目指したJ1残留は叶わぬものになってしまった。前節・C大阪戦に敗れたことで徳島はJ1最下位が決定。一度も最下位の位置から抜け出せないままその結果に至ったことも併せて考えれば、国内最高峰の壁は徳島にとってとてつもなく高かったと言う他ない。
しかし、今季はまだ終わっていないし、何よりチームには残りのシーズンで必ずやり遂げなければならないことがある。支え続けてくれたファン・サポーターに捧げる今季ホーム初勝利──。受けた精神的ダメージは言うまでもなく大きいだろうが、選手たちはショックや悲しみをこらえ、その達成のために顔を上げて力を振り絞らなくては。
ただ、あと3度だけとなったチャンス(残す今季のホームゲームは3戦)の最初として挑む今節も、厳しい戦いを強いられることは必至だ。迎える名古屋とはリーグ前回対戦で引き分けてこそいるものの、ゲームの中身を振り返るとそこには認めざるを得ない地力差があった。
名古屋は世代交代も含め現在チームの変革期にある。そのため今季の彼らには小さくない調子の波が出ていると言えよう。しかし、前回対戦後に小林伸二監督も「個の能力が高いので(ボールを)取った後に取られる」と語っていたが、名古屋の選手たちひとりひとりの能力が非常に高いことは疑いのない事実。レアンドロ ドミンゲスを現在怪我で欠き、今節は永井謙佑も出場停止で不在だが、それでも田中マルクス闘莉王、川又堅碁をはじめ居並ぶ面子の力は相当優れている。実際、前節・仙台戦でも名古屋は個の強みを大いに披露。決定力が足りずスコアレスドローに終わったとは言え、西野朗監督が「勝たなければいけないゲームだった」と口にするほど内容的には仙台を制圧していたと言っていい。
そのような名古屋と向かい合うことから、今節の徳島については組織的な強さを出して戦えるかが非常に大きなポイントとなろう。名古屋の個に対し、常にグループでしっかり対抗していけるかというところだ。そしてそれを実践するためには、的確な選手間距離の維持が欠かせない。攻撃では素早いサポートを作り出し、守備においては厚いカバーを生み出せる周囲との距離を全員が集中して90分キープし続ける必要がある。もちろん守りに関しては相手の動きがある以上それをケアすることでその距離を保つのが難しい場面もあるに違いないが、常にチームとしてそれへの意識を持っておけばそうなった時への対処もし易く、きっと危険なシーンの発生を最小限に抑えられるであろう。
それだけに、最終ライン中央を務める福元洋平の出来には注目だ。目まぐるしく変わる戦況の中でも彼が冷静に全体を把握し、はっきりしたコーチングによって選手間距離をバランスよくコントロール出来たなら徳島は勝利への可能性を広げていけるのではないか。
最下位が決まったことに対して津田知宏が「本当に残念だし、応援していただいている皆さんには申し訳なく思います。だからこそ僕たち選手がすべきことは残り5試合を全力で戦うことですし、(J1)ホーム初勝利を目指して今節のゲームに勝ちにいくことだと思います」という言葉を述べたが、それはそのまま今のチーム全員の想いでもあるはず。ならば選手たちには、その気持ちを燃やした死に物狂いのプレーをこの一戦で必ず見せ、是が非でも歓喜の瞬間を掴み取ってもらいたい。支え続けてくれるファン・サポーターのために。またこのJ1での経験を糧に改めての成長を目指すことになる自分自身のためにも。
以上
2014.10.24 Reported by 松下英樹