先月31日に指揮官交代を発表した大宮だが、直後の結果を見ればその劇薬はまず十分な効き目を示したと言えるだろう。天皇杯4回戦での逆転勝ちに続いて、リーグ前節では鹿島に競り勝ち、公式戦2連勝。チームは目指すJ1残留に向け、明らかに好転した姿を見せ始めた。
また内容ついて触れると、守りの粘り強さアップももちろんながら、攻撃面に好機を逃さない鋭さと思い切りの良いトライ姿勢が高まっている印象だ。事実、鹿島戦では少ないチャンスの中でも二度ゴールをこじ開けたし、泉澤仁が積極的に仕掛けた時などには鹿島ディフェンスも止め切れないシーンを作り出していた。いずれにしても、ムルジャやズラタン、家長昭博や泉澤のアタックが以前にも増して危険なものになっているのは間違いない。
その大宮を迎えるとあって、今節の徳島には守備の厳しさと精度が大いに問われると言えよう。90分間通して一瞬の緩みもなくそれらを徹底し、小林伸二監督も「個を見るとリーグでもいい位置にいる」と警戒を強める大宮攻撃陣を封じ続けることが選手たちには強く求められるはずだ。
さらにそうした守備は決して自分たちのゴールを守るだけのものではない──。中断期間以降の徳島は攻めの形をかなり作れるようになっているが、そうした攻撃面の明るい光はいい守備によって生み出されている。狙いある組織的なボール奪取を成功させることで、チームは好機を作れているのである。それだけにこの一戦においても、守備の出来は徳島の戦いの全てに関わる非常に重要なポイント。そこに甘さなどを見せることは絶対に許されない。
そして、その出来を誰よりも左右するのはやはりボランチのエステバンだ。相手が足元から僅かにボールを放す瞬間を的確に狙うワンランク上の対応技術ですでに素晴らしい働きを見せているが、今節も彼が数多くボール奪取に成功すればチームの守りには間違いなく安定感が生まれる。そのうえ早い判断での効果的な配球もやってのけることから、背番号33のボール奪取は攻撃にもいい影響をもたらすと言えよう。特に前節でも見られた高崎寛之やアドリアーノへの縦パスは徳島の攻めに大きな可能性を吹き込むもの。ボールの受け先に対するサポートを組織全体で強めることが出来たなら、糸を引くような美しさと高い正確性を持ったそれはきっと有効な展開に結び付いていく。
「自分が大切にしているのは守備の安定です。それと早く攻撃へ移ることが出来るようになればゴールが近くなるので、ボールを持ったら攻撃の選手たちに出すことと、短いパスだけでなく大きな展開をすることも意識しています」と語り、「チーム全員の力を合わせて戦いたいし、チームを残留させるためにしっかり自分の仕事をして最後まで頑張っていきたい」と続けたエステバン。この一戦でもそのプレーに注目が集まる。
順位でひとつ上にいる大宮との直接対戦。その大宮も含めた残留争いのライバルたちに前節広げられた勝点差。さらに、残る試合数は11、未だ今季ホーム初勝利を挙げられていない現実と、今節の徳島の眼前には絶対に負けられない要素がズラリ並ぶ。果たして選手たちはそれらのプレッシャーを逞しく撥ね除け、結果を出すことができるだろうか。
いや、ここまでくればもう出せるかどうかなどとは言っていられない。希望の火を小さくしてしまわないために、徳島は何があろうと結果をもぎ取らなくては。
以上
2014.09.19 Reported by 松下英樹