2014シーズンのJ2リーグ戦も気がつけばラスト10試合。混戦と言われてきたが、J1昇格プレーオフ圏内争いも徐々に色合いが見えてきつつある状況だ。混戦からサバイバルへ。6位を死守したい大分に対して、勝点5差でぎりぎり6位への挑戦権を維持している横浜FCが、サバイバルの一戦を「追撃の丘」ニッパツ三ツ沢球技場で繰り広げる。
ホームの横浜FCは、前節の長崎戦で久々の敗戦を喫した。強い雨の中、得意とは言えないハイプレッシャー型の長崎に苦戦した。3バックとのミスマッチを解消できないまま、PKを献上し先制されると、後半逆に獲得したPKを決められずに、ここのところ見せていたアウェイでの粘りを見せきることが出来ずに、アウェイでの最低限である勝点1を持ち帰ることはできなかった。多くのメディアは、長崎・高木琢也監督が横浜FC時代に打ち立てた無敗記録のことを戦前に言及した。実際の戦いではその言葉から出てくる堅さは選手には見られなかったが、あくまでも目標は昇格であり、無敗記録ではない。この大分戦ではそのような外部の雑音がなくなり、ピッチの中だけでなく横浜FCを取り巻く環境全部が、本来獲得すべき「目先の一勝」に回帰できるようになる。横浜FCはあくまでもチャレンジャー。それは、この10試合全く変わらない。
この試合では、開幕からフル出場で横浜FCの守備を支え続けた野上結貴と、中盤での潰しと攻撃へのスイッチになっていた松下裕樹がともに出場停止となる。まさに、横浜FCのチーム力が試される試合となる。横浜FCは、この夏の移籍ウインドウが開いている時も一切の補強をせず、逆に今いる選手で戦うことで覚悟を決め、その覚悟のもとに下位から這い上がってきた。改めて、出場できる選手で団結した力を発揮すること、この上昇劇の原点に立ち返ること、横浜FCが持ってきた覚悟が問われる試合となる。その意味ではチャレンジャー精神に火を付けやすい状況だ。原点回帰という意味では、横浜FCが磨いてきたパスワークを改めて表現することも重要。攻撃の組み立てにおいて、FWのパク ソンホに依存するだけでなく、持ち前のパスワークをバランス良く織り交ぜることが、この試合の鍵となる。
横浜に乗り込む大分は、前節の福岡戦で9月10日に加入したダニエルが初先発。いきなりその存在感を見せつけた。大分の本来の特長である勤勉さと連動した攻守の動きに、ダニエルが攻守においてアクセントを強烈に付けている。前節ダニエルは4-1-4-1のアンカーのポジションに入ったが、守備での潰しだけでなく、強力なキープから連動して動く4-1の攻撃陣へ絶妙に繋いでいく様は、大分のラストスパートへ大きな武器となるだろう。その意味で、この試合の大分のキーマンは「連動するチーム全員+ダニエル」だ。大分が持つ結束と、ダニエルという個の融合がさらに輝くか、という点に注目したい。
試合の見所としては、仮に前節と同様に大分が4-1-4-1のシステムを敷いてくるとすると、アンカーを務めるダニエルの横のスペースの攻防が大きな鍵となる。横浜FCは、大分にリズムを作らせないためにも、ダニエルと周囲の連携を寸断していきたいところだ。また、大分の前節の2点目、3点目を生んだ連動するプレッシングも大きな武器。横浜FCはハイプレスを仕掛けてくるチームを得意としていないところがあるだけに、大分のハイプレスをどういなしていくか。ロングボールだけでなく、プレスを見極めて空いたスペースにボールを動かす冷静さと勇気が試される試合となる。前回の対戦(5/18 第14節@大銀ド)では、風間宏矢がフリーでゴール前に入って先制点を決める一方で、横浜FCは決定機を外し、その差が響いて横浜FCは敗戦した。ディテールまでこだわり、サバイバルで欠かせない緊張感を90分間保ち続けられた方が、この試合でも勝点3を挙げることになる。
この連戦に入る前、横浜FC・南雄太は「記録は全く意識していない。1つ負けたらすぐに大きく落ちてしまう」と、サバイバルに突入した状況に対する心境を述べていた。このサバイバルを生き残るのは、自らの力を信じて這い上がってきた覚悟の横浜FCか、地力に加えて補強の上積みを見せる大分か。久々のデーゲームでの熱戦に期待したい。
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2014.09.22 Reported by 松尾真一郎