ニッパ球(三ツ沢球技場)で行われる横浜FCホームの愛媛戦は、2009年の第6節の対戦以来、今回の試合まで4試合連続でスコアレスドロー。そしてこの試合も、そんな相性に導かれるように、スコアレスドローへの道をたどった。
気温5.6度、雨、強風という悪コンディションと、開幕戦ならではの硬さも加わり、試合の立ち上がりは少し不安定な展開となるが、最初にペースを握ったのはコイントスで風上を取った愛媛。守備時には明確に5バックを並べながら、中盤の球際にプレッシャーを仕掛け、機を見て2シャドーが相手ボランチの脇でボールを収める形で試合のペースを握っていく。
ただ「前半は雨もあるので、セーフティーなプレーを心がけた」(小池純輝)と横浜FCが押し込まれた時も守備のバランスを崩さなかったため、西田剛が「クロスまで持ち込めたのは何度か」と振り返るように、愛媛がそこから決定機に持ち込める状況は少なかった。対する横浜FCも、15分を過ぎると飯尾一慶のプレスバックが機能しはじめて、攻撃につながる守備ができるようになってくる。その流れから小野瀬康介が25分に放ったヘディングシュート、シュートに至らなかったが34分に中島崇典、パク ソンホ、内田智也とゴール前に運んだシーンは狙い通りの組み立てができていた。また、5バックを敷きサイドを崩しにくい状況で、パク ソンホへのフォローを生かして縦の変化を付ける狙いも形になってきていた。ただ、横浜FCも最後の精度を欠き、両チームともシュート1本ずつで前半を終える。
後半、50分に愛媛・林堂眞が2度目の警告で退場となると、試合の構図が一変する。愛媛は4−4−1の布陣に変更し、明確にスコアレスドローを念頭にゲームを進める。すると、当然のように愛媛のクリアボールも含めて横浜FCがボールをポゼッションし、ペナルティーエリア近辺に敷かれた愛媛の2ラインの守備ブロックを崩しにかかるというプレーが40分間続けられた。
しかし、ここで愛媛は抜群の意思統一を見せて、横浜FCのクロスを跳ね返し続ける。渡邊一仁は「相手が2トップにして、ターゲットが2枚になったことで、逆に横浜FCの崩しのパターンが減ったのは助かった」と振り返ったが、横浜FCの攻撃から徐々にバリエーションが失われていく。それを裏付けるように、松下年宏も「単純にクロスだけでなく、中に相手を集めてからサイドを使うとか、サイドチェンジを使うとか、そういうアイディアを出しながらバリエーションを増やす必要がある」反省を口にした。後半見せた7本のシュートは愛媛の壁の前にゴールを割ることはできず。試合は、開幕戦の重苦しさを打開できないまま終了した。
横浜FCにとっては、開幕ダッシュの弾みとしたかった試合だけに、相手に退場者が出てのスコアレスドローという結果は、試合展開のアヤが影響したとしても、フラストレーションが残る結果だろう。ただ、冷静に振り返れば、愛媛に打たせたシュートは2本のみ。開幕戦の不安定な状況の中でも守備の安定は光った。攻撃の形も、意識の共有はある程度図られている。あとは、ゴールゲットまでのイメージの共有が課題。結果論にはなるが、数的優位になったためにゴール前を固められた時間よりも、前半20分から退場者が出るまでの横浜FCがペースを握れていた時間でのシュート本数を増やせるようになることが重要だ。トップの使い方で思い切りが足りない場面もあっただけに、ゴールイメージの共有と実現が、勝点3への課題となる。
愛媛にとっては退場者が出る難しい状況において、見事な意思統一の下でアウェイゲームで勝点1を持ち帰る結果となったことは、開幕戦としては許容できる結果となったのではないだろうか。ただ、こちらも西田が「サイドで起点は作れるが、まだシュートまで持って行く数は少ない」と振り返るように、シュートまでの道筋の構築はこれから。数的不利になったこともあり、そのトライはこの試合ではできなかっただけに、次節の水戸戦(3/9@ニンスタ)に向けて攻撃の意識を合わせていきたい。
ピッチコンディション、試合の展開ともに、両チームの思い通りに進んだわけでなかったが、その状況下でも両チームともに見せられるプレーができたことも確か。決して勝点1の意味も小さくない。前を向ける開幕戦だったと言える。
以上
2014.03.03 Reported by 松尾真一郎
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