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【J1:第25節 仙台 vs 鹿島】プレビュー:勝ち方を忘れている仙台は、勝ち方を知る鹿島との一戦で何を手にするか(14.09.22)




仙台は“勝ち方”を忘れている。
前節は1-2で鳥栖に敗北。これにより、2010年に再びJ1で戦うようになってから初めての4連敗となった。順位は変わらなかったものの、J1残留争いを抜け出すためにも、“勝ち方”を思い出し、流れを変えなければいけない。
中盤での競り合いを制して梁勇基や野沢拓也の展開力を生かしたり、太田吉彰の突破を合図に速攻を仕掛けたり、赤嶺真吾のポストプレーにウイルソンや武藤雄樹をからませたり…と、狙いたいかたちはあるのだが、それがゴールという結果に結びつかないことには勝利はつかめない。
鳥栖戦後に赤嶺は「狙いは表現できていただけに、チャンスで先に決めなければいけなかった」と反省するとともに、次節についても「前半から勢いを持って、先制点を取れれば落ちついた展開にできると思うし、気持ちの面でも楽になれるはず」と、チームを勢いづけるゴールを誓った。勝てない時期は攻守両面で課題を抱えているものだし、先月まではリードを守りきれないところに課題があったのだが、チームに自信を取り戻すゴールを、9月唯一のホームゲームで早めに取りたいところだ。鳥栖戦の89分に意地のゴールを決めた男の言葉を、チーム全員で実現したい。

今節の相手の鹿島は“勝ち方を知る”チームである。世代交代の途中であるとはいえ、数々のタイトルを獲得したチームの歴史とともに伝承される“勝ち方”を、柴崎岳ら若い選手たちも表現している。前節は横浜FMをシュート1本に抑え、遠藤康の先制点で奪ったリードを守りきった。個々の選手の能力が高いのはもちろんのこと、緩急自在の試合運びをチームとして発揮できることが最大の強みだ。
仙台と鹿島は今季既にJ1第2節Jリーグヤマザキナビスコカップ予選リーグ第3節で対戦。いずれも鹿島が勝利している。その時に多くの決定機や決勝点が生まれたカウンター攻撃がこの試合でもポイントになりそうだが、ここではそのほかに2つの見どころを挙げたい。

1つは、数ヶ月前まで鹿島の4-2-3-1でトップ下を争っていた2選手のパフォーマンスである。鹿島は進境著しい土居聖真がその人だ。彼は前節に前述の遠藤のゴールをアシストしたのだが、そのときは相手の隙間を抜けていくドリブルでボールを運び、巧みなタッチでお膳立てをした。この場面以外にも、相手の虚を突きながら、味方の次の動作を呼び込む動きを同時にこなしている。この試合の要注意人物の1人だ。
そしてもう1人が、この若き土居と同ポジションで、今は仙台の一員として活躍する野沢拓也だ。8月5日の加入当初から「ただチームの中に入るだけでなく、勝つために何をすべきかを考える」と話してきた野沢が、ベガルタゴールドのユニフォームを着て初めて臨む“古巣戦”で技術と創造力、そして闘争心を発揮することが期待される。

もう1つの見どころは、両チームの最前線に位置するブラジル人FWの復調と、彼らを後押しする仲間たちとの連係である。前節に仙台はウイルソン、鹿島はダヴィがそれぞれPKを相手GKに止められている。彼らはそれぞれ次のチャンスで決めようと意欲を燃やしているであろうし、チームメイトたちも彼らを援護するために、結束してゴールを目指すだろう。たとえばウイルソンは「サポーターに謝りたかった」と責任を背負っていたが、赤嶺が「フィニッシュは全員の責任です。彼も次はきっと決めてくれます」と、渡邉晋監督が「この悔しさを持って彼も進んでくれる」と、次に向けてともにゴールを目指そうとしている。

勝ち方を忘れていた仙台が、勝ち方を知る鹿島との一戦で何をつかむか。高いレベルの刺激を受けて仙台が勝ち方を思い出すか、それとも鹿島が経験を生かして勝ち方を披露するか。さまざまな駆け引きを楽しみにしたい一戦だ。

以上

2014.09.22 Reported by 板垣晴朗
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