ホーム最終戦に挑む大分は、大分銀行ドームで白星から見放されていた。今季リーグ戦ホーム初勝利のラストチャンスであったが、サポーターに勝利をプレゼントできずにシーズンを終了。試合後のセレモニーでは今季限りでクラブを去ることが決まった宮沢正史主将が、「この悔しさを忘れず来年はJ１に挑戦できるように、ここにいる選手がやってくれると思う」と、無念さと寂しさを抑えて力強く語った。田坂和昭監督はJ１で結果を出せなかったことを謝罪し、「全てにおいてめちゃくちゃ弱かった。選手、スタッフ、会社の力が足りなかった。ただ、これは過去のことであり、しっかり来季を見据えて前に進むしかない。この悔しさを天皇杯で晴らすためにもクラブ一丸となって戦う」と誓った。

この日の試合も劣勢に立たされる展開が続いた。圧倒的な攻撃力を誇る川崎Ｆに対し守勢を強いられるが、組織で対抗。前半は試合前のプランを着実に遂行した。個の力で局面を打開できる大久保嘉人、レナトに対し、パスの出どころを抑えた。４分、16分に警戒する２人に決定機を作られたが、それ以外は危ない場面はなかった。ただ、ロドリゴ　マンシャ、土岐田洸平が相次ぎ負傷し、交代を余儀なくされる不運に見舞われた。
後半はサイドチェンジで揺さぶられ、人数をかけてコンビネーションで崩しにかかる川崎Ｆの勢いは止められず、後半立ち上がりからさらに押し込まれる展開となった。しかし、GK清水圭介と高木和道、阪田章裕のセンターバック・コンビが牙城となり、中央を固め、相手の突破を許しても得点は許さなかった。
耐え続けた45分が終わり、アディショナルタイム５分も終わりに差し掛かったときに、一瞬足が止まった。右サイドを突破され、最後は相手エースの一撃に泣いた。試合終了間際に失点し、「今季を象徴するような試合となった」（田坂監督）。
４年ぶりのJ１は１年で幕を閉じ、Jリーグ史上初めてとなるホームで未勝利のままシーズンを終えることになった。

対する川崎Ｆは、ACL圏内に近づいた。試合前に上位陣が敗れたことを知り、選手の気持ちはひとつになっていた。「勝つことしか考えていなかった」と大久保の言葉通り、その高いモチベーションこそ、この日の勝利を手繰り寄せた大きな要因だった。

前半から大久保、レナトが相手ゴールを果敢に狙った。大分のハイライン＆ハイプレッシャーに手を焼くが、焦れて攻め急ぐこともなく柔軟に対応した。それでもゴールは遠く、２度もバーにはね返されたが「最後まで選手は勝利を諦めていなかった」（風間八宏監督）。
スコアレスでアディショナルタイムに入り、ラストワンプレー。田中裕介が右サイドを一気に駆け上がりクロスを上げる。一度は大分のDFにはね返されるも、レナトがつなぎ、最後は大久保がドリブルでシュートコースを作り迷うことなく右足をふり抜く。何度も練習で繰り返したパターンだった。ボールはネットに突き刺さり、２試合連続で劇的勝利を飾った。

風間監督は「どんなに攻めてもサッカーでは点が入らないことがあるが、選手が勝つことに執着していた。成長した証。確実にレベルが上がっている」と、充実の表情を浮かべて試合後の会見を後にした。「この勝点３は大きい。勢いの乗れる勝ち方をした」と大久保。最終節、ホームで首位の横浜FMを迎え撃つチームは、勝者にふさわしい気概を見せた。

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2013.12.01 Reported by 柚野真也