簡単には戻らず、さらにリードしてさらにハートに火がついた広島の落ちない運動量と、徹底したパスサッカーの前に、反撃の糸口がつかめない。76分にはカウンターから左サイドを破られ、宮本のセンタリングを早瀬がヘッドで合わせ2点目挙決められる。これで勝負は決した。

最後まで自分たちのサッカーをやりぬいた広島が、高円宮杯準決勝のリベンジを果たして、3年ぶりの決勝進出を決めた。
「高円宮杯での負けは、相手より僕らが何かが足りなかったから負けた。すべての部分で相手を上回っていたら負けなかった。なので、今回はうちが上回れるように戦った」。
稀代のモチベーターである森山監督の檄に、選手たちが呼応し、ファイナリストの資格を手に入れて見せた。彼らの武器はサッカーの質はもちろん、『自分たちを信じる強さ』にある。
「僕らは根性勝負になったら絶対に負けない」
茶島はそう言い切った。彼ら3年生にとって最後の大会だからこそ、より気持ちは強くなる。3年間やってきたことに対する誇りと自信。そしてその姿を見て、後輩も刺激を受ける。この広島の団結力を、この試合でもはっきりと見ることができた。

一方、敗れはしたものの、高円宮杯全日本ユースから今大会までの磐田の戦いぶりは見事の一言だった。大会を通じて、選手たちが一つの目標に向かって成長していく過程がはっきりと見えたし、何よりも経験を力にしようとする姿勢がチームとして感じられた。今大会は進路などの問題もあり、選手たちの気持ちの面でも難しい大会であったことは間違いなく、磐田は実際にその難しさを痛感する形となったが、残ったメンバーがさらに大きな力を発揮しようとした姿ははっきりと見えた。3バックにしたのも、決して監督の言いなりではなく、自分たちで熟考した結果。だからこそ、選手たちもこの結果を受け入れられた。
「スタンドで見ていました。本当に選手、スタッフに迷惑をかけた。選手たちは本当に気持ちをこめて頑張ってくれた」(吉田監督)。
彼らにとっては悔しい結果に終わったが、最後まで戦い抜いた彼らは、きっと将来に繋がる大きな財産を、この試合、この大会で掴んでくれたはずだ。

以上

2009.12.24 Reported by 安藤隆人
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