2014年11月1日、第39節・ホーム京都戦。このゲームのキックオフ前、サポーターによるコレオグラフィーが、岡山で初めて実施された。雨の中、バックスタンドのホーム側全体を使って、彼らが描き出した文字は「12 INSIEME」。「INSIEME」とは、イタリア語で「一緒に」を意味する。岡山が地域リーグを戦っていた時から、サポーターのコールリーダーである岡本透さんはこの言葉をよく使ってきたと聞く。そして、より岡山らしい表現の「ココロヒトツニ」という言葉は、横断幕にも描かれている。
サポーターが見守り、後押しする2014シーズンの岡山は、そんな「ココロヒトツニ」を感じさせるシーンが多い。4月20日の第8節・北九州戦から始めた、先発、控え選手、監督、コーチ、ドクターらスタッフ全員による、サイドラインを挟んでの円陣もそのひとつだ。また、石原崇兆選手がチームの団結を感じるのは、「試合の翌日にスタメンのグループで、昨日はこうだったね、と話す時」だと言う。「タダシ君(竹田)とか、コータ君(上田)も多いかな。あとはリョウ君(田所)とかが、『ちょっといい?』って感じで話をして、そういうことがすごく次に繋がってきてるなと思います。みんなフレンドリーだし、真面目で、それでいい方向に向いて来たと思います」。
また、10月26日の第38節・アウェイ大分戦では、ウォーミングアップ前にフィールドプレーヤーが集まって話をするシーンがあった。そこで中心となって話をしていたのは、竹田選手だった。「大阪キャンプ(10月第2週に行われた)に向かっている時、荒さん(荒田智之)とコータと千明(聖典)なんかと、『残り頑張ろうぜ、みたいなことを、どこかで言おう』と話してたんです。それで残り5試合になった大分戦で、僕がキャプテンマークを任されて、今がそのタイミングかなって思ってたら、ロッカーが隣だったコータからも『タダシ、今日だね』って言われて。でも意外と時間ないんですよ。準備してるし、監督から向こうのフォーメーションを聞いたりしてるので。それで、アップの時につたない言葉で言ったんです。僕は今年、ケガでまだ11試合くらいしか出てないけど、みんなが積み上げてきてくれた勝点があって、今ここにいられる。ここでギリギリの戦いができるっていうのは、選手として本当に幸せだと思うし、今リハビリでいない選手から、俺はバトンを受け取ったつもりで頑張りたいと思ってる。ここにチャンスがあるから、何としても掴みに行こう、ここにいる18人で、仲間を信じて頑張って行こう、って言いました」。
岡山は9月中旬以降、8試合勝利から遠ざかっていた。しかしその間の練習場には、18戦無敗で走っていた時期にはなかった、笑い声も多く聞こえていた。同時進行で行われるミニゲームで、「影さん(影山雅永監督)、こっちの戦況見てへんもん」と監督にツッコミを入れる田所選手がいたり、その監督はというと、関戸健二選手を「健ちゃん」と呼んでみたり。物事がうまく運んでいた時期には必要がなかった「何か」を、常に誰かが持ち込んでいるようだった。「(椎名)一馬は練習の始まりや合間に、みんながなかなか反応できなくても声を出したり、本当に重要な役割をしてると思う。それは小さいけど、本当に難しいことで、そういうことで助かっている状況かなと思います」と竹田選手は話していた。
リーグ戦は残り2戦となった。岡山の2014シーズンが、どのように終わるのか想像はできない。それでも、「ココロヒトツニ」の精神がチームにもっとも感じられるのは2009年以降で、今年が一番だ。
以上
2014.11.11 Reported by 尾原千明