もっと引いてくるのかと思っていたが、神戸は前半立ち上がりから積極的に前からプレスを掛けてきた。そうした戦いは想定の範囲内ではあったが、試合後の会見で安達亮監督が「相手よりもボールを長い時間保持しながら1試合を終える。それが最初にミーティングで言った言葉です」と述べており、明確な意志を持って川崎Fをポゼッションで上回り主導権を握ろうとしていたことがわかる。
大久保嘉人にも、中村憲剛にも特にマンマークを付けず、全体をコンパクトに維持して真っ向勝負を挑む。そんな神戸に対し、川崎Fは磨いてきたパスワークを発揮する。前から来るなら、その動きを外して縦にパスを付ければいい。そんな風間八宏監督の指導をそのままピッチ上で実践し、神戸を押し込んでいった。
だからこそ、前半18分に奪われた先制点には驚かされた。神戸に与えたCKの場面。なぜだかエリア内でフリーになっていた森岡亮太がダイレクトで合わせたシュートに対し、西部洋平は弾くのが精一杯。このこぼれ球を、シンプリシオが押し込んだ。アウェイチームに与えた先制点。試合が難しくなることにもなりかねなかっただけに、その1分後の同点ゴールの意味は大きかった。
試合を振り出しに戻したのは、大久保でも、中村でも、レナトでもなかった。どちらかというと、彼らの影に隠れがちな小林悠である。小林は、パウリーニョのパスを受けた大島僚太からの縦パスに反応する。このパスについて大島は「自分が右側にいる時は(小林)悠さんがああいう動きをしてくれますし、試合前にも話をしていましたので、思った通りに出せました」と振り返る。大島からのパスを受けた小林は絶妙なタイミングで最終ラインの裏に走り込み、トラップしてボールを持ち直してゴールに突き刺した。
押せ押せの川崎Fは28分にも大久保からのラストパスを受けた中村が逆転ゴールを奪う。プレビューでも引用した「いつもどおりにサポートするだけ。やりますよ。一緒に。1人でやってるわけではないからね」との言葉通り、大久保1人だけではないことを証明した中村は、テレビ番組で予告していたSKP14とのゴールパフォーマンスを見せてサポーターを盛り上げた。
試合をひっくり返した川崎Fにとって、ここから有利な展開になるはずだった。神戸は前から出ざるを得ず、そうした展開は川崎Fにとっては望むところ。そして実際にチャンスを作った。しかし、川崎Fを相手に攻め勝つことを目指していたという神戸も強いメンタルで対抗した。
先に動いたのは安達監督。川崎Fの足が止まり始めたことを確認し「相手の足が止まりかけていたのが見えていたので、もっとパスワークで崩せるような選手を入れたつもりです」との判断の下、73分にペドロ ジュニオールと小川慶治朗に代えて高柳一誠と松村亮をピッチに送り込む。この神戸の交代采配に対し川崎Fは後手を踏む。特に松村に対しては、その個人技に対抗できずズルズルと守備を下げられることとなった。
結果的に神戸が勝利を諦めなかったのは、川崎Fが神戸を仕留め切れなかったから。例えば53分には、レナトがクロスバーを叩くシュートを放っている。67分、68分にも決定的な形を作るが決め切れない。そんな展開の中、73分に交代出場した松村は神戸の攻撃に大きなアクセントをもたらした。
足が止まりかけた川崎Fに襲いかかる神戸は、その松村が後半アディショナルタイムとなる90+1分に同点ゴールをねじ込む。川崎F有利の視点で書いたプレビューの最後に油断について書いたが、その一言が現実となってしまうこととなった。
土壇場で追いつかれた川崎Fはホームで引き分けられないとばかりに攻勢に出るが思うように攻めきれず、そのままタイムアップの時を迎えた。
敵地での2−2の結果について安達監督は「アウェイで、昨年上位の川崎から勝点を取って帰れるというのは勝ちに等しい引き分けだと思います」と前向きに評価。1週間後のホーム開幕戦(3/8vs柏@ノエスタ)に向け「必ず勝点3取れるようにまた頑張りたいと思います」と述べている。
一方の風間監督は「非常に残念なゲームでした。最後のところ、チャンスがありながら決め切れないとこういうことになる、というゲームだったと思います」と悔しさを隠さなかった。昨季に引き続き、昇格クラブとのホーム開幕戦を引き分けで終えた川崎Fは、試合をどう締めるのかという課題が突き付けられる試合となった。
以上
2014.03.03 Reported by 江藤高志
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