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【J1:第31節 鳥栖 vs 磐田】レポート:DF丹羽竜平のJ1初得点で鳥栖がJ1残留を決める。攻め続けた磐田はクラブ史上初のJ2降格に。互いに気持ちの入った好ゲームにスタジアムは酔いしれる。(13.11.11)

この日のベストアメニティスタジアムに訪れた人は11,118人だった。試合終了後には選手の健闘をたたえる歓声と拍手、そして、『ジュビロ磐田』コールがいつまでも続いた。リーグ戦残り3試合とところで、勝者の鳥栖はJ1残留が、敗者の磐田はJ2降格が決定した(※)。苦しみながらも勝点3を得た鳥栖、攻め続けながらもゴールが遠かった磐田。互いのサポーターは選手の健闘をたたえつつも、その心中にある気持ちには大きな違いがあった。

勝利が絶対的な条件であった磐田は立ち上がりにはその気持ちを見せていた。
開始早々にMF山田大記がミドルシュートを放つなど、勝利に対する執念はゴール裏に陣取った磐田サポーターに通じていたに違いない。しかし、その攻撃は長くは続かなかった。「前半、中盤のところというか、全体で、足が動いていないという・・・」(関塚隆監督/磐田)のがその要因であることも見て取れた。磐田の2本目のシュートは39分のFW前田遼一まで記録されていない。おそらく、この日の磐田には知らず知らずのうちに“プレッシャー”がかかっていたのだろう。前節のダービー戦で死闘を演じたが敗れてしまったことで、この試合には勝利しかなかったことが、彼らの足に重くのしかかってきたのだろう。ましてや、鳥栖が24分に先制点をあげたことで2点のビハインドとなり、さらに追い込まれた状態となったことも影響しただろう。前半に関して言えば、不用意なミスも多く、磐田らしさを出せずに過ぎた45分間だった。

ホームで磐田を迎え撃った鳥栖も勝利が絶対条件だった。「ホームでは負けられないし、自分たちで勝って残留を決めないと・・・」と主将のMF藤田直之はチームを代表して試合前に語ってくれた。その気持ちは攻守において感じることができた。13分にFW豊田陽平がヘディングシュートを放つと、前半だけで6本のシュートを磐田ゴールに浴びせていた。守備でも、前線からプレスをかけるシーンとしっかりと3枚のブロックを引いて磐田のパスコースを消すシーンを使い分けていた。

鳥栖がしっかりとした守備から入ると攻撃のオプションが広がるのは周知の事実。この日は、24分にサイドDF丹羽竜平が魅せてくれた。
「積極的に上がっていった中でボールが入ってきて『ラッキー』という感じ」(丹羽竜平/鳥栖)と彼らしい表現で謙遜するが、常日頃から積極的に攻撃に参加する彼らしいプレーがこの試合で得点という形で結果を出した。磐田から受ける重圧をこのゴールで一気に跳ね返し、前半の残りを鳥栖の時間帯と変えてしまうゴールであった。

この前半に上げた鳥栖の得点に対し、磐田は勝利のために2点が必要となった。
後半に入ると、シュート数、CK数で鳥栖をはるかに上回り、磐田らしい攻撃が見られるようになった。後半開始からMF山本康裕が、59分にはMF松浦拓弥が入って前線での動きが活性化した。48分には山本のシュートがポストに、85分には松浦のシュートはGK林彰洋の指先に止められるところまで攻め込んでいた。終盤のセットプレーには、GK八田直樹がヘディングシュートを放つなど、全員がビハインドを跳ね返し勝利に対する執念を出し続けた。しかし、鳥栖にも「何が何でも身体に当ててやろうと思って身体を投げ出した。みんなが『絶対に負けたくない、点を取らせたくない』という気持ちがあった」(小林久晃/鳥栖)からこそ、磐田にゴールを割らせなかった。

勝利に対する執念を随所にみせた試合だった。
そこに背負っているプライドと勝利という宿命を見ることができた。
結果から得る喜びは大きいが、反面残酷な影も持っていることは、選手だけでなく後押しするサポーターやファンも知っている。
試合終了後に磐田のゴール裏から、「苦しいときも、どんな状況になっても俺たちがついているぞ」と声が飛んだ。
その直後から『ジュビロ磐田』のコールが始まった。
チームが愛されている証拠であり、クラブがサポーターを大事にしてきた証拠である。
長くJリーグを牽引してきた磐田に未体験の歴史が刻まれることになったが、彼らが築いてきた栄光が消えることはない。
敗れはしたが、磐田が素晴らしいクラブと感じることができる試合であった。

勝者がいれば敗者がいるのが勝負の世界。
得点が入れば相手には失点となり、攻撃すれば相手は守備に回るのも道理。
そこに“歓喜”と“悲哀”が同居するサッカー。
リスペクトの気持ちを持って試合を観戦しなければ、真の楽しさを感じることはできない。
サッカーは、どんな状況でも感動を与えてくれるスポーツなのである。

以上

※Jリーグ理事会の承認をもって最終的に確定します。

2013.11.11 Reported by サカクラゲン
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