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【J1:第33節 名古屋 vs 大宮】プレビュー:去りゆく仲間たちに勝利という名の花束を。功労者たちへの思いを込めて、名古屋が残留争い真っ只中の大宮の挑戦を受ける。(14.11.29)

“負けられない”ではない。“勝ちたい”試合だ。名古屋のホーム最終戦は、そうした両チームの思惑、願い、そして意志がぶつかり合う、緊張感あふれる一戦が期待できる。

名古屋にとってのモチベーションは、二つある。一つは本拠・豊田スタジアムでの、今季リーグ戦初勝利である。2014年の豊田スは、名古屋にとっては残念なことに“鬼門”と化していた。開幕戦から8試合で、2分6敗。ヤマザキナビスコカップで辛うじて1勝を挙げてはいるものの、相手は早々に降格を決めた徳島だった。異常事態とも言えるこの状況に、指揮官とクラブは過剰なまでの反応を示している。たとえば今週の木曜日には恒例の非公開練習を豊田スで行う気合の入りっぷり。もっとも「スタジアムのせいじゃないよ」と田中マルクス闘莉王はその効果自体には否定的だったが、2日前に試合会場で練習をするという異例の対応からは、クラブ側の気持ちがにじみ出る。西野朗監督については偶然にもこんなことがあった。豊田スで行われた先の日本代表vsホンジュラス代表の際、記者はたまたまエレベーターで観戦に来ていた西野監督と遭遇。挨拶をかわすと「日本が勝って厄払いになってくれればね」と冗談ともつかないセリフを口にした。百戦錬磨の指揮官ですら、今季の豊田スとの相性については神にもすがりたい状況なのである。このままシーズン未勝利という不名誉な珍記録を残さないためにも、何よりホームに駆け付けるサポーターとともに今季初の歓喜の雄たけびを上げるためにも、名古屋は勝点3獲得だけを追求する。

名古屋が勝星を欲しがる二つ目の理由は、チームを去るレジェンドたちに、花道を用意したいという強い思いだ。玉田圭司、ジョシュア ケネディ、そして中村直志。それぞれ今季で9年目、6年目、14年目というクラブ史の一部であり、また2010年のリーグ優勝の原動力となった英雄たちである。彼らがチームを去ることは、名古屋のひとつの時代、サイクルが終わったことを如実に感じさせる。

玉田は契約満了の発表翌日、「ホーム豊田での最後のゲームだから、悔いを残したくない。でも普段通りやることだね。フィニッシュに絡んで、『オレはこういうプレーヤーだ』というところを見せたい。平常心が大事だけど、それでもゴールは狙っていきたいね」と話した。極上のテクニックとゲームビジョンを持つストライカーの、見る者の溜息を誘う攻撃的才能は衰え知らずで、今週含めここ数週間のトレーニングでも好調をアピールしてきた。水曜日の紅白戦ではスタメン組として川又堅碁とツートップを形成し、8月30日以来の試合出場へ大きく前進。「ちょっとカウンター一辺倒になっているから、時間を作ってメリハリをつける」と、現在のチームに不足しているゲームメイカーの役割はきっちりイメージできている。

引退を決めた中村直志は今週になって全体メニューに復帰を果たし、以降は元気な姿を見せている。
「痛みもないし、準備はできてきました。チームにとってもホーム最終戦。僕にとっては特別なゲームになるけど、それはあくまで僕個人のことなのでね。得点も決めたいけど、チームは勝たないといけないし、個人的なところは置いておく。いつも通りのスタンスで、自分の考えを貫きます」。
玉田とはまるで正反対。チーム一筋14年、我慢の男は最後まで仕事人の役割を全うするつもりだ。

一方で大宮が勝ちたい理由はひどく現実的だ。現在、降格圏内の16位であり、ここで勝点3を獲れなければ、他会場の結果次第で降格が決まる可能性もある。毎年のように奇跡的な残留劇を見せてきたチームだが、いよいよもって崖っぷちである。強力なタレントを多数揃えていながら勝てないのは、チームマネジメントの難しさ、勝負の難しさを感じさせる。必勝の態勢で臨んだ時に、思わぬ力が出ることも確かなのだが、その力をうまく利用できるチームなのかはピッチ上のプレーを見て判断したい。

そのピッチ上では、名古屋も少しの問題を抱えて挑むことになる。前節までフィールドプレーヤーでは全試合出場を続けていた左サイドバックの本多勇喜が出場停止。前節の矢野貴章に続き、またもレギュラーのサイドバックを欠いての戦いをホームチームは強いられる。しかもよりにもよってこの位置は、大宮のエース・家長昭博のオリジナルポジションである。他にもズラタンやムルジャ、あるいは元名古屋の橋本晃司らも流れてのプレーを得意とするなか、西野監督は対応策としてダニルソンに左サイドバックのポジションを任せる意向のようだ。1対1なら本多に勝るとも劣らないダニルソンの力をもって、相手の起点を消しに行く算段である。

ダニルソンに代わって中盤の底に配置されるのは指揮官の信頼も厚い矢田旭。ここ数試合でボランチでもプレー可能なことを証明したルーキーは、田口泰士とは違う形でのビルドアップのスキルを持つ。田口と矢田は玉田との相性も良く、永井謙佑を加えた4人で生んだ玉田のゴールは、今季の豊田スタジアムでの唯一の公式戦白星につながっている。この4人が揃う今節を何かの巡り会わせと考えるのはやや苦しいかもしれないが、勝利への良い傾向と見るのは自由だ。そうでなくとも名古屋で66ものゴールを積み上げてきた点取り屋の活躍を願う声は多い。ちなみに玉田は通算100ゴールまであと4点と迫っている。名古屋で達成するのを見たかった、と言うと「まだ狙えるかもよ?」と軽口が飛んだ。確かに不可能ではない数字だが、重要なのは数字ではなくセリフである。玉田の軽口は好調の証だ。「今でもサッカーは一番うまいよ」とは楢崎正剛の言。背番号11のプレーには、熱視線を送っておいて損はなさそうである。

名古屋にとってはどこか寂しさが漂うホーム最終戦だが、それだけに勝利の歓喜で最後を飾りたいところ。大宮に対しても、去りゆく仲間たちに対しても最大の敬意を払うべく、全身全霊を傾けたサッカーで立ち向かってほしい。

以上

2014.11.28 Reported by 今井雄一朗
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