10月に入りリーグは佳境を迎える。1試合の結果で目まぐるしく変る『混戦J2』は残り8試合。大分銀行ドームでは勝点51で6位の大分が、同59で3位の磐田を迎える上位対決だ。湘南の昇格が決まり、自動昇格の残り枠はひとつ。現在2位の松本は勝点64。磐田は射程圏内であり、大分は少し厳しいがプレーオフのアドバンテージを得るためには少しでも順位を上げたい。勝利を渇望する両チームのせめぎ合いを楽しめそうだ。
大分は直近2試合で得た勝点は2。この結果に対し「取りこぼした」と判断すべきか、「負けなかったことを良し」とするのかで評価は異なるが、監督、選手は総じて「よく踏ん張った」と捉えている。確かに前節の長崎戦(△1−1)は相手のシュート数14に対し、4本のシュートで引き分けたのだからよく勝点1を拾ったと言える。ただ、今後は昇格が絡む固い試合が続く。「内容より結果が全て」(高木和道)の試合となるのは言うまでもない。
今週は「細部へのこだわり」を強調し、練習に取り組んだ。細部とは「攻守の切り替えを早くする」「球際で負けない」「考えて走る」といった戦術以前に欠かせないもののこと。積み上げたスタイルを大事にしながらも、試合をコントロールする、勝負どころを見極めて考えてプレーする。こうした細部へのこだわりを一つひとつ追求した。
対戦する磐田はJ1でも上位に位置する戦力を誇る。個の能力が高いことも周知の事実。だが、「サッカーは個人で試合をするわけではない。僕らは組織で戦えばいいし、90分間で結果を出せばいいと思っている」と末吉隼也が語れば、高木も「これぐらいでいいやではなく、チームのためにどれだけプレーできるか」と言い、次の試合を見据えた。紅白戦ではここ数ヶ月で一番緊張感のある雰囲気を感じたし、選手からは磐田からはじまる上位陣との連戦に向け、覚悟を見て取れた。勝点3への執念と結束力で磐田に挑む。
一方、名波浩監督の初陣を勝利し、本来の輝きを取り戻しつつある磐田は、一気に自動昇格まで上り詰める勢いを感じる。名波監督は就任してわずか2日で「攻守の切り替え。セカンドボールの予測。コミュニケーション。シュートの意識」を植え付けたという。結果、エース前田遼一が先制点を奪い、松井大輔のスルーパスを受けた松浦拓弥が追加点を奪った。守備陣の奮闘も光り、相手のシュートをわずか2本に封じて14試合ぶりの完封。2位との勝点差を5に縮めたのだから、ミラクル逆転劇を期待したくなるのも当然だ。
今節はトップ下でプレーした小林祐希が警告累積で出場停止となるが、「(スタメンの)組み合わせに関しては、昨年からこういうふうに組み合わせたら面白いかなということを考えていた」と語る名波監督。チームを熟知する指揮官は、指導歴こそないが解説者として現場と異なる視点でサッカー観を研ぎ澄ませてきた。あらゆるシミュレーションを想定して、ベストの11人をピッチに送り込むはずだ。
大分の田坂和昭監督とは年齢も近く、現役時代は対戦相手として戦い、日本代表では日の丸を背負って戦った。今節は互いにチームを率いる監督として勝負する。育成から指導の段階を踏んだ田坂監督と現場の外からサッカーに携わった名波監督。互いに共通するのは理論派であり、負けず嫌いであること。40代前半の青年監督がいかなる采配とサッカー哲学を反映し、試合の挑むのかも興味深い。両監督の現役時代を知る者にとっては楽しみな一戦となりそうだ。
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2014.10.03 Reported by 柚野真也