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【J1:第1節 名古屋 vs 清水】プレビュー:期待と不安とサプライズと。清水を迎え撃つ名古屋が新たな時代の扉を叩く。(14.03.01)

ここまで期待と不安の入り混じった開幕戦は、2008年以来だろうか。ここ5年間、常に強豪としての看板を掲げて戦ってきた名古屋が、まっさらな状態でその一歩を踏み出そうとしている。西野朗監督を迎え、新チームが始動して1ヵ月余り。大幅に若返ったチームは可能性と脆さの両方を包含しながら、ホーム豊田スタジアムで清水を迎え撃つ。

ほぼすべてが一新されたといってもいい名古屋の陣容は、数名の中心選手を軸に構成される。GKの楢崎正剛、DF田中マルクス闘莉王、MF小川佳純、そしてFWケネディだ。フォーメーションは4-4-2が濃厚で、タイでのキャンプを通じてテストを重ねてきた3バックはひとまず封印された様子。そのDFラインの顔ぶれは実に若々しいものとなった。右サイドバックには3年目、20歳の田鍋陵太の抜擢がほぼ確実。50m5秒8の瞬足サイドアタッカーは仕事場を1列下げながらも、「もう3年目、若手じゃないです。チームの信頼を勝ち取りたい」と意欲的だ。左は2年目の本多勇喜とみられるが、左利きのダニルソンのコンバートも可能性としては残っている。

しかしDFラインで最大のサプライズは、センターバックで闘莉王の相棒を務める選手だろう。今季始動当初では、2年目の牟田雄祐かダニルソン、新加入の刀根亮輔やヘジスが争うと思われていたポジションで開幕スタメンを飾りそうなのは、何と現役大学生の大武峻だ。188cm、83kgの堂々たる体格を持つ福岡大の4年生は、タイでのキャンプに帯同した際にその才能を高く評価され、このプレシーズンを通じて主力組として扱われてきた。クラブも指揮官の意向に応え、迅速にJリーグ・JFA特別指定選手の手続きを完了。開幕戦での起用に間に合わせた。背番号も異例の一桁番号「2」を託された男の持ち味は、体格を生かした空中戦と、アグレッシブなビルドアップ能力だ。西野監督も「センターバックは空中戦の強さだけでは評価しない。攻撃の第一歩となるビルドアップやフィードのセンスも必要で、彼はその両方を備えている」と期待を隠そうとしないほど。本人も開幕戦を視野に入れており、「開幕スタメンが決まっているわけではないですが、そうなった時のために良い準備をしておきたい。自分は大舞台の方が気合が入っていい」と豪胆に語っている。

名古屋の攻撃陣で注目は、前線4人の組み合わせと、中盤の底の司令塔だ。タイから帰国後、4バックの修練を始めてからというもの、西野監督はFWをケネディと大卒新人の松田力、攻撃的MFに玉田圭司と小川という4人を継続して起用してきた。しかし2月22日に行われた岐阜との非公開練習試合を受け、マイナーチェンジを加えた模様だ。開幕戦直前の26日(水)にはケネディの相棒を玉田とし、空いた攻撃的MFに移籍新加入の枝村匠馬を加えた布陣をテストしていた。指揮官曰く「攻撃を考えれば玉田が攻撃的MFだが、清水はサイドアタックもあるし、そこを枝村で抑えて展開していくというメッセージ」とのことだった。そしてこのチームの影のキーマンとして期待を集めているのが、磯村亮太だ。もともと視野が広く、体格もあり、シュート力にも定評があったセントラルMFに、西野監督は遠藤保仁(G大阪)のようなゲームメイカーとしての働きを求めている。磯村も昨季までの役割との違いに戸惑いながらも「監督や闘莉王さんからも『お前が組み立てろ』と言われている」と重責に応えようと必死だ。西野監督は「ボールを配る資質はあるが、まだまだ闘莉王にコントロールされている」と及第点を与えていないが、彼のプレーが攻撃を左右する重要なファクターになることは間違いない。それ次第で、小川、玉田、ケネディらのプレーの輝き加減も決まってくるとさえ言えるだろう。キャンプ以降なかなか良い形を作り出せず、守備にもその影響が出ているだけに、攻撃の成否は最大の懸案事項となっている。

対する清水もまた、ポジティブな要素とネガティブな要素を抱えての開幕戦となりそうだ。ポジティブな面といえば新攻撃陣が結果を出しているところ。新加入のノヴァコヴィッチと期限付き移籍から復帰した長沢駿の“190cmオーバー”ツートップ目がけた伝統のサイド攻撃は強力無比。川崎Fとのプレシーズンマッチでもノヴァコビッチ2得点、長沢1得点とアフシン ゴトビ監督の期待に応えている。ウイングの大前元紀、高木俊幸も得点能力は高く、ベンチには新加入の高木善朗も控えており、攻撃に関する心配はないといえる。だが反面、守備陣に一抹の不安は隠せないのが現状だ。このプレシーズンの練習試合で喫した失点は6試合で14にのぼる。しかも川崎F戦でボランチの村松大輔がレッドカードをもらい、開幕戦が出場停止というアクシデントも発生。本田拓也や竹内涼など代役はいるものの、中盤で体を張れる選手の不在はディフェンス面においてはマイナスと言わざるをえないだろう。

試合の趨勢は名古屋のポゼッションと清水のサイドアタック、どちらがより機能するかで決まる。チームの完成度からすればゴトビ体制が継続中の清水に分がある上に、経験の少ない名古屋のDFラインにノヴァコヴィッチや大前、高木俊らの攻撃力は脅威でしかない。特に経験不足のサイドバックとの対峙は、この試合最大の見どころとなるかもしれない。いまだアタッキングサードでの崩しにおいて共通理解が深まっていない名古屋のポゼッションも、枝村と玉田、小川らの連係がはまれば、十分に決定機は生み出せるはず。練習時でも特に枝村の巧みなボールさばきと急所を突くパスの精度は際立っており、停滞する攻撃陣の救世主となる可能性はある。開幕から古巣との対戦になった枝村は「流れよくプレーできれば。他の選手とリズムを合わせてやりたい」と攻撃の潤滑油となる意識を明かした。清水のハイプレスへの対抗手段としても、彼のボールさばきは鍵を握る要素だ。

ほぼゼロからのスタートとなった名古屋は、勢いをつける意味でも勝利が欲しいところ。内容を追求したい気持ちと結果を求める心をうまくコントロールし、よりよい結果につなげられれば最高だ。そんなに簡単にいかないことはわかっている。ベテランの玉田が「チーム状態が良いとはお世辞にも言えないけど、とにかくやるしかない。そして課題を見つけながらやる」と言えば、新キャプテンの闘莉王も「良くなるようにやっていくだけ。その中でできるだけ伸び伸びとやらせてやりたい。本番が楽しみだよ」と苦境も覚悟で臨む心積りだ。千里の道も一歩から。生まれ変わったチームがいよいよ、新たなスタートラインの前に立つ。

以上

2014.02.28 Reported by 今井雄一朗
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