それぞれのチームが、それぞれのゴールを目指して、それぞれの思いをぶつけ合うJ2リーグ戦も残すところは10試合。課題もあれば、収穫もあった32試合を過ごし、いよいよ最終局面を迎える。順調に推移しているチーム。思うような結果を得られていないチーム。それぞれの事情は様々だ。しかし、ここまでくれば、自分を信じ、仲間を信じ、自分たちが積み重ねてきたことを発揮すべく100%の力を注ぐことが勝利への道。もちろん、勝負に技術や戦術の質が大きく関わっていることは言うまでもないが、最後に問われるのは、相手よりも強い気持ちを持って戦えるのかということ。それはどのチームにとっても変わらない。
J1昇格プレーオフ進出をめざして戦う福岡は、第30節北九州戦で劇的な逆転勝利を挙げてから、水戸、大分に2連敗。順位を11位に落とした。アグレッシブにボールにプレスをかけ、「守」から「攻」へ素早く切り替えて、シンプルにゴールを目指すプレーモデルは概ね表現できており、内容自体は今までと大きく違うわけではないのだが、結果に結びつかない試合が続いている。直面している課題は、攻撃の最終局面での工夫に欠けることと、わずかな隙を突かれてあっさりと失点を許してしまうこと。特に気になるのは守備の部分。攻撃的なサッカーを展開する福岡だが、その勝ち方を振り返れば、必ずしも打ち合いを制してきたわけではない。ゲームの基本は相手に先に得点を与えないこと。粘り強い守備が勝利のベースにあった。
何かが崩れているわけではない。俗に言う「ほんの少しのところ」に微妙なズレが生じている。あるいは、攻撃の最終局面で崩しきれないことで、気がつかないうちに気持ちが先走っているのかも知れない。そんな状況の中で求められているのは「我慢」。アジア大会参加のために金森健志がチームを離れ、坂田大輔が怪我のためにプレーできない状況に加え、相手の良さを消すような試合が増える終盤の戦いでは、ゴールが簡単に生まれないのは想定の範囲内。相手を圧倒することよりも、まずは失点を抑えて、90分を使って粘り強く勝利を手に入れることの方が重要だろう。
一方、レベルファイブスタジアムでのアウェイゲームを迎える東京Vは、J2残留争いの真っただ中にいる。現在は5戦勝ちなし。第31節終了後に前三浦泰年監督を解任し、新たに冨樫剛一監督をユース監督の立場から昇格させたが、前節の富山戦にも敗れて4連敗中。現在は、21位の讃岐と勝点差3の20位にいる。平均年齢が23歳弱と極端に若いチームは、潜在能力の高さはありながらも、若さゆえの脆さが影響したか苦しい戦いを続けている。しかし、現状を悔やんでも何も始まらない。リーグ戦は42試合のトータルの戦い。まだ何も終わってはいないし、何かを失ったわけでもない。新監督の下、ここからどこまで巻き返せるか。いまチームとクラブの真価が問われている。
そんな東京Vに求められるものも、やはり「我慢」だろう。監督交代で全てが解決するわけではない。また、チームの力は積み重ねの上に成り立っているもので、残り10試合となったいま、短期間で劇的に変わることは難しいと言わざるを得ない。これからも難しい戦いが続くことだろう。そんな中で大切なことは、新監督の下で改めて今の自分たちの目標を明確にし、何をするべきかを整理し、そこへ向かってのチャレンジを繰り返していくこと。勝ったからと言って浮かれず、敗れたからと言って下を向かず、やるべきことに向かって一歩ずつ進むことでしか道は開けない。幸い、前節の富山戦では、敗れたとは言え、後半はリズムを刻んで優勢に試合を進めることができた。そこをポジティブに捉えて、一喜一憂せずに戦うことが求められている。
J1昇格プレーオフ進出を目指して、ひとつずつ積み重ねていきたい福岡。J2残留を果たすべく目の前の1試合に集中して戦いたい東京V。その立場こそ大きく異なるが、どちらも勝利が必要であることに代わりはない。その両チームが戦う試合は、気持ちと気持ちがぶつかり合う激しい試合になることは間違いない。
以上
2014.09.22 Reported by 中倉一志