2年ぶりにベスト8へ進出したチーム同士の対決となったJ1のC大阪とJ2の千葉との一戦は、千葉がCKから田代真一が押し込んだゴールにより、1−0で勝利。今大会では3回戦の柏戦に続くJ1勢からの勝利を果たしただけでなく、2002年度の第82回大会以来、クラブとして2度目のベスト4入りを成し遂げた。一方のC大阪は、中9日という十分な調整期間があり、普段ホームとして使用しているキンチョウスタジアムでの開催で、多くのサポーターの後押しがあったにもかかわらず、C大阪はそのアドバンテージも活かせなかった。
韓国代表戦を昨日終えたばかりのキム ジンヒョンも、帰阪後すぐにメンバー入り。そして、フォルランとカカウが8月30日のJ1第22節神戸戦以来となる2トップを組んで先発。U-19日本代表の南野拓実が不在、主将の山口蛍と吉野峻光は負傷欠場を強いられているが、公式戦初先発の秋山大地といったフレッシュな顔も登場しつつ、主軸は出そろったなかでの試合だった。それにもかかわらず、夜の秋風の冷たさが身にしみるような、J1残留争いで苦戦を強いられている今季を象徴する、低調なサッカーに終始した。
C大阪のシュートは5本のみ。ボールを持ったときには扇原貴宏のフィード頼みで単調な攻撃は否めず。前線のフォルランとカカウとの連動性も欠く。逆に、その2トップは前でボールを競り合えず、相手DFの脅威にはなれない。攻撃サッカーが売りのチームのはずが、特に前半は自らの仕掛けでチャンスを作ることがほとんどできない。「走る」、「戦う」という大熊裕司監督のもとで取り組むサッカーを出し切れなかった。
チーム最初のシュートは、自陣FKで、相手GKの頭越しを直接狙った、GKキム ジンヒョンのキック。22分にフォルランにやってきたと思われた好機はオフサイド。前半唯一の決定機で、長谷川アーリアジャスール、カカウ、フォルランとつないで、ペナルティーエリア内で秋山が放った右足ボレーシュートは、千葉DF田代の好カバーに阻まれた。「最後のフィニッシュの部分とか、思い切っていく部分だとか、大事にする部分だとか、(チームとして)チャンスで決めきれないと、(セットプレーでの失点という)事故というのは起きるもの」(平野甲斐)。それが、54分の、「あの1本だけのチャンスでやられた」(秋山)、与えてはいけない先制失点につながった。
その後、杉本健勇、平野、永井龍と、攻撃的な選手を立て続けに投入し、ガムシャラにゴールを狙ったC大阪。ただ、74分、杉本の折り返しからエリア内で丸橋祐介が右足で放ったシュートはGK高木駿に阻まれた。88分、粘り強く上げた杉本のクロスに、ファーサイドから飛び込んで合わせた平野のヘッドも、枠を捉えられなかった。終盤こそ怒濤の攻めを繰り出すも、千葉の組織的な守備の前に、最後まで得点は記録できず。「あれだけブーイングされるのは致し方のないこと」とカカウも述べるように、終了後は、C大阪イレブン、チームに向けられた大ブーイングや大阪弁での厳しい野次がスタジアムに飛び交った。今季も悲願の初タイトル獲得は消滅。もはや、J1残留という最低限の目標にしぼられたC大阪。「そこだけに集中して、しっかり残留できるよう、チームで1つになってやっていきたい」と永井も述べるように、桜色の戦士たちは、もうなりふり構わず、前を向いて突き進むしかないところまで追い込まれている。
一方の千葉は、今季公式戦初先発となったFW戸島章をはじめ、11日のJ2第36節札幌戦(@札幌厚別公園競技場)から、スターティングメンバーを6人変更。それでも、福岡、札幌と、J2プレーオフ圏内を争うライバル対決に2連勝した勢いは持続。ケンペス、戸島の高さを活かしながら、サイド攻撃でもチャンスを作り、守備でもボランチの佐藤勇人、兵働昭弘という経験豊富な選手たちを中心に、「非常に技術の高いセレッソの個を、だいぶ守備のなかで制限できていた」(関塚隆監督)。これで公式戦3試合連続無失点勝利。ただ、殊勲の田代が、「このいい流れをJ2リーグ戦につなげていかないといけない」と言うように、すぐにやってくる大一番、J2第37節大分戦から、千葉としても、09年以来のJ1復帰へ、そして、クラブ初の天皇杯制覇へ、勝負のときが続く。
以上
2014.10.16 Reported by 前田敏勝