8月8日（日） 2010 J2リーグ戦 第21節
柏 0 - 1 東京Ｖ　（18:04／柏／8,825人）
得点者：36' 富澤清太郎（東京Ｖ）
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柏は中盤から前へ効果的なボールがほとんど入らず、ボランチと最終ラインが後方でパスを回し、最後はパク ドンヒョクが長いボールを送るだけの展開が序盤から目立っていた。起点となるはずのレアンドロ ドミンゲスへの縦パスは、東京Ｖのダブルボランチ柴崎晃誠、佐伯直哉の網にかかり、前線の動きに工夫が見られず連動性に欠けた。サイドの寄せも甘いため、ボールを失うとサイドバックを絡めた東京Ｖのスピーディーなサイド攻撃を受けてしまい、いとも簡単にオープンスペースを突かれてフィニッシュまで持ち込まれた。紛れもなく試合は集散の速さで柏を上回った東京Ｖのペースだった。

そんな停滞したリズムを変えるべく、早くも19分にはネルシーニョ監督が動く。田中順也に代え、新外国籍選手ホジェルを投入。４−２−３−１から４−４−２へシステムを変えた。
24分、東京ＶＧＫ土肥洋一のキックに対し、近藤直也が落下地点の目測を誤り、弾き返せずに後方へ流した形になってしまう。「攻めるという意識が選手にあってのこと」と川勝良一監督が評したように、すでにロングボールが入った時点で猛然と柏ＤＦの背後を狙うスプリントを開始していた河野広貴が、浮き球のルーズボールにいち早くコンタクト。背後を取られたパク ドンヒョクは河野に手をかけ、引き倒す。これが得点機会阻止の一発退場となった。
そして柏にとって最大の問題は36分の失点シーンである。「助走をつけて入り、良いボールが来れば合わせるだけ」（富澤清太郎）。その言葉どおり、ファーサイドへのボールに、助走をつけて飛び込んできた富澤のヘッドが炸裂した。またしてもマークを掴みきれずにセットプレーで失点を喫す。大谷は「自分たちでああしよう、こうしようと詰めている」と言うが、セットプレーでのゾーンディフェンスの綻びが修正しきれていないことをまんまと露呈した結果となった。

後半、柏はまだコンディションの低さは否めないものの、ホジェルが足元の柔軟さとフィジカルの強さで若干ルーズなパスが入ってもマイボールにし、懐の深さを利用して前線でポイントを作った。57分、バイタルエリアでのルーズボールに懸命に反応した澤昌克が、足を伸ばして渾身のパスをホジェルに送る。土屋征夫、吉田正樹がホジェルの前を塞ぎにいったことで、工藤壮人がフリーの状況を得たが、ホジェルは工藤へのパスではなくドリブルを選択してしまい、カバーに入った佐伯にクリアされた。
終盤は林陵平の投入でパワープレーに出た柏に対し、東京Ｖの体を張った守備もまた見事なものだった。「上手く競りながら、落下地点でサンドしよう。そのへんで密集を作ってくれてしのいでくれた」（川勝監督）。ホジェル、林のハイタワーには富澤と土屋のセンターバックが競り、ボランチが挟み込み、サイドバックが絞って密集地帯を作る。柏の前線にこぼれ球を狙う隙すら与えず、そればかりか数的優位の利点を生かしてサイドを消し、より弾き返しやすいように、外からではなく柏が縦にロングボールを蹴らざるを得ない状況へ持ち込んだ。ロスタイムの４分が経過し、林のヘッドが大きく枠を逸れた時、柏の無敗記録終焉を告げるタイムアップの笛が鳴った。

完敗である。たしかにパク ドンヒョクの退場も勝敗に影響を及ぼしたかもしれないが、それは単なるひとつの事象に過ぎない。それ以上に東京Ｖの攻守両面におけるパフォーマンスは質が高く、川勝監督が記者会見で「チームの結束、団結力」を口にし、「ハードワークを放棄しない選手が揃っている」ことを強調したように、凄まじい気迫はメインスタンド上部の記者席までビリビリと伝わってきていた。
一方、19戦無敗が一転して、柏は「４戦勝ち星なし」となった。ハードワークで負け、ミスも多数目立ち、セットプレーの守備も修正しきれていないという点では、今回の敗戦は多くの課題を浮き彫りにさせてはくれた。プレビューでも述べたが、柏が強いチームへ変貌を遂げるためには、やはりこの“峠”を越えなければならない。柏は、ここから真価を問われる。

以上

2010.08.09 Reported by 鈴木潤