“三羽ガラス対決”ということで監督対決に注目が集まる試合だが、清水としてはそれを楽しみにするというより、尻に火がついてきた中でホームで何とか勝点1つでも取らなければいけない背水の陣となる。
まず監督対決という部分に関しては、清水の大榎克己監督とG大阪の長谷川健太監督は、子どもの頃から清水FCで一緒にプレーしてきた竹馬の友で、清水東高の2年時には全国高校選手権で全国優勝し、堀池巧氏とともに“清水三羽ガラス”と称されて注目を集めた。その3人が揃って日本代表になったのも驚くべきことだが、清水エスパルスが創設された際には3人とも地元に戻り、力を合わせて清水のためにプレーしてきた。そのため2人は選手としてプロの舞台で対決したことはないが、今度は監督としてJ1の舞台で初対戦。当然、注目が集まらないはずはなく、前売り券も好調な売れ行きを見せている。
大榎監督も、「そこは意識しないかと言ったらウソになるし、前半戦では0-4でやられている相手なので、借りを返さなければいけない試合だという気持ちは強い」と語る(当時の清水はアフシン・ゴトビ監督)。長谷川監督は、2005年から2010年まで6年にわたって清水の監督を務めていたので、本田拓也、平岡康裕、大前元紀など主力の中にも新人時代から長谷川監督の指導を受けた選手がいて、さまざまな想いが詰まった対決になる。
ただ、大前が「自分も健太さん(長谷川監督)に3年間お世話になったけど、今は克己さん(大榎監督)を勝たせたい、良い思いをさせたいという気持ちが強い」と語るように、選手には自分たちが大榎監督を支えたいという想いが非常に強い。就任後は上位との対決が多く、1勝1分5敗と結果は出せていないが、チームが苦しい中で火中の栗を拾った大榎監督を「男にしたい」という気持ちで清水の選手たちはひとつになれている。その想いがどんな形でピッチに表われるのかという部分が、この試合の大きな見どころになるのは間違いない。
ただし、そのためには清水には守備の修正が欠かせない。リーグ戦ではここ5試合で15失点(1試合平均3失点)。センターバックにケガ人が多く、試合ごとにDFラインが変わる苦しい戦いが続いている。前節の神戸戦も、三浦弦太とブエノという10代の2人を起用して3バックで臨み、その前にボランチも2人配置したが、厚いはずの中央を崩されて3失点。試合前に大榎監督は、「あと一歩ボールに寄せるところとか、あと0.何秒早くポジションをとるとか、そういう細かいところで1人1人が怠ったところからミスや失点が出てしまっている」と語っていたが、そこが神戸戦では修正できていなかった。G大阪は、神戸と同様に攻撃陣の個の力が非常に高いので、そうした球際や個の対応の部分は何としても修正しなければならない。
それができて、無失点の戦いを続けることができれば、点を取るという部分では大いに期待ができる。なかなか勝てない中でも、6試合連続で得点することができており、ノヴァコヴィッチと大前の2大エースはしっかりと結果を出している。また、第22節・鳥栖戦でリーグ戦初出場ながらアシストを決めたU-19日本代表の攻撃の要・金子翔太など、若い力も台頭してきた。「試合に出られれば良いプレーができる自信は出てきているし、チームの起爆剤として勝利に貢献したいです」と金子本人も自信を見せる。カウンター攻撃の鋭さもあり、セットプレーでも優位に立てる可能性は十分。チームとして、本当に1つでも無失点の試合ができれば…という状況にはある。
しかし、今のG大阪を無失点に抑えきることは容易ではない。中断明けは8勝1分1敗とリーグ1位の勝率を残しており、その間にエースの宇佐美貴史が6ゴール、パトリックが4ゴールと取るべき人がゴールを量産し、26得点/5失点と攻守のバランスも抜群。さらに佐藤晃大と阿部浩之も非常に調子を上げており、宇佐美はアシストの面でも大活躍。ここ10試合は、1試合平均2.6ゴールを決めており、今は攻撃力でもリーグNo.1と言える。
また守備でも、現在は3試合連続無失点と安定感があり、G大阪はまさに穴がないチーム。そう考えると、やはり清水が勝つには失点を減らすしかない。つまり、本当に難しいミッションへのチャレンジになるが、逆に言えば、それができればチームにとっては本当に大きな自信になる。
清水はリーグ戦では5試合勝利がなく、ホームでは2連敗中だが、選手たちが大榎監督を信じる気持ちは揺らいでいないし、ひとつきっかけをつかめば、チームの歯車が好転していく雰囲気も十分にある。あとはどれだけ1人1人が自分を信じ、身体を張ってボールに食らいついていけるのか。そこをスタンドからも熱い声援で後押しし続けてほしい!
以上
2014.09.22 Reported by 前島芳雄