12月２日の朝、目覚まし時計をセットしたのになぜか寝過ごし、横浜駅で降りるはずのサンライズ瀬戸で東京駅まで行ってしまって、誰かに起こされて焦った。…という夢を見た。千葉のＪ１昇格プレーオフ準決勝敗退も夢なら良かったが、残念ながらそれは変わることのない現実だった。

スタジアムでは泣かない主義だし、試合後に泣いている選手たちの顔を間近で見ていないので、昨季と同様にその場で泣くことはなかった。でも、寝台特急の個室なら、時間が経って実感が沸いてきて泣いても誰にも見られない。もともと飛行機が嫌いなうえに試合当日の徳島からの帰りの飛行機が取れなかった。子どもの頃から車酔いしやすいので長時間バスに乗るのも苦手だし、試合後に仕事をしていたら自宅の最寄り駅まで辿り着くための新神戸発の新幹線に間に合う徳島駅発の高速バスに乗れるかも怪しかった。早く自宅に帰りたかったので寝台特急を選んだのが正解だったかもしれない。でも、昨季と同様に現実感が乏しく、サンライズ瀬戸に乗っても涙は出なかった。だけど、いろいろなところから千葉の勝利を願って応援していた人たちの気持ち、特に徳島までさまざまな方法（中には千葉から車で往復の人もいたとか）で駆けつけ、筆者の試合前写真の撮影のお願いに笑顔で応じてくださってお話を聞かせていただいた方たちがどんな思いで帰路に就いているのかと思うと切なく、悲しくなってちょっと泣きそうになった。

来季の千葉はＪ２で５年目のシーズンとなり、千葉を見限って応援をやめてしまうサポーターやファン、支援をやめてしまうスポンサーもいるかもしれない。それでも、どんな状況になっても変わらずに千葉を支えようとする人たちがいてくれる。だからこそ今、その人たちのためにも千葉というクラブに在籍する人々に、特に選手たちに言いたい。

「もっともっと強くなろう！」

『１点』を失い、あと『１点』が取れずに引き分けたＪ１昇格プレーオフ準決勝だが、今季の千葉はそういう戦いぶりで勝点を落としてきた試合が多かった。それでも、Ｇ大阪や神戸のように千葉の良さを消そうとするよりは自分たちのスタイルを貫くチームとはいい勝負ができた。だが、なりふりかまわずに徹底的に千葉の良さを消しにかかり、球際ではガツガツと激しく当たり、最後まで走り抜く長崎のようなチームには千葉は弱かった。その原因について、山口智選手は11月15日にこんなふうに思っていると話した。
「もっとチームとして全員がドンとかまえておけばいいと思うんですよ。相手にやられていたとしても、ボールを持たせてあげているよというぐらいに。自分たちの良さを消されて苦労している試合は、やらされている感が強くなりすぎるというか。それから、自分たちにこれだというスタイルがないから、相手に付き合ってしまうようなスタイルになってしまっているのは否めないですよね。自信がないとやっぱり難しいから」

戦術の理解力や状況判断力、技術の高さ、走力を含めたフィジカルの強さももちろん強いチームになるためには必要だろう。だけど、今季の千葉を見ていると選手の精神面の弱さがすごく気になる。Ｊ１昇格プレーオフ準決勝のレポートで筆者は「攻守のミスを減らして」と書いたが、ミスの減少、そして長所をしっかりとプレーで出すことを増やすのは、精神的に強くなることで可能な部分もあるのではないだろうか。Ｊ２リーグ最終節の試合後に、深井正樹選手もこのように話していた。
「（千葉の）みんなが持っているもの、技術とかはＪ２でも上のほうにいるので、あとはやっぱり気持ちを出すというか、球際で激しく行ったり、相手よりも走ったりということは基本の部分だと思う。そのへんをもっともっとやらないといけないと思うし、このあとの２試合（Ｊ１昇格プレーオフ）はそういう自分たちの意地みたいなものをピッチの中で表現できれば結果はついてくると思うんです」

誰かに頼るのではなく、自分が責任を持ってやりきる強さ。ミスを恐れて逃げのプレーを選択するのではなく、チャレンジのプレーを選択する強さ。もちろんチャレンジしたことがミスとなることもあるだろうが、そのチャレンジ精神は観客やチームメイトに必ず伝わるし、チャレンジのプレーならばチームメイトのカバーもしやすいはずだ。そして、気持ちの強さをそのまま全部出してしまってプレーに込める力がいつも１００パーセント全開になるのではなく、その場に一番適したプレーができるように気持ちとプレーを見事な匙加減にコントロールできる強さ。そんな強さを身につけて、もっともっと強くなろう。

12月２日の朝、久しぶりにちゃんと見た朝日はとても綺麗だった。来年、千葉がＪ１に自動昇格した日の翌日の朝日が、千葉と千葉に関わる人々を祝福するようにもっともっと綺麗でありますように。

以上

2013.12.03 Reported by 赤沼圭子