ホームの札幌はJ1昇格プレーオフ進出、讃岐はJ2残留へ。どちらも目標達成に対してギリギリの可能性を残す立場とあって、絶対的に勝点3が欲しい状況で試合は始まった。讃岐はキックオフ時に6人以上の選手がハーフウェイライン上にポジションを取るなど、勝利に対する双方の意欲が強く感じられる一戦となった。
先手を取ったのは21位の讃岐。16分、左サイドに流れたアンドレアからのクロスに逆側から走り込んだ沼田圭悟が左足で合わせて先制点を奪う。「トレーニング通りしっかり左サイドを徹底して崩して点を取った」。この得点シーンも含め、オフェンス面での狙いについて讃岐の北野誠監督はこう口にした。
やはり無視できないのはシステムのミスマッチだろう。3−4−3の札幌と4−4−2の讃岐。札幌がボールを支配する展開になれば両ワイドが高い位置を取って前線で5人対4人の数的優位を作ることができるが、逆に讃岐が主導権を取る展開になれば両アウトサイドは2人対1人とアウェイチームが数的優位を得ることになる。
そして優位に立ったのは讃岐の方だった。前線のアンドレア、我那覇和樹にボールが収まり、セカンドボールも大半を拾う。球際の強さでも札幌を上回り、主導権を掌握。結果、サイドでの数的優位も作ってみせたのだ。実際に沼田の得点シーンではFWのアンドレアも左サイドに流れるなど人数をかけて札幌のセンターバックを外におびき出し、サイドを完璧に崩している。「自分は左サイドでのプレーがもともと得意だし、ここから攻めていくプランで試合に入った」とはアンドレア。讃岐はサイド攻撃を得意とするチームであり、そのチームがさらに相手を研究して人数をかけた攻撃を仕掛けたとあっては、シーズン途中から3−4−3を取り入れ、このシステムにまだまだ未成熟な部分が多い札幌にとってはどうしても苦しい展開になるだろう。
後半に入り、エースの内村圭宏を投入した札幌がこの選手のテクニックからサイドを突破し、グラウンダーの折り返しを都倉賢が蹴り込んで札幌が同点に追いつくなど、ホームチームがアグレッシブさを取り戻して勢いづくも、やはり要所は讃岐が抑える。札幌がボール保持をして攻め込む時間が多くなっていたが、讃岐は4−4−2から4−2−3−1に変更して中盤でのパスコースを増やすと同時に札幌の守備的MFを封じるなど、北野監督の巧みなベンチワークも加わって流れを崩さない。そしてそのままタイムアップとなった。
「相手のどの選手の背後にスペースが出来やすいかなど、事前のスカウティング通りだった。それを生かしていいカウンターを仕掛けることができていた」と讃岐のある選手が話していたように、試合を総括していくと、順位こそ残留争いをしている渦中の讃岐だが、こうした研究などの部分では札幌を上回って敵地での勝点1獲得だった。前半終了間際にセットプレーからエブソンが完全にフリーな状態になってヘディングシュートを放ったり、後半にはショートコーナーから巧みにパスをつないでチャンスを生み出すなど、リスタートなど細部の追及に関しては讃岐がホームチームを大きく上回っていたことは間違いない。札幌のほうはヘディングの強い選手、良いキッカーがいるにも関わらず、リスタートではあまり怖さを見せることができていなかった。
ただし、試合のシチュエーションとプレースタイルが讃岐の追い風になっていたという部分も見失ってはならないだろう。札幌は個の力を生かしてボールを積極的に前へと運び、DFラインからの攻撃参加も多いチーム。それに対して讃岐は固い守備ブロックを敷きながらカウンターから好機をうかがうチーム。冒頭で記したように、どちらも絶対的に勝点3が欲しい場面であることを考えると、ホームの札幌は積極的に前に出ていくシチュエーションとなるため、カウンタースタイルの讃岐が比較的組し易い展開にどうしてもなりがちである。この部分は踏まえておく必要があるはずだ。
さて、この試合の結果と、他会場の結果によっては札幌のJ1昇格プレーオフ出場が消滅、もしくは讃岐の入れ替え戦出場が決定する可能性もある一戦だったが、当該チームが勝点3を積めなかったこともあってどちらも踏みとどまった。リーグ戦は残り2試合だが、両チームのここからの巻き返しに期待したいところである。
次節、札幌は敵地で福岡と、讃岐はホームで大分と対戦する。
以上
2014.11.10 Reported by 斉藤宏則