一気に流れを引き寄せる先制ゴールを挙げたのは、やはりこの男、FW宇佐美貴史だった。
37分、MF阿部浩之からのパスを受けると、左に流れながらコースを作り出し、左足で一閃。ゴール右下を捉える。出場したヴィッセル神戸戦で7戦9発と『神戸キラー』のFW宇佐美が、その記録を8戦10発に伸ばす先制点。逆転優勝を狙うG大阪にとっては待望のリードを奪い、スタジアム全体が歓喜で揺れる。しかも、その6分後にはMF遠藤保仁のパスを受けたFW宇佐美が再び左サイドでボールを持つと、狭いスペースを通してグラウンダーの絶妙なクロス。中央に詰めたFWパトリックが落ち着いてゴールに納めて一気に神戸を突き放し、前半を折り返す。
立ち上がりから個々の守備意識も高く、G大阪の攻撃にもしっかり身体を張って対応し、かつ、ボールを持ってからは速い攻めで、サイドから、中からとバリエーション豊富な攻撃を仕掛けていた神戸だったが、20分を過ぎてからは、徐々に防戦一方の展開に。セカンドボールの殆どをG大阪に拾われ始めたこともあり、自陣でプレーする時間が増える。ボールを奪ってもミスも目立ち、効果的な仕掛けが見られない。しかも、アウェイの地で2点を失うという展開に重いムードが漂う。その流れを変えようと、安達亮監督が早々に動き、後半の頭からFWマルキーニョスに代えてFWペドロジュニオールを投入。その采配が反撃の狼煙になるのか、注目の後半が幕を開ける。
だが、後半も立ち上がりからG大阪が試合の主導権を握る。前半から光っていた攻守の切り替えの速さも健在で、2点のリードにも気が緩む気配はない。その勢いのままに49分には再びFW宇佐美が躍動。相手DFのクリアボールをカットしたFW宇佐美が今度は右から仕掛け、そのままドリブルでエリア内に持ち込んで右足でシュート。低い弾道のボールは先制点は逆にゴール左下を捉え、G大阪がリードを広げる。
この状況に神戸・安達監督は司令塔MF森岡亮太に代えてMF枝村匠馬を投入。攻撃に変化を見出そうとするも、流れは変わらない。というより、ボールを奪っても仕掛けの段階で相変わらずミスも多く、またG大阪の守備の圧力に屈してボールを奪い返されてしまう。59分にはようやくシュートチャンスを作り出し、MF枝村が思い切りよく右足を振り向くも、G大阪のGK東口順昭がファインセーブ。2分後の61分にも、MF小川慶治朗からのパスを受けたFWペドロジュニオールがペナルティエリア内、深い位置までまで切れ込み、ほぼフリーの状態でシュートを放つが、これもGK東口に右足でコースを防がれてしまう。それでも粘り強くゴールに向かい続ける中で、70分にはMF枝村のクロスにMF小川が頭で合わせ1点を返すが、以降は、チャンスらしいチャンスはなく。これに対してG大阪もフレッシュな攻撃陣を二枚投入するなどしながらカウンターから好機を伺うが、こちらも二度ほどあったチャンスをゴールに結びつけることが出来ないまま試合はアディショナルタイムに突入する。
『5分』と表示された、そのアディショナルタイム。3−1のまま試合が進み、4分ほど経った頃だろうか。特にシュートシーンでもないところで、観客席が急にドッと沸く。しかも、目の前の試合はそっちのけで携帯電話を手に、ガッツポーズを作ったり、隣の人と抱き合ったり、スタンドが『歓喜』に包まれる。浦和リードで進んでいた『鳥栖vs浦和』戦で、鳥栖がアディショナルタイムに同点弾を叩き込んだのだ。その歓喜から約1分後に、試合終了のホイッスル――。
結果、神戸を3−1で下したG大阪は、浦和の結果を受け、最終節を前に今季初の『首位』に浮上。試合終了後のホーム最終戦セレモニーでは、キャプテンMF遠藤の声にスタジアム中が一つになった。
「最後に、最高の試合が待っています。必ず、優勝します」
以上
2014.11.30 Reported by 高村美砂