湘南と群馬の前回対戦は7月、前半戦の締め括りとなる第21節だった。試合開始間もなくウェリントンのゴールによって幸先よく先制した湘南は、その後も球際や出足で上回り、攻守に主導権を握った。後半に入ってもシュートを重ねたが、しかし追加点は遠く、一方の群馬もダニエル ロビーニョや宮崎泰右、小林竜樹ら攻撃陣がチャンスを演出して反撃に出た。対して湘南もDF陣を中心に踏ん張り、1−0で勝点3を掴んだのだった。
この勝利を受け、湘南は20勝1敗、勝点60という記録的な結果を残して前半戦を終えた。以降も引き分けこそあったものの立ち止まることなく勝点を積み上げ、第33節京都戦で2位以内確定、第36節東京V戦でJ2優勝を果たした。だが前々節の長崎戦、前節の札幌戦と、第15節愛媛戦以来の黒星をこの2試合は重ねている。
前節の札幌戦は鮮やかなゴールで前半のうちに2点のビハインドを背負い、後半は引いた相手を崩し切れずに0−2で敗れた。前半の立ち上がりと終わり間際という失点の時間帯や後手を踏んだ球際、そして「あとひとつというところで細かいズレが多かった」たとえば梶川諒太が自戒を込めてそう指摘したように、相手の懐に攻め入りながらも詰めの部分で精度を欠いた。
記録的な快進撃でシーズンを折り返して以降、湘南のよさを消すべく自陣のスペースを埋め、ボールを失えばなにより素早く帰陣するといった守備を徹底する相手との戦いが多いなかで、本来のらしさが発揮しづらくなるのは必然の流れだろう。強さの裏返しとも言うべきそうしたタイトな状況下、「一瞬しか開かない、そこで何人の選手が合わせられるか」と岩尾憲が語ったように、シビアに機を捉え相手を攻略するイメージの共有が求められる。生みの苦しみのなかで与えられた課題はすなわち、チームの懐をさらに深くするための前向きなプロセスに違いない。
一方、敵地に臨む群馬は、札幌や岡山から白星を挙げるなど上位陣を苦しめる戦いを見せていたが、前々節は福岡と引き分け、前節はJ1昇格プレーオフ圏内で調子を上げる千葉をホームに迎え、終盤までリードしながらも土壇場で逆転を許した。リズムを引き寄せながら結果を掴み損ねた展開に悔しさが浮かぶ。3試合ぶりの勝利を求めて仕切り直しとなる今節、小林や宮崎、永田亮太やクォン ハンジンら、かつて湘南でプレーした選手も多く、BMWスタジアムでの対戦に想いを高めている向きもあろう。前回の対戦時には怪我で離脱していた平繁龍一も着々と得点を挙げている。なお今節はボランチの加藤弘堅が出場停止となる。
対して、4試合ぶりの勝利を求めて群馬戦に臨む湘南は今週、つかの間のオフを経て、あらためてメリハリの利いた集中力の高いトレーニングを重ねた。前節、途中出場で攻撃を活性化させた樋口寛規のこんな言葉が印象深い。
「スペースが狭くて難しかったけれど、何度かいい形はつくりかけた。なんとしてもこじ開ける力が必要。優勝したからには、そういうなかでも負けない力を見せなあかんと思う」。
チームとしてやってきたことを継続して出せるように、そして自らはゴールに対して貪欲にチャレンジしたいと樋口は語る。彼らの想いはきっとピッチに映されるに違いない。
以上
2014.10.31 Reported by 隈元大吾