拳を握りしめる。両手を振り上げる。叫ぶ。抱擁する。頬が緩む。歓喜を味わう機会は、たっぷりとあった、はずだった。だが、チャンスの数では東京V(1△1)、福岡(0●2)を上回りながらも、得点機を何度も逸してしまう。栃木はアウェイ2連戦を1分1敗の勝点1で終え、順位を7位から9位に下げた。リーグ戦の折り返し地点を前に、プレーオフ圏内の6位がやや遠退いた。
前節の福岡戦は、「序盤の15分」と「魔の4分間」が明暗を分けた。開始早々からアタッカー陣が、相手3バックの穴を突き、続けざまにゴールに迫った。抜群の立ち上がりと、完璧な3バック攻略にゴールの予感は高まったが、3度の決定機を逃したことで逆に先手を奪われてしまう。決定力不足。直近の試合での課題が、またしても露呈した。
「良い部分がたくさん出たけど、それにしてはシュートが入らなかった」。
GKとの1対1を決め切れなかった湯澤洋介は、その責任を重く受け止めた。ただ、ゴールが決まらないことは反省すべきだが、チャンスが作れていることからそれほど悲観することはない。大久保哲哉が言う。
「1回のチャンスを一発で決められればいいけど、なかなか上手くいかない。3回、5回、10回とチャンスを作れるようにすれば、ゴールは入る」。
肝心なのは、チャンスの数を減らさないことだ。そうすれば、大久保が言うように、自ずとゴールは決まってくる。阪倉裕二監督はゴールが決まらないことに関しては咎めず、チャンスを作れていることにフォーカスしてマネジメントしている。トレーニングでは「枠、枠、枠!そこの質を高めるぞ」と選手に発破をかけ、しっかりと意識付けと微調整を怠らない。一つのゴールでところてん式に、例えば18節の大分戦(4○0)のようにゴールが生まれることもある。そのためには、継続的にゴールにつながるシーンを創出することが求められる。決定力改善の特効薬はないのだから。
ブラジルワールドカップでの日本対コートジボワール戦のリプレイ映像を見ているかのような衝撃に栃木も襲われた。
「前から行くと(1失点目の場面のように)プレスを外されることはある。それよりも、その後に失点したのがいけなかった」。
廣瀬浩二が悔やんだのは、1失点目の直後に喫した2失点目だ。「魔の4分間」の連続失点で、ほぼ大勢は決してしまった。「1点が入り(メンタルが)崩れた感じがあった。前半を0―1で終えていたら、(同点にした)ヴェルディ戦みたいにやれたはず」とは湯澤。最低でも前半をスコアレス、最悪1失点で抑えないと、現段階で栃木が勝点を得るのは難しい。仮に今節の富山戦で先行されても焦らず、気持ちを切り替えて戦わなければ轍を踏む。攻守の切り替えと同時に気持ちの切り替えも、今後に向けた重要な要素になってくるはずだ。
一方、富山は前節の長崎戦(1○0)の勝利で、ついに連敗を9でストップした。それも、決勝弾を決めたのが、“Mr.カターレ”朝日大輔というドラマチックな展開で。流れを引き寄せたソ ヨンドクの電撃移籍で戦力は削がれたが、それを凌駕する勢いが今の富山にはあるはずだ。ようやく片目が開き、意気上がる中、今季初の連勝を狙うには、ボールを奪った後の最初のパスがキーになるだろう。そこの質が向上すれば、志向する縦に速いサッカーが可能となり、ポテンシャルの高い白崎凌兵と中島翔哉が活きるはずだ。時に中島は東京V在籍J最年少ハットトリックを栃木戦で達成しており、相性は良い。シュートセンスに優れた中島の活躍が、今季3勝目には不可欠になる。
大混戦のリーグ戦で上位に食らい付くには、連勝することに加え、連敗しないこともまた重要になる。栃木は今季1度しか連勝していないが、連敗も1回きり。連敗回避が一ケタ順位を堅持し続けている要因であることは間違いない。リーグ前半戦の最後を勝利で締めくくり一つでも順位を上げることが、後半戦のモチベーションにもなる。キャプテンの廣瀬は、力強く宣言した。「連敗はできない。上に踏み止まるためにも、絶対に勝点3を取る」。
以上
2014.07.03 Reported by 大塚秀毅
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