本文へ移動

J’s GOALニュース

一覧へ

【J1:第30節 鹿島 vs 浦和】レポート:勝利が必要だった鹿島には痛いドロー。少しの勇気が足りず勝利に届かず。(14.10.27)

毎度のことながら意地と意地がぶつかり合うこのカードは、試合前から異様な熱気がスタジアムを包み込む。選手紹介が始まるとそのボルテージは最高潮に達した。一方がゴール裏を覆い尽くす巨大なフラグが何枚も掲げると、もう一方は一糸乱れぬ野太い声で応じる。ところが、素晴らしい雰囲気の中で始まった試合は、意外なほど静かな展開を見せる。「鹿島は今日は前からアグレッシブに来ると予想していました。なぜなら鹿島は今日の試合で勝利することによって優勝の可能性を残すと思っていたからです。ただ、試合が始まって蓋を開けてみれば守備的な戦い方から入って来ました。そこは予想外でした。守備的な戦いをしてくる相手に対して落ち着いて試合をオーガナイズできたと思います」
試合後、ペトロヴィッチ監督が素直な感想を口にした。サポーターが醸し出す熱気に左右されることなく、勝点差7という状況をうまく利用して落ち着いて試合を進める。序盤のPKこそマルシオリシャルデスが外してしまったものの、前半途中まで試合のペースは浦和が握った。

残り試合を考えると、引き分けでも十分な浦和に対し、鹿島には勝利が必要だった。そのことが重圧となってしまったのかもしれない。
「選手たちにも試合前に伝えたのですが、レッズさんは勝点差を考えればリスクを負う必要はない。彼らは引き分ければ万々歳。しかし、僕らは勝たなければならない。リスクを負わなければならない。リスクを負うということは勇気と根性を持たないといけない」
トニーニョセレーゾ監督も相手の有利な立場から、戦い方を予想し、選手たちに注意を促していたのだが、少しの勇気が足りなかった。小笠原満男が両手を広げて必死にラインを押し上げることを指示するも、最終ラインがなかなか高さを保てない。相手に得点を許さない戦いはできていたが、得点をあげるための戦いもまたできなかった。

それでも20分過ぎからペースを奪い、39分にはカイオがペナルティエリアの左角からゆるい放物線を描くシュートをファーサイドへ蹴り込み値千金の先制点をあげる。いつもの練習ではファーサイドに走り込む選手に合わせるのだが、入ってくる選手はおらず、加えて「GKが少し前に出てるのが見えた」ことでシュートを選択。緊張感のある試合に相応しいビューティフルゴールだった。
後半になると少しずつスペースが生まれだし、鹿島が速攻からチャンスを迎えるもシュートまで至らない。すると63分に、攻め上がった阿部勇樹のシュートを曽ヶ端準が弾いたところに李忠成がつめ、浦和が同点に追いつく。阿部がシュートを打った瞬間にはすでに動き出していた李の嗅覚を示す得点だった。

勝利が必要な鹿島だったが必死にボールに食らい付き、戦う姿勢は見せたものの奪ったあとの攻撃に勢いが出ない。攻撃を司る柴崎岳や小笠原満男の息切れも目立つようになり、前半、守備に追われた時間帯が長かったツケを払わされてしまった。試合終了のホイッスルが吹かれると、スタジアムはしばらくの間、静寂に包まれた。

勝点差を詰めることができなかったことは鹿島にとっては痛恨。07年の時は勝点差8からの逆転劇だったため、それより条件は緩いとは言え厳しい状況に追い込まれたことに変わりはない。とはいえ、何かを諦める必要もなく、目の前の試合を勝っていくことには何も変わりはない。例え優勝を逃すことになったとしても、ACL出場権を得ることは若いチームにとって大きな飛躍をもたらすはずだ。
引き分けた浦和は勝点1しかあげられなかったことでG大阪に3差まで詰め寄られた。しかし、ライバルに勝点1しか与えなかったことは大きい。選手を4人も入れ替えながら引き分けでも十分という戦いができたことは、鳥栖やG大阪との直接対決でも生きる。試合途中に負傷交代した興梠慎三の具合が心配されるが、「優勝にまた一歩近づくことができた」(ペトロヴィッチ監督)ことは間違いないだろう。

以上

2014.10.27 Reported by 田中滋
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

J.LEAGUE TITLE PARTNER

J.LEAGUE OFFICIAL BROADCASTING PARTNER

J.LEAGUE TOP PARTNERS

J.LEAGUE SUPPORTING COMPANIES

TOP