本日、うまかな・よかなスタジアムにて、ロアッソ熊本、小野剛 新監督の就任発表記者会見が行われました。会見での出席者のコメントは以下の通りです。
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●池谷友良アスリートクラブ熊本代表取締役:
「こんにちは、ロアッソ熊本池谷です。本日は大変お忙しい中、そしてお足元の悪い中、小野監督の就任会見にお集まりいただきまことにありがとうございます。
このたび、2014シーズンから指揮を執っていただくことになりました小野剛監督です。招聘するにあたって、今年途中に監督交代があったり、大変厳しいシーズンを今年度は迎えたなか、クラブ状況を含めて人選をしてまいりました。その中で今回、本当に素晴らしい、そしてクラブの今後にとっても、理念の達成に最大限力を発揮していただけるんではないかということで、先日、小野剛監督と契約を交わさせていただきました。
経歴等の詳しいことは皆さんご存知だと思いますし、本人から話もあると思いますので、ご質問いただければと思います」
●小野剛 新監督:
「皆さんこんにちは。このたびロアッソ熊本の監督に就任することになりました小野剛です。この素晴らしいチームができて、まだそれほど年月も経っていないなか、本当に地元の人たちに支えられて育って来たチーム、そういう印象を持っております。その熊本のチームにこうして呼んでいただき、そして指揮を執ることを非常に幸せに思っております。今シーズンは確かに厳しいシーズンでした。ただそれを、県民の皆さんがともに戦って支えてきてJ2に踏みとどまって、ここからさらに羽ばたこう、そういうなかで自分の力を少しでも発揮できればと思っております。熊本に元気を、子ども達に夢をという、熊本の大きな理念に向かって全力で頑張っていきたいと思っております。今後ともよろしくお願い致します」
Q:今シーズンは残留争いに巻き込まれたわけですが、今のチームの課題や足りないことをどう認識されていますか?
「正直、今シーズンの戦いを振り返ってしっかりと分析していく、それが自分の、これから最初にやるべき仕事だと思っております。このあと、早速コーチ達と勉強会の形で、何を高めていったらいいのかをとらえていこうと思っています。ただ、1試合はこちらに来て見せていただきました。来季またJ2にもJ1からビッグクラブがきて、そういうチームと戦うことになってきます。普通に戦力を足し算したら、なかなか勝つのは難しい。そういう中で何が最終的に我々の武器になるのか、その武器を最大限生かすのはどういうトレーニングをすればいいのか、今ぼんやりと頭の中にあるものを、もう少しハッキリさせてやっていきたいと思っております」
Q:失点数、得点数ともリーグの下から3番目という状況で、まず何から手を付けていったらいいのかというところを教えてください。
「おっしゃる通り、得点をあと20点ぐらい増やしていかなければいけない、失点も20点以上、減らしていかきゃいけない。決して簡単な道のりではないという風に思ってます。得点力が無い時、多くのクラブ、例えば私も中国で2年間やってきたんですけれど、だったらいいストライカーを買おうというのが、専ら中国のビッグクラブのやり方です。で、岡田(武史氏)と私はそうじゃなく、弱小クラブの中でなんとか戦ってきました。我々は常にセカンドウェイを見つけていかなければいけない。じゃあいいストライカーがいないんだったら、どうやって1人1人の足し算をするか。1を11人集めても11ですけれども、それが13、14になるにはどうしたらいいのか。それを成し遂げる力というのはきっと、今の戦力、そして新たに入ってくる戦力の中に出てくるんじゃないかと思ってます。もちろん個でもひと回り大きくなってもらいたい。ただそこで太刀打ちできないところで、どれだけチームとしてコレクティブにというか、1人1人の力が合わさって大きくなってくる、そういったことを目指していくしかないと思ってます。失点に関しても、失点場面を分析してからなんですが、やはり1人1人の力を、誰かが思い切ってボールに行ったらすぐにカバーできる、そういったような全体の意思を統一させてやっていく、それ以外に大きな道はないと思いますんで、どれだけ突き詰められるかにかかってくると思っております」
Q:1試合ご覧になったということですが、それがいつのどの試合だったのか、それとその試合以外の映像をどの程度ご覧になっているのかを教えてください。
「見に来た試合はアビスパ戦です。それから数試合をビデオ、あるいはテレビで見ております。ただちょっと、ぎりぎりまで私も同じくらいのところで中国の方でやってまして、終わってからもFIFAの仕事で海外に出たりとかいうことがあって、実際に本格的にやっていくのはこれからということになります」
Q:ご覧になった印象は?
「そうですね、自分が生で見た試合は選手の頑張りが伝わってきて、いい形へもっていった。ただ、そこの歯車がちょっと狂ってきた時にどうやって歯止めをかけたらいいのか、その辺は今シーズン苦しんだ所じゃないかなと認識しています。1人1人の頑張る姿勢というのはポジティブな印象として持っております。それと同時に、一度生で見たかったのは、ボールが無い所も含めて上から選手の動きを見たかったのと、スタジアム全体の雰囲気をどうしても見たかったというのがあります。ピッチの中で苦しくなって来た時ほど、やはりスタジアムの力というのが大きくなる。そういう時は二通りのスタジアムの様相が出てくる。その時に、もっともっと選手が力を振り絞れる、その雰囲気を非常に強く感じました。1人1人の力、1人でできないところをチームがまとまることで大きな力になる。それでもまだもう少し足りないという時にスタジアム全体、熊本全体で頑張って行ける。 まずはそういう、後押ししてくれるような試合をしていって、1人1人の力を結びつければいいなと感じています」
Q:1年目の目標順位が具体的にあれば教えてください。
「まずはしっかりと上に向けての基盤を作るというところが重要になっていくと思います。飛躍するためには、大きく土を蹴った時の地盤が重要だと思ってます。ただ、戦うからには当然、1試合1試合、絶対負けたくありません。少なくとも優勝というものが存在するスポーツであれば、そこを目指して頑張っていきたい。ただ、今の現状を考えてしっかりと地盤を作りながら、何とか上に向けてのプレーオフにしがみつける、何とかそこに手をかけたい、そういう風に考えています」
Q:中国で2年間やってきて、先ほども11を13、14にしていくというお話がありましたが、中国では具体的にどういう指導、どういうアプローチをしていったのか、それを熊本でどうやっていくのか、という点はいかがでしょうか。
「中国では、今日の未明ですね、広州恒大というチームがFIFAクラブワールドカップに出て、バイエルン・ミュンヘンには残念ながら勝てませんでしたけれどいい戦いをしました。そこのチームは世界中から選手を買って来て、素晴らしい成果だったんですけれども、それは1つの道ですが、我々にはそれはできない、我々はセカンドウェイだと。まず1人1人がピッチの中で協力して、1人が動くからそこにスペースを見つけて、誰かがハードワークするからこそ誰かが輝く、自分がハードワークするからこそ最終的に自分が輝くことに回ってくる、ということをどうやったら理解させられるか。最初難しかったのは、自分のために自分のプレーをするという傾向が、日本の選手よりは強かったです。そこにアプローチしていくこと、そして、やればできるんだという自信を与えて夢を持たせること、それがピッチの中での戦いでした。もう1つの戦いはピッチの中にいる11人では到底できないことが分かっていました。で、育成の指導者を集めて勉強会をやって、我々が行くのはセカンドウェイだと。お金がないから選手を買ってくることはできない、だったら育てるしかないんだと。育てるためには自分たちが努力してレベルアップしよう、それを合い言葉にやってきて、多くの若い選手達を使いながら、苦しいシーズンを戦ってきました。
同じと言うか、似たようなことは十分できるかなと思ってます。自分が強化委員になったのが95年、初めて地方に指導に来たのが熊本のトレセンでした。それ以来、熊本の指導者の方とは常に懇意にさせてもらって、年に1、2回は若い選手の指導で来させてもらっていますし、熊本の指導者の素晴らしさは十分、分かっているつもりです。まずロアッソのクラブの中での育成スタッフ、それから我々トップのスタッフの協力、そして地元の指導者の方々の協力、全ての人が力を合わせれば、それがまたプラスαとなって、ピッチの中での足し算に加わっていくという風に信じております」
Q:熊本で実践したいサッカー、理想として掲げたいサッカーはどんなものですか?
「答えとしては難しいんですが、やってみたいサッカーとしては、やはりボールの移動中にいろんな選手がアクションを起こしていく、選択肢を多く持たせて、流動的なサッカーを目指していきたいです。ディフェンスも待つのではなくて自分たちからボールを奪いにいきたい、そういうサッカーが自分の頭の中にはあります。ただ、答えが難しいと言ったのは、やはり選手がいて初めて、やるサッカーが決まってくる。自分がやりたいサッカーを押し付けるというのはあまり得策じゃないと思いますので、自分のやりたいサッカーはもちろんあるんですけれども、あとは選手1人1人の個性、特にストロングポイントを見て、選手中心に、どうやったら彼らがより輝くかということを考えながら、それがバランス的には大きいんじゃないかなと思います。それに、自分のやりたいサッカーが加わって、最終的な目指すサッカーを決めていきたいと思ってます」
Q:まず池谷社長にお聞きしたいのですが、今年7月に吉田前監督から交代があって、次期監督の人選をする時間がある中でどの時点でファーストコンタクトを取って交渉を進めてきたのかということと、小野監督には、オファーを受けて熊本で指揮を執ると決めた理由を教えていただけたらと思います。
●池谷社長:
「実際は10月に入ったくらいですね。7月に監督交代をして私が暫定的な代行としてやらせてもらいましたが、その間に3人ぐらいの指導者とは接触しました。ひとつ、このクラブが10周年を迎えることもありまして、クラブ史上初めての監督交代でしたので、(次の人選は)慎重にやるべきだということで、監督選定に必要なもの、このクラブに必要なもの、いくつかの重要なファクターを挙げて人選を進めてきました。1つにはJ1というのが当然あるので、反省も含めて単独のクラブを指揮したことがある実績、そして昇格経験を持っていればなおさら良いと、それが第一の条件でした。そして、この地域、もっというとクラブの理念ですね、この理念の達成のためにともに戦ってもらえること。そして地域性ですね。今日もたくさんの方にお集まりいただいてますが、メディアとの関係も含めてこの地域というものをしっかり捉えていただける人。やはり地方のクラブなので、お金のあるビッグクラブではない。地方クラブが今後Jリーグの中で生き残る、勝ち残る、そういう部分を託せる。失敗があったから特に思うんですが、本当にそういう意味で戦ってもらえる。そして、この監督なら託してもいいなと思えることだと思うんですね。この監督のために何かをしたいと思わせてくれるとか、選手から言うと『この監督を胴上げしたい』とか、自分のことだけでないものを発信できる、そういうものも含めた人選だと考えてもらえればいいと思います。
それでもなかなか決められなかった中で、10月にこういう話が出て、まぁ、もうピピピッと来たと言った方がいいですかね(笑)。僕は年も同じで昔からよく知ってはいるんですけど、まさか小野監督が浮上するというのは思ってませんでした。それが名前が挙がった瞬間に、本音で言うと『行ったら?』ということを強化担当には伝えました。そういう中でうまく、今日この場を設けられたことをすごく嬉しく思いますし、また新たに責任も生まれてきたかなと。小野剛監督をしっかり支えて、この理念の達成のために、ともに覚悟を持って戦える、そういう監督だと思ってます。そういう選定で今日を迎えたと理解いただければと思います」
●小野剛監督:
「もったいないような言葉を聞いたあとの発言はちょっと難しいんですが(笑)、いつ頃からというのが自分の答えに直結するんですけれども、正直、ここのクラブ以外、中国のクラブでそのまま継続してくれという話と、あといくつか頂いておりました。まだシーズン途中だったんですけれども、飯田強化部長からは何回か、非常に熱いメッセージをいただきまして、その時からずいぶん心が動いておりました。それともう1つは、自分が日本協会のテクニカルダイレクターをやっていた頃から、地方こそが日本のサッカーの将来を切り拓いていくということを言い続けてきております。選手を自分たちで育てていくものだということを言い続けて、広島でもそうだったんですけども、地元の指導者と全スタッフとともに選手を育てて、そしてチームを作っていく。それが自分には合っていると思っておりました。それと、シーズン途中からの熱いお誘いがあり、中国から戻って来た時には、他の話は聞く前に、自分としてはほとんど、ロアッソさんにお世話になると心の中で決めておりました」
Q:選手の良さを引き出すとおっしゃって、現在すでに新加入も発表されていますが、これは新監督の意向がどの程度反映されているんでしょうか?
「正直、私が来てからでは手遅れというところが編成にはありまして、どういう選手を穫っていったらいいのかというのは、既に継続してやってきていただいております。それに加えてですね、自分の中では『こういう選手がいるけどどうだ』とか、他のクラブから『こいつを鍛えてくれ』という話がいくつか飛び込んできたりというのもあるので、それをミックスさせながら今やっているというところで。自分もFIFAの仕事を受けて、どうしても海外に行かなきゃいけないということがここまでありましたので、ここから本格的に編成は詰めに入っていきたいと思っております」
Q:協会も含めて様々な経験をされていますが、そういった経験からくるご自身の強みや、性格も含めてどういう点を熊本で生かせるのかうかがいたいのですが。
「自分の強みというのは、冗談でよく『幼稚園児から日本代表までの指導経験があります』というのは言ったりするんですが、幅広いと言えばよく聞こえるし、ずいぶんあれこれといろんな仕事しているんだなとネガティブに聞こえるかもしれませんけれども、全てが自分の中では自分にとって非常に役に立っていると思います。これはよく岡田氏が言うんですけれど、必要なことが目の前に起こっているんだと。技術委員長をやっている時も、本当に自分の好きなことなのか分からなかったし大変だけどやっていった。でもそれは自分にとって必要なことだったと思っています。中国に行く前の2年間はFIFAの仕事で世界中のいろんな所に行きました。そうすると、日本人の選手というのは指導者から見ると非常に指導しやすい。本当に話をよく聞いてくれるし、こちらの言葉がつかえたとしても、舌足らずでも指導者の意図を汲み取ってくれる。それは他へ行くと全く通じなくて、しっかりと言葉の力も必要になりますし、それ以上に『君のことを本当に大事に思っているんだ』ということであったり、1人1人の選手に夢を持たせて自分の方から動き出すようにするか、そういったトレーニングをお前はしろということで、そういう海外の経験もしたんじゃないかと思ってます。そういった中でどういうことができるかは分からないですけど、どれだけやる気を持って1人1人がやってくれるか、そういったことに関しては、できるできないじゃなくて、経験の上ではアドバンテージを持っているかなという気がします。それともう1つは、いろんな立場の仕事をしてきたおかげで、ものすごく、サッカー仲間が世界中に、そして特にこの熊本は自分でも不思議なほどによく数多く足を運んで、多くのサッカー仲間がいます。そのサッカー仲間が多くいるということと、そういった経験は、ちょっとアドバンテージかなと思っています」
Q:過去にJ2で広島の監督を経験されていますが、当時と比べてJ2は制度も含めて変わってきていますが、現在のJ2の印象は?
「そうですね、制度の上でもずいぶん変わってきています。我々、J2の中でも確実にトップではないというクラブにとっては、今の制度はモチベーションをもつ上では有利になっているんじゃないかと思います。それと先日、ゲームを見せてもらって、これはJ2のというよりは日本のサッカーに置き換えてもいいかもしれませんが、明らかにレベルが高くなっている。その舞台の中でさらに上を目指さないと、このJ2の中で上位に行くことはできない。そういう厳しさの中でやらないといけないという風に、自分の中で覚悟を持っております」
Q:J2チームのプレースタイルの特徴はどう分析されていますか?
「これはチームによりけりですけれども、ここはある意味、J2を戦っていた時期と比較的似た部分もあるんですけどね、J2の方がどちらかと言ったら、勝点3のために要らない要素を捨てながら戦っているチームが多いんじゃないかなという印象を持っています。それがどういうサッカーかというのはチームによりけりで、中盤を省略して、とにかくどんどん前にボールが行くとか、そういうチームはあるなと。その中でどうやって戦っていくかというのは考えているところです」
Q:先ほど、地方こそ日本サッカーの将来を切り拓いていくとおっしゃいました。そこをもう少し詳しくお聞きできますか?それからセカンドウェイということをおっしゃっていて、地方クラブが大きなクラブに勝つというところに喜びを見いだしていらっしゃるのかなと思いますがいかがでしょうか?
「1つはそうですね、そういう首都圏のビッグクラブに勝つというのは自分の中で大きな夢としてあります。地方こそがと常に言い続けてきたのは、これはJクラブもそうですし、地方のいろんな育成の組織の中で選手を育てていけるようになっていこうと、日本サッカー協会の中にいる時にずっと言ってきました。地方でも地域の中でリーグを作って、その中でいい選手達がまた上のリーグをやっていく、皆が皆、強豪校とか名前のある所に出て行く必要は無いんだ、その中で十分育てられるんだと。そういう自信やプライドを持ってそれぞれが戦っていくと、必然的に日本のレベルは大きくアップする。それをずっと言い続けてきました。そういう意味では広島でも似たようなことをしていたかもしれませんけれども、広島の例で言うと、当時、資金の無いチームが多かった。資金が無いから育成をカットしようというチームが10チームのうち8チーム、9チームあったかもしれない。でも広島は、資金が無いからこそ育てなきゃいけない。そうやって、最初に行った頃は土日のたびに市町村を回って指導者と交流を持って、一緒に勉強したりしました。選手が皆、首都圏に出て行くとしたら、日本のサッカーの将来は無いと思っています。それでやっていけるんだ、そこからいい選手が育っていくんだと。で、ここで育った選手が赤いユニフォームを着て活躍する、それを見た小さい子ども達がそこに憧れを持つ。そんな循環が作れれば、すごくこの中で幸せですし、直接それを目的にしているわけではないにしても、それが日本のサッカーを大きく飛躍させることにつながるんじゃないかと信じております」
>>(2)へ続く