北九州が2位の松本山雅を迎え撃つ。前節では勝てば3位というチャンスを逸しているだけに、中2日で迎えるこの試合に懸ける思いは強い。とくに気を吐いているのは3戦連続ゴール中のイケこと池元友樹だろう。直近3試合で5得点を挙げ通算では13ゴール。リーグのランキングでも6位に付け、柱谷幸一監督もゴールの積み上げに期待を寄せている。
9月23日のゲームを北九州は「戸畑区民感謝デー」に位置付け、北九州市戸畑区在住・在勤の人などを対象にバックスタンドに無料招待する。池元は試合5日前の9月18日、戸畑区役所を表敬訪問。池元自身は北九州市小倉北区出身だが、高校時代の通学に戸畑駅を使っていたり、戸畑区の鞘ヶ谷陸上競技場で試合をしていたりと縁があり、出迎えた勝原雄一区長らに「ホームでいい結果を出し最後まで戦い抜きたい」と活躍を誓っていた。
縁ある戸畑区民のエールも受けてピッチに立つ池元。最近のゴールラッシュについて柱谷監督は「テニスの壁打ちのようなもので、いいボールを打てばいいボールが返ってくる」と表現する。献身的な守備アプローチで好位置で奪うと、『いいボール』をサイドに振って駆け上がり、再び『いいボール』をエリア内で受けられるという構図。個々のコンビネーションやポジショニングが合ってきたことが池元のゴールに繋がっていると言えるだろう。また池元の個の部分でも「ゴールに向かう姿勢」に積極性を取り戻し、打てるタイミングでパスをするようなもったいないシーンが減ってきた。「FWなのでしっかりチャンスをものにしたい。松本は勢いのあるチームだが優位に試合を運んでいければ」(池元)。4試合連続ゴールを目指して、松本戦もシュートに力を込める。
北九州に気がかりな部分があるとすれば、それは攻撃面ではない。「ゼロに抑えていれば負けることはないし前は得点を取ってくれているので、守るほうが頑張らないといけない」。そう話したのはGK大谷幸輝。数々の好セーブでチームを救ってきているものの、守備の対応が遅れ前節の磐田で3失点。その前のホームゲームでは福岡に5失点と大量失点が続いてしまっている。北九州の場合、大谷の言葉の通りそして上述の通り、池元ら前線が確実にゴールを重ねられるので1失点で焦ることはないが、複数失点をすることでバランスが崩れる危険性はある。いかに1失点以内で(欲を言えば無失点で)ゲームを進められるか、疲労もある中でここが踏ん張りどころだ。
もっとも、磐田戦の翌日の練習では誰一人、下を向いている様子はなく、切り替えはすでにできているようだった。「前半の早い時間に絶対に失点しないことが大事。(松本も)気合いが入って来ると思うが、自分たちらしい戦い方をしたい」と八角剛史も冷静に試合に臨む構え。
対する松本は前節の讃岐戦で苦戦。引き気味の相手にアーリークロスを送ったり、裏を狙ったりと手を尽くすも1点が遠かった。松本からみれば北九州も堅いディフェンスが持ち味の相手であり、2戦続けて似たようなタイプとの対戦となる。松本は3戦続けて白星がなく、3位以下との勝点差もじわりと縮まってきている。何より得点が欲しい松本は讃岐戦を反省材料に短い準備期間でも修正を加えてくるだろう。ゴールランキングで池元を2点上回り3位に付けている船山貴之の6戦ぶりのゴールにも期待がかかる。船山は讃岐戦でも積極果敢なチャレンジを続けており、ぶれずにゴールを目指したい。
2試合続けて上位対決となり地力が試される北九州と、自動昇格圏内の確保へ4試合ぶりの勝利を狙う松本。求められるのは結果だ。勝点3を呼び寄せる池元と船山の両エースの躍動に注目せずにはいられない。
最後に蛇足ながら。区民感謝デーの「戸畑区」は工業都市の北九州市の中でもとくに製鉄所の敷地が広大に広がっているエリア。臨海部も洞海湾という周囲を工場地帯に囲まれた湾に面している。対岸の若松区中心部と繋がっている若戸大橋や若戸渡船からは工場のダイナミックな風景や風力発電の風車も眺められ、北九州市らしい景色が楽しめる。北九州市民には見慣れているが、アウェイから訪れる際はぜひ地図や乗り換えアプリとにらめっこしながら、北九州市の原動力とも言えるエリアを洋上から見ていただければと思う。余談終わり。あとは勝点3をめぐる熱戦を望むばかりだ。
以上
2014.09.22 Reported by 上田真之介