シナリオは書き換えを余儀なくされた。4戦無敗で乗り込んだアウェイ熊本で勝利を飾り、連勝した状態で山形に挑むはずだったが、その目論みは複数失点により崩れた。守備陣はまたしても瓦解し、3試合連続3得点中だった攻撃陣も1点しか奪えず。前回対戦で1−6と大敗した山形にリベンジするには些か心許ない状態だが、「前回は山形にこれ以上ない勝ち方をされ、僕たちにとっては屈辱的な敗戦だった。僕も後半からピッチに立ったけど、悔しかった」と語る大久保哲哉は、古巣戦に向けて湯気が見えそうなほど闘志をたぎらせている。どれだけの選手が大久保のような思いを抱き、山形と6月の自分自身にリベンジできるかが、この一戦では問われることになる。
前回の汚名を雪ぐために赤井秀行は、「(山形は)プレッシャーが激しいチームなので球際で負けないようにしたい。足が速い人もいるので(最終ラインの)裏をケアしたい」と、2つのポイントを挙げた。4戦負けなしの頃は球際で競り勝ち、それが良い攻撃、鋭いカウンターにつながっていた。特に、センターバック2枚が相手FWを潰せたことが小さくなかった。しかし、前節は「2列目に(背後に)走られ、FWが(中盤に)落ち、空いたスペースで受けられた」(赤井)ことで、最終ラインとボランチの間が間延びし、バイタルエリアを利用され、サイドアタックを許した。
山形も熊本同様にミドル、ロングフィードを使用するのに長け、意図的に最終ラインと中盤の分断を図ってくる。空けたスペースに1トップのディエゴが下がり起点を設け、2シャドーの山崎雅人と川西翔太を活かすためだ。相手の土俵に乗らないためにも、DF陣はロングボールを弾いたら迅速にラインを押し上げ、中盤はセカンドボールワークに奔走する必要がある。前回は1ボランチだったこともあるが、その脇を山形に使われて大量失点を招いた。轍を踏まないためには、プレスバックするなどバイタルエリアの入念なケアが求められる。
攻撃陣は爆発こそ出来なかったが、終盤に熊本から1ゴールを挙げた。少なくない収穫だ。ただ、1ゴールにとどまったのは、質が足りなかったからだ。「ウチの生命線」(近藤祐介)であるカウンターでも、セットプレーでも。とりわけ、CKのチャンスは12回もあったにもかかわらず、結局ゴールネットは揺らせなかった。連戦では先制点が大きなウェイトを占める。ここ数試合、セットプレーは栃木の武器になりつつある。「良いボールを蹴り、ピンポイントで合わせられる精度を出して決めさせたい」というキッカー近藤の思いに、中で待ち受ける選手はマークを外す巧みな動きで応えたい。
前々節の愛媛戦の4失点から一転、前節はJ2トップスコアラー大黒将志を擁する京都を零封した山形。一瞬の隙を突いて決勝弾を決めた山崎のゴールは値千金だったが、それ以上に粘り強い守備が光った。3−4−3に適合しきれていない印象も残したが、終盤の京都の猛攻を凌ぎ切ったことは、チームに大きな自信をもたらしたはずだ。繰り返しになるが、連戦では先制点が重要になり、追いかける展開は回避したい。そうなると、守備からリズムを作ることが賢明で、今季初の連勝の成否を分ける鍵にもなるはずだ。後ろがしっかりと耐え、3人で崩し切れる前線に良質なボールを届けられるか。
技術、戦術に加え、今節は試合間隔も勝敗を左右するキーファクターになるだろう。互いに中2日の条件は同じだが、決定的な違いは山形が前節勝っているのに対し、栃木は負けているということだ。「勝って疲れは半分」と山崎が言い切るように、山形は勝利という最良の薬を服用したことになる。その効果を栃木が早々に消すには、序盤から圧倒するのが得策。前節、前々節と不安定な立ち上がりを見せており、その反省を活かす機会でもある。キックオフからフルパワーでぶつかれるか。相手の出鼻を挫く、勇猛果敢な姿勢を見せたい。
以上
2014.09.22 Reported by 大塚秀毅