J2リーグ3位でシードされて次の公式戦は12月7日のJ1昇格プレーオフ決勝の千葉に対して、11月30日にJ1昇格プレーオフ準決勝を戦う山形。山形は出場停止の當間建文に代わってイ ジュヨンが入った以外はJ2リーグ最終節と同じスタメンだった。一方、千葉は森本貴幸がJ2リーグ最終節での脳震盪の影響でメンバー入りできず、試合前日にケンペスが「違和感をちょっと感じたため帯同できなかった」(関塚隆監督)ことに加えて「連戦の遠征」(関塚監督)もあって、スタメンはJ2リーグ最終節から6人代わった。
試合は開始早々にスコアが動いた。2分、山形はFKのチャンスを得ると、ゴールまではやや距離があったからか石川竜也は単純にゴール前には入れず、左サイドに展開。キム ボムヨンのクロスにファーサイドで山田拓巳がヘディングで合わせ、千葉の大岩一貴の足に当たってこぼれたのを山崎雅人が押し込んで山形が先制した。ホームゲームのJ2リーグ最終節で東京Vに1−2で敗れた悔しさを払拭し、天皇杯決勝進出を決めてJ1昇格プレーオフ準決勝に挑む。その強い思いで臨んだ山形の気迫が連動性の高い攻守となって序盤は千葉を圧倒。6分に石川のCKから、13分にはキム ボムヨンのクロスからディエゴがヘディングシュートを放ち、14分に宮阪政樹が得意のブレ球の強烈なミドルシュートで千葉ゴールを脅かす。だが、千葉のGK高木駿の好守もあって追加点とはならなかった。
千葉は山形の勢いをもろに受ける形になり、序盤はパスがうまくつながらなかった。191センチの長身の戸島章と身体能力が高いオナイウ阿道の2トップで臨んだが、「ただディフェンスラインでボールを預けあっているような形になっていたし、そこからサイドに出ても裏に蹴るばかりだった。戸島と阿道がいたことによって蹴りやすくなったのかもしれないけど」と高木は振り返り、谷澤達也や中村太亮も相手のプレッシャーを受けても気持ちで負けずにしっかりパスをつなぐことの重要性を口にした。だが、パス回しがうまくできなくても、千葉もセットプレーのチャンスを得点につなげた。23分、中村のCKからファーサイドで竹内彬がヘディングシュートを決め、山形と同様にチームの最初の決定機をモノにした。今大会は全て1−0のスコアで勝ち上がった山形は今大会初の失点だった。
これで千葉の勢いが増したが、次の『1点』は山形だった。33分に石川のCKから今度はキム ボムヨンがニアサイドでヘディングシュートを決めて千葉を突き放す。だが、後半に入ってさらに攻勢に出た千葉は54分、山形の川西翔太のミスパスをカットしたオナイウ阿道のパスを受けた谷澤達也が、中に切り込んで相手をかわす得意な形でゴールを奪った。
セットプレーやサイド攻撃など得意な得点パターンからゴールを奪い合うのは、言い換えれば両チームとも守備でケアすべきところがおろそかになっているからだ。その点で言えば、千葉は相手のカウンター攻撃でドリブル突破を止められずに簡単にゴール前まで行かれてしまう悪癖がある。71分の山形の決勝点は山田が対面の中村が戻りきれなかったところで豪快なシュートを決め、サイドの攻防に目が行きがちだ。だが、川西が中央でドリブル突破をして山田にパスを出すのを止められなかったところに千葉の問題点があった。
クラブ史上初の天皇杯決勝進出を決めた山形は、この勢いのままJ1昇格プレーオフ準決勝も勝ちきりたいところ。だが、競り勝ちはしたが、千葉の決定機でGK山岸範宏はファインセーブで得点阻止を3回はしていたことから、守備の細部の修正は必要不可欠だ。
千葉は試合出場の機会が少ない選手が多かった中で二度同点に追いついた。だが、攻守両面でイージーミスが多く、町田也真人を入れて2トップから戸島の1トップに変えたあとは戸島にボールが入ったあとのサポートが遅くて少なかった。味方をサポートするポジショニングや攻守両面の距離感はJ1昇格プレーオフ決勝に向けて再確認したいところだ。
以上
2014.11.27 Reported by 赤沼圭子