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【J1:第33節 C大阪 vs 鹿島】レポート:ホーム最終戦で存分に見せた『レヴィーセレッソ』のサッカー。しかし、鹿島の勝負強さに屈し、悲願の初冠の夢、断たれる(13.12.01)

勝点56で並ぶ4位C大阪と5位鹿島の上位直接対決は、終盤の85分に中村充孝のゴールで勝ち越した鹿島がC大阪を2-1と下した。この結果、同日敗れた首位横浜FMとの差を3に縮めた鹿島は、リーグ優勝の可能性をつなぎとめた。一方、ホーム最終戦、そして通算8シーズンという長きにわたって率いた桜色のチームに攻撃サッカーを植え付けたレヴィークルピ監督のホームラストマッチを、C大阪は勝利で飾ることができず。悲願の初タイトルの夢は、今季も叶わなかった。

ラストチャンス、酒本憲幸が放ったFKからの右クロスに、茂庭照幸がヘッドで合わせるも、ボールが無情にも枠を外れていった瞬間、扇谷健司主審によるタイムアップのホイッスルが鳴り響いた。今季C大阪J1ホームゲーム最多となる3万6361人を飲み込んだ大阪長居スタジアムは、そのとき、鹿島サポーターの一帯を除き、ほぼ全体が、言葉を失った。C大阪の放ったシュート数は15本。そのうちの半数以上は決定機といえるようなものだったが、奪えたゴールは柿谷曜一朗の1点のみ。セットプレーを2度、しっかりと活かした鹿島の前に、C大阪は敗北の現実を受け入れざるを得なかった。

ただし、レヴィークルピ監督は試合後の会見で冒頭、こう振り返った。「C大阪は本当に美しい、いいサッカーをしたと思うし、最後まで勝ちに行く姿勢を見せ続けた」と。百戦錬磨の名伯楽が、「選手たちが見せてくれた姿勢には、本当に満足している。まったく後悔するような内容の試合ではない」と讃えるように、C大阪は持ち味の攻撃サッカーを前面に出した内容で、鹿島を追い込んでいた。鹿島のエース大迫勇也にも、「試合を通して、ボールを触る回数は今年1番少なかった」と言わしめるほどに。しかし、「残念ながら、結果は最悪の結果が出てしまい、改めてサッカーとはこういうものなんだなと感じている」(レヴィークルピ監督)。

C大阪にとって痛恨だったのが、鹿島に先手を取られたこと。C大阪は先制点を取った試合で13勝6分負けなしと、圧倒的な数字を残しており、そのパターンに持ち込めなかったのは、悔いが残る要因。今季、これまでの6敗がすべて先手を取られたものだっただけに、なおさらだ。しかも、遠藤康のCKに競り勝ち、大迫のゴールをお膳立てした岩政大樹に、「最初、マンマークしてこなかったので、それなら『点を取りますよ』という感じ」と言われたように、隙を突かれたことも、もったいなかった。「先制されて、同点にして、そこからまたセットプレーでやられるという流れ自体が、悪かった」、リーグ最少失点を牽引してきた1人、山下達也も、悔しさをにじませた。

それでも、レヴィークルピ監督は、「今日、本当に選手たちが走りきっていた、中身が本当に詰まった最高のゲームだった。そして、一言で言えば、スペクタクルなゲームだった。これを、選手たちには伝えた」と、最後まで戦い抜いたイレブンを責めることはなかった。また、「曜一朗のゴールは、私が、これまでの歴代のJリーグのなかで、一番美しいゴールと呼べるものではなかったかと思う」と、38分に愛弟子が見せた、まるでバレーボールの1人時間差攻撃のような、右足での絶妙な2度のタッチでの技ありゴールを絶賛していた。

「理由がどうとか、そんなんはどうでもよくて、勝てなかったことが残念」という柿谷をはじめ、C大阪の誰もがこの一戦の大事さをよく理解していた。そして、本気でタイトルを狙っていた。だから、勝ちたかった。勝たなければいけなかった。『レヴィーセレッソ』を、クラブの、Jの歴史に刻むために。ただ、残念ながら優勝の2文字は達成できなかったが、すべてが終わったわけではない。「次、まだあるので、しっかりといい準備をして、勝てばACLの可能性とかもあるので、そこは気持ちを切らさずにやっていきたい」(山下)。最後まで何が起こるか分からない2013年シーズンのJ1で、つかみ取りたいもの、取れるものはまだ残っている。『レヴィーセレッソ』の集大成を示すべく、最終節での勝利を、イレブンは改めて誓っていた。

一方の鹿島は、山村和也が出場停止のなかでの試合で、序盤にジュニーニョが負傷交代を強いられたのをはじめ、前半のみで遠藤もケガの影響でダヴィとの交代を余儀なくされ、さらに、19試合ぶりのリーグ戦先発だった岩政も試合中に肉離れを起こしたなかでのプレーも重なり、まさに満身創痍の状態で戦っていた。それでも、ここ一番の勝負強さ、いわゆる『鹿島らしさ』は健在だった。GK曽ヶ端準の再三の好守をはじめ、守備陣は身体を張ってC大阪の猛攻を耐えると、前線では大迫やダヴィらが相手DFへ脅威を与えた。そして、最後は緊急出場の中村が値千金の決勝ゴール。
「いかに我慢して、耐えて、点を取るところで取れば、勝てると思っていたから」。大迫がそう言うように、チームには簡単に崩れない自信があった。その勝者のメンタリティーの差が、鹿島とC大阪の結果を左右したのかもしれない。「得失点差もあるし、そうなると、超攻撃的にいかなきゃいけないけど、でも、優勝を狙うしかない。そのために1年やってきたんだし、難しいとは思うけど、そこしか見ていない」、背番号9のエースも前を向くように、歴戦の王者は、あくまでホームでの逆転優勝だけを見据えながら、勝点3を手土産に、浪速の地を後にした。

以上

2013.12.01 Reported by 前田敏勝
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