Ｊ２の折り返しとなる第21節。本城ではしっかりとした守備からリズムを作り出す北九州と、ポゼッションサッカーを高めている愛媛が対峙する。目指しているサッカーはどこまで完成しているのか。そういう面を図る試合にもなりそうだ。

さてまずは愛媛について触れたいが、九州以外の地域をホームとするチームが九州勢と連続して対戦するケースが意外とあるようで、５月31日の第16節・栃木戦のプレビューでも九州チーム３連戦だということを書いていた。そして土曜日に北九州と当たる愛媛も６月下旬からアウェイで大分、ホームで熊本と戦い、今節は九州勢３連戦の最終日となる。
その大分戦では逆転を許すも終盤に追いついて引き分け。前節の熊本戦では後半に一気に流れを呼び込んで４得点を挙げ、この２戦で６ゴールと攻撃力を高めてきている。特に熊本戦では高い位置でポゼッションしてリズムを作ると、サイドから崩してＦＷがきっちりと加点するという狙いとしているサッカーを見せた。また河原和寿は２試合連続ゴール中で、この試合でも右サイドからのクロスに対してタイミングを外してペナルティエリア内に入り試合を決定づける３点目を挙げている。
積み上げてきたものがひとつのかたちになってきたと言える状況。今節でも熊本戦で見せたようなポゼッションを軸に、サイドを深くえぐったり、ギャップをチームで突いていく攻撃で、得点へと結びつけていきたい。

北九州は前節、アウェイで首位・湘南と対戦。経験値で上回る相手に残念ながら一矢報いることもできず０−２で敗れた。ただ北九州らしさはあまり見せられなかったとはいえ、後半にはシュートチャンスはいくつかあった。強い相手にどこまで通用するかを狙った試合で攻撃面では一定の手応えがあったのも事実だ。

もっとも、しっかりとしたディフェンスからゲームに入り、後半に流れを引き寄せるという北九州のゲームプランに持ち込めなかったことが敗因。目指している部分にまだクリアできていない「課題」があるということが鮮明になった試合でもあった。ただ４試合ぶりの黒星を喫したことで、勝点が積み上がっているときには見えにくい――あるいは見えていても目をつむりやすい――ネガティブな部分で、修正を加えやすくなった。
実際に試合前日の練習は通常であればそれほど追い込むことはしていないが７月４日は紅白戦やセットプレーにも時間を割き、小雨の中、緊張感は高かった。「引いてやっていくというのをスタイルにせず、ここで切り替えていきたい」と話すのは八角剛史。今節で再び北九州らしいサッカーが見せられるか、またそこを目指した意識の統一を見せられるか、北九州の地力が問われる試合になりそうだ。

ポゼッションの愛媛に対して星原健太は「攻撃力のある相手で３人目の動きもある。ハマればやられてしまう」と警戒。「奪ったボールをしっかり前に付けて起点を作りたい」と話し、引いたり押し上げたりのバランスにも言及していた。第19節・千葉戦で今季初ゴールを挙げた井上翔太は愛媛出身。「それほど意識はしていない」と話すが、「ポゼッションできるし、うまく外してくるチーム。下がりすぎると愛媛のペースになる」と入念に分析。パフォーマンスを高め「勝ちたい」と意気込んでいる。

こうした星原、井上らのゲームメイクをいかにゴールに近づけるかも求められている部分。ビルドアップの軸となる選手たちは一様に前節・湘南戦でできなかった押し上げの面を強く意識しており、テンポ良く前線に運んでいきたい。特にフィニッシュの部分では、この試合が「小倉北区民感謝デー」ということもあり、北九州市小倉北区出身の池元友樹に大きな期待が寄せられる。前線選手の距離感や池元に入るボールのクオリティ、またその入り方そのものなど突き詰めなければならない関係性の部分はあるが、彼自身の持ち味であるドリブルや両足から繰り出される多彩なシュートなどを武器に早い時間から貪欲に狙っていきたい。湘南戦よりも早くそういう時間を作ることで、愛媛のリズムに引き込ませないこともできるだろう。

好対照のチームが当たる今節。上位固めへ攻守に修正を重ね、北九州は再び『らしさ』を披露できるか。他方、愛媛は、大分と熊本で計６点を挙げた攻撃力とポゼッションを伸長し勝点を手にできるか。Ｊ２前半戦の折り返しとなる第21節、それぞれの半期集大成を見せつける。

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2014.07.04 Reported by 上田真之介