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【J1:第27節 鳥栖 vs 広島】レポート:“らしさ”を出すしたたかさで勝負が決した一戦。広島がカウンター2発で、鳥栖の連勝を止める(13.09.29)

“出端をくじかれる”とはニュアンスが違う気がするし、“足もとをすくわれた”とも感じない。これが、優勝争いをしているチームの“したたかさ”なのだろう。第21節から5勝1分と順調に勝点を上積みしていた鳥栖。今節を迎えるまで勝点16を上積みしたが、順位は14位のままだった。そして、今節広島に敗れはしたものの14位に踏みとどまっている。

自陣ゴール前を固めた相手に、鳥栖がどんな攻撃を仕掛けてくるのかが試される試合だった。出場停止明けのFW豊田陽平が1トップに戻り、前節の試合で幾度となくボールを引き出したMF野田隆之介が左MFの位置に入った。右MFには、前節の決勝点を挙げたMF金井貢史が入っている。果敢にゴールに突っ込んでいくFW池田圭はトップ下の位置で虎視眈々と狙っていた。ボランチ、両サイドDFともに展開力や攻撃参加を見せるタイプである。左右のワイドからでもクロスが入れば、何らかの動きは起きたはずである。しかし、この日の鳥栖はあと一歩のところまで攻め込むも、その一歩が出ず14試合ぶりに無得点に終わってしまった。

対する広島は、実に“らしい”形で得点を奪った。23分に、自陣右サイド深いところで鳥栖のボールを奪うと、同サイドのハーフウェイラインにいるMF高萩洋次郎に縦パス1本を通した。これを受けて、1トップのFW佐藤寿人に40m強のロングパスを送った。高萩にボールが入る前に、佐藤は鳥栖ゴール、いやセンターバック菊地直哉の裏に向けて走り出している。“いる”とわかって出したMFに、“来る”とわかって走り出したFW。奪ってから佐藤のシュートまでに数秒とかかっていない。いわゆる、“広島の得点パターン”なのである。

鳥栖が第21節から順調に勝点を上積みできた要因は、相手のボールに対して出し手にプレスを掛けてコースを限定し、受け手に人数を掛けて自由なプレーエリアを消していたことがあげられる。選手たちのコメントによく出てきた“選手間の距離”が良く取れていたのである。
しかし、この広島の先制点の時は、広島陣内に深く攻め込んでいるので、ボールを奪われた瞬間には守備のバランスは取りにくい。そこを広島に突かれたことになる。尹晶煥監督は、「ああいうシュートを打たれるとなかなか防ぎようがないかなと思いますし、佐藤寿人選手の決定力が非常に秀でていた部分として出たのかなと思います」と佐藤の能力の高さを認めた。

それでも、鳥栖はあきらめてはいなかった。他チームの結果次第では13位に順位を上げることも可能だっただけに果敢に攻め続けた。62分に池田のうまいトラップからのシュートはクロスバーに弾かれ、直後の金井のシュートはゴールを逸れた。ただ「今日は決定力の部分で足りないところがあって、追いつけなかったことがこういう結果を招いた(尹晶煥監督)」だけだ。

87分には、先制点同様に広島DFが鳥栖のボールを奪って前線に残っていたMF石原直樹に縦パス1本を通した。これを菊地直哉がペナルティエリア内で後ろから倒してPKを与えてしまった。決められたPKよりも、ここも攻め込んだ時の縦パス1本から得点を奪われたことの方が悔やまれる。結果はPKだが、やはり広島の得点パターンが出たのである。

終わってみれば、鳥栖のシュート本数は広島よりも多い。とはいえ「決定力の差」だけがこの試合の結果を左右したとも思えない。“得点の形”にどれだけ持ち込めたのかも大きな要因と考える。これならシュートまで行ける、という形に鳥栖はどれだけ持ち込めただろうか。多彩なボール運びも時折見せることはできたが、広島の3バックをどれだけ慌てさせただろうか。このあたりに、上位で戦っているチームと下位から這い上がろうとしているチームのしたたかさの差を感じた。

以上

2013.09.29 Reported by サカクラゲン
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