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【J1:第32節 徳島 vs 鳥栖】レポート:上手くゲームを運ぶもJ1ホーム初勝利にはまた届かなかった徳島。鳥栖の高いモチベーションに屈した無念の結末(14.11.23)

J1ホーム初勝利のイメージが頭に浮かんでいだファン・サポーターも少なくなかったのではないか。残り10分を切ってもまだ失点はなく、スコアは0-0。加えて「相手(鳥栖)が少し焦ってきたところからが勝負だと思っていた」小林伸二監督により切り札のアドリアーノも投入されていたことから、実際に終盤時間帯のスタジアムには“どんな形でもここで一発が出れば”という期待感が高まってきていた。
だが、結果的にその後勝負を決める一発を見せたのは鳥栖。それによって徳島は、またしても目指した特別な白星を掴めなかった。

とは言え前述のような期待感が生まれるほど、徳島はこの一戦上手くゲームを進めていた。指揮官も「ずいぶん機能的になっているということを表現してくれたゲームだったと思います」と会見で振り返っていたが、チームは組織でも個でも鳥栖に対し非常にいい形で組み合っていたと言えよう。特に守備は前半から鳥栖の良さをしっかりと消すことが出来ていた。ボランチ斉藤大介の中央を締めるバランスよい位置取りが鳥栖の前線の頼みである豊田陽平への縦パスを全く許さなかったし、警戒していたサイドも藤原広太朗とアレックスが裏スペースを与えない低めのポジショニングで効果的に火消し。また藤原においては鳥栖の最高ストロングと言える安田理大、金民友を相手にしながら、非常に頭を使った間合いと対峙角度で彼らにほとんど有効な仕事をさせなかったと言っていい。

さらに徳島はその守りのいい流れを後半も継続。60分過ぎからやや疲労が見受けられるようにはなったが、それでも全員がハードワークを切らすことなく、狙っていた鳥栖の焦りをじわじわと確実に誘っていった。
しかしそのような状況へもって行きながら、惜しむらくは攻撃に決定的なパワーが足りず。コンディションの回復がわずかに間に合わなかった高崎寛之、衛藤裕に代わり先発したキム ジョンミンも廣瀬智靖も持ち味を出してプレーしていたものの、チーム全体で鳥栖ゴールへ強い圧力をかけるまでには至らなかったのが現実だ。事実、斉藤も「ラストパスやシュートの精度はまだまだ必要ですし、思い切ったプレーをしないと点を取るのは難しいと思います。リスクを冒してでも前に侵入して、少ないチャンスをどうすればシュートで終わることが出来るのかが作り切れていません」と攻めに関しては反省しきり。悔やみの表情で唇を噛んでいた。

すると迎えた83分、徳島は上手く対応してきた守備が一瞬のところでとうとう破られる。それまで縦への仕掛けをしてきた鳥栖の安田の思わぬカットインドリブルに藤原が対応し切れず振り切られると、濱田武の寄せもスピードでかわされ、その安田にそのまま強烈なミドルを叩き込まれてしまった…。そして残り時間での反撃も実らず徳島は敗戦。J1ホーム初勝利はまた叶わぬものとなり、当然過去の借りを返すことも出来ないままとなった。

これで残すホームゲームは最終節(12/6)のG大阪戦のみ。次節の結果によるが、もしそれがG大阪にとって優勝のかかる試合となれば徳島は実力差以上に厳しい戦いを強いられるはず。勝つことの非常に難しい一戦となるに違いないが、だからと言ってホームスタジアムに1つの歓喜ももたらすことなく今季を終えるわけにはいかないだろう。選手たちは次節・仙台戦(11/29@ユアスタ)を死に物狂いで戦って何としても結果を残し、勢いを纏ってシーズン最後のその決戦へ向かわなければ。

さて逆に勝点3をもぎ取った鳥栖について言えば、この勝利はまさに今のモチベーションを表現したもののように思われる。確かに引いて守る徳島を攻めあぐね、アタッキングサードでの工夫には課題も残したが、それでも最後に見事決着を付けたのはやはりリーグ優勝やACL出場権獲得の可能性を持っているからこそ。殊勲の一発を決めた安田も「自分が決めた得点ですが、仲間がスペースを空けてくれたおかげなので、みんなの得点だと思います」とゴールシーンを振り返っていたように、それらを目指す全員の気持ちがタフに勝ち切る力になったのは間違いない。
次節はいよいよ首位・浦和を迎えての今季ホーム最終戦(11/29@ベアスタ)。そのゲームでも夢の達成に向かって突き進む高いモチベーションを体現し成果を挙げられるか。今からもう大きな注目が集まる。

以上

2014.11.23 Reported by 松下英樹
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