雨が降る時間が長かったナイトゲームにもかかわらず、千葉の今季のホームゲーム最多となる14,575人の観客が集まった大一番。千葉と磐田は互いの持ち味を発揮し、球際が激しい死闘を繰り広げ、見応えのある白熱の好ゲームとなった。だが、互いに悔いの残る引き分けとなったのは、それぞれが抱える問題点が露呈してのミスによる失点があったせいだ。
千葉は出場停止の佐藤健太郎に代わって兵働昭弘がボランチのスタメン。兵働は佐藤健よりも攻撃力は上回るものの守備力は下がる。その影響とは断言できないが、千葉は関塚隆監督や選手が語ったように磐田の小林裕希のゲームメークを封じられなかった。それでも粘り強さを発揮した守備で、前半は磐田にセットプレーでしか決定機を作らせない。だが、20分の磐田の小林のCKに合わせた藤田義明のヘディングシュートはGK高木駿の正面で事なきを得たが、32分は「同じような場所にボールを入れられて、そこからセカンドボールで決められた」(千葉・高木駿)形で磐田の伊野波雅彦に先制点を奪われてしまった。
その一方で千葉の攻撃はというと、前節は警戒されて機能しきれなかった左サイドから谷澤達也、中村太亮が連係して仕掛ける場面も多かった。12分にはボールを持ち上がったキム ヒョヌン、山口慶とパスをつなぎ、佐藤勇人のスルーパスから森本貴幸がシュートを放つもゴールポストの横。細かくパスをつなぐことはできるもののシュートにまで持ち込む迫力に欠け、前半の千葉の決定機は前述の森本の1回だけだった。
後半開始から攻撃の圧力を強めた千葉は、開始早々に佐藤勇が決定的なシュート。磐田のGK八田直樹がセーブしたこぼれ球から再び佐藤勇がシュートを打つが、これも八田に防がれた。だが、ピッチの状況、スタジアムの雰囲気は千葉の押せ押せムードにヒートアップ。52分の小林のシュートが外れて磐田が追加点を奪えないでいると55分、千葉に同点ゴールが生まれる。町田也真人のパスを受けた森本がドリブルで仕掛けると、ボールウォッチャーになりがちな磐田守備陣の意識が森本に集中。フリーで森本からパスを受けた幸野志有人は磐田の守備陣が寄せても冷静にシュートを決め、千葉移籍後初得点となった。
同点ゴールの2分後、関塚監督は第37節などでもやったように、ボランチの佐藤勇に代えて入れた大岩一貴を右サイドバックに、右サイドバックだった山口慶をボランチの位置に上げた。中盤の守備の強化と大岩の攻撃力を狙ってのものだった。その交代の4分後、中村のミドルシュートを八田がセーブした後のこぼれ球に詰めた谷澤のシュートはゴールポストに弾かれて外れたが、そのこぼれ球を大岩が押し込んで千葉が逆転した。
だが、雨でスリッピーなピッチ状況下での山口慶の「安易にバックパスを選択した」(関塚監督)プレーが失点を招く。交代出場の磐田の山崎亮平がキム ヒョヌンの動きに合わないバックパスを見逃さずに奪うと、キム ヒョヌンと大岩が意思の疎通をうまくはかれずに連係ミス。千葉は山崎の動きを抑えられず、最初のシュートをセーブした高木はこぼれ球の行方を見失い、73分に山崎が同点ゴールを奪った。関塚監督は75分に町田に代えてケンペス、80分に幸野に代えてジャイールを入れたが、入った2人は局面で個の強さを発揮するタイプだが、気を利かせた連係で攻撃の形を作る選手が減ったこともあって、その後は得点機を作れずに試合終了。2試合連続で追いついて引き分けた磐田は、今節の松本の勝利でJ1自動昇格の可能性は消滅も北九州の引き分けによって3位の座は守った。
失点シーンでは『甘さ』が露呈した千葉。攻守ともに積極果敢な前向きな姿勢なくしてはやはり勝つことはできない。「攻撃も守備もやりきることがもっと必要」(佐藤勇)と痛感させられた一戦を必ず糧にして、リーグ戦の残り3試合を勝ちきらなければいけない。
以上
2014.11.02 Reported by 赤沼圭子