千葉は10月11日のJ2第36節・札幌戦を2−0で勝ち、これで第34節・東京V戦から3試合連続無失点となった。その東京V戦からゴールマウスを守っているGKが、今季、川崎Fから期限付き移籍で加入した高木駿選手だ。高木選手はジュニアからユースまで東京Vのアカデミー育ちで、明治大学を経て2012年に川崎Fに加入したが、昨季まで公式戦出場がなかった。「川崎Fでは3番手、4番手の立場で、練習試合にも出られないこともあった」(高木選手)ことから、試合出場とレベルアップを求めての期限付き移籍だった。
今季は2月16日のちばぎんカップ<千葉1−1(PK4−5)柏>にスタメンで出場したが、岡本昌弘選手が守る正GKの座を奪うまでには至らず、J2リーグ戦はベンチ入りするものの出場なしの日々が続いた。だが、水曜日開催のためJ2リーグ戦と連戦だった8月20日の天皇杯3回戦・柏戦<千葉1−1(PK12−11)柏>でスタメンでの公式戦デビューを果たすと、やはり連戦だった9月10日の天皇杯ラウンド16・長崎戦<千葉2−1長崎(延長)>でもスタメン出場で準々決勝進出に貢献。そして、J2第33節・愛媛戦で岡本選手が負傷したため第34節からスタメンで連続出場し、持ち味であるディフェンスライン裏のスペースの的確なカバーや相手の決定機での好セーブを見せている。
Jリーグデビュー戦の相手が東京Vだったのは不思議な巡り合わせで、試合後は「今日はJリーグデビュー戦というよりも相手が東京Vということが特別なことだったかなと思います。東京Vの冨樫剛一監督はよく知っている方なので、どういうサッカーをしてくるかなと考えて楽しみにしていました」と話した。結果はスコアレスドローで、相手が東京Vだからといって気負うことなく落ち着いてプレーしていたのが印象的だったが、「天皇杯2試合で公式戦を経験していたから」(高木選手)というのが大きかったようだ。
10月9日に2試合連続無失点について聞くと、高木駿選手はこう答えた。
「言ってみれば、もう全部無失点のほうがもちろんいいわけなので、その目標がその2試合では達成できたまでのことだと思います。だから、そんなに驚いていないというか、もちろん喜んでもいいんでしょうけど、それをスタンダードにしていかないといけないので。僕自身は正直、そんなに決定的なシュートが飛んできていないと思うけど、それはやっぱりチーム全体で守れているということだと思うので、この状態を保っていきたいです」
それにしても、無失点では終われなかったものの、両チームが13人ずつ蹴るという天皇杯史上初の壮絶なPK戦を制した高木選手の活躍は見事だった。PK戦でキッカーが2巡目までいったことや自分もキッカーになったことについて聞くと、次のように答えた。
「ユース時代にキッカーが1回りしたことがあったような、ないようなという気がします。自分はPKを蹴るのがけっこう好きで、大学時代は5番目以内に蹴っていたので、いつ自分の番が来てもいいよという感じでした。それを自分からは言わなかったので、結局1巡目の最後になりましたけど。昔はPKを止めるのは簡単だと思っていたけど、プロになるともうキッカーの落ち着きが全く違うので、止められるチャンスも限られてくるから『PKは入って当たり前』と思っています。GKとしてはもちろん止めないといけないんですけど。あの試合はうちの選手も柏の選手も蹴る技術がすごく高かったし、GKよりもキッカーにプレッシャーがかかるようなあの状況でも落ち着いて蹴っていたので、キッカーがすごいなと思いました。柏の選手が緊張してくれればいいのになと思っていたんですけど、うちの選手がよく決め続けてくれました」
高木選手は2巡目で柏の13人目のキッカーだったレアンドロ選手のPKをセーブ。1巡目ではレアンドロ選手が蹴るよりも先に動いてしまい、動いた方向とは逆のコースに決められてしまったが、2巡目では先に動かずに我慢したように見えた。
「僕はあれだけ最初に動いちゃったし、相手はそうやって早めにフェイクをかけてくる蹴り方だったので、2巡目ではもう蹴るまで止まっておこうと思いました。そうしたら、レアンドロ選手がけっこう甘いコースに蹴ってきたので、僕が動かなかったから迷ってあまりいいコースに蹴らなかったのかなと思います。そこは駆け引きといえば駆け引きになるんでしょうけど、結果的に動かなくてよかったなと思うところです」
経験して得たことをすぐに生かし、ベストなプレーを模索する高木選手。岡本選手の負傷が回復してコンディションが戻った時、ゴールマウスを守るのは果たしてどちらか。切磋琢磨する千葉のGK陣の成長が楽しみだ。
以上
2014.10.14 Reported by 赤沼圭子