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【J2:第33節 熊本 vs 東京V】レポート:ミスから先制を許すも、粘り強く戦った熊本が東京Vに逆転勝ち。ホームで4カ月ぶりの2勝目で、順位を1つ上げた(13.09.17)

キックオフ直後。藤本主税がボールを前に転がしてインプレーになると、養父雄仁が右足で思い切ってファーストシュートを放つ。距離にして約50m。枠こそ捉えていたものの勢いは落ち、東京VのGK佐藤優也がキャッチするのはそう難しいことではなかった。しかしこのプレーにも表れているように、この試合では、ここ最近でも特にゴールへの意識が高かったように思われる。実際、シュート数は東京Vの9本に対して熊本は14本である。

ともに3バックの形を採っていることから、左右タッチライン際での攻防が鍵を握ると予想された一戦は、それぞれが左サイドで優位性を持ってお互いに攻め合う展開。それでも「立ち上がりは相手の背後を取って引き込んでいくという部分で、(相手が)嫌がってたなという感じはある。いいところにボールも落ちてたし、相手のDFの処理も少しモタモタしていたので、東京Vのパスワークはある程度、減らすことはできたんじゃないかと思う」と池谷友良監督が話した通り、前の選手のプレスバックも含めていい守備ができていたことで熊本がペースを掴み、東京Vに決定的な形を作らせない。

だが一瞬の隙を東京Vは逃さなかった。28分、熊本が押し込んでのスローインの流れからセカンドボールを拾った原田拓は、後ろ向きの状態で逆サイドへ展開しようとしたが、それをカットしたのが大津高の先輩にあたる巻誠一郎。巻は迷わず左のスペースへ抜けた常盤聡へ開くと、これを受けた常盤はゴールへ向かって加速。熊本のDF陣も戻って対応し、ファーには巻も詰めていたが、常盤は思い切ってシュートを選択。左足から放たれたボールは吉井孝輔が出した足の間を抜け、GK南雄太が伸ばした左手もかすめてマウスに吸い込まれた。

先制したことで東京Vの攻撃にも勢いが増したが、熊本も慌てなかった。攻撃に関しては左の片山奨典や藤本がタイミング良く井林章の背後を取る形でボールを引き出しており、24分、失点直後の30分と形を作っている。これが得点に結びついたのが37分。片山のクロスに対し、「(大迫)希から声がかかって、自分は角度が良くなかったんで、任せようと」藤本がスルー。アウトサイドからゴール前に入ってきた大迫希は「GKの体重移動が見えた」と、落ち着いて左足で流し込み同点に。クロスに対して逆からも入って人数をかけることは、トレーニングでも意図していたこと。序盤から執拗に左、つまり東京Vの右を突き、繰り返し形を作った成果だ。

後半、熊本は右足首を痛めた筑城和人に代えて藏川洋平を左のストッパーへ。その後藤本を下げて、再合流して間もないウーゴを前線に投入。一方、東京Vも巻から高原直泰にスイッチして双方追加点を奪いに出るが、ともに中盤のスペースが空いてプレッシャーのかからないオープンな展開となる。加えて、両チームにイージーなミスが目立ったのも事実で、熊本は61分にウーゴのタメから養父とつないで齊藤和樹、62分にも黒木晃平がシュートチャンスを迎えたがいずれもGK佐藤の正面。東京Vも69分に右から、熊本のミスを突いた74分に高原、さらに78分に西紀寛と決定機を作るがゴールは割れない。
そうした中、均衡が破れたのは82分。自陣から勢いを持ったドリブルでボールを運んだ黒木とウーゴが中に入る動きで相手を引っ張り、サポートについた養父へ落とすと、養父は右のスペースへフリーで入ってきた齊藤へワンタッチで流す。これを受けた齊藤はワンフェイクで持ち直し右足でシュート、ボールはネットに突き刺さり、遂に熊本が逆転。4分間のアディショナルタイムで東京Vもチャンスは作ったが追いつけず、熊本が逃げ切って8試合ぶりの勝利を挙げた。

先制して優位に運んだ東京Vにとっては、守備の甘さと最後の精度の問題が浮き彫りになった一戦。「攻撃的なサッカーをやれば、守備のところ、ビルドアップのところで微妙なタイミングになったり、またはミスというものが起きてくるもの。だからといってミスしていいわけではないと思いますけど、それ以上に決めるときにしっかり決める、これが非常に大事になってくる」と三浦泰年監督は話し、飯尾一慶も「自分たちがやってきた結果なので、そこは素直に受け止めて、残り9試合、全力でやっていくしかない」と述べた。次節は福井諒司と西を出場停止で欠く状態で千葉との決戦を迎えるが(9/23@駒沢)、J1昇格プレーオフ進出圏に食い込むためにも確実に勝点を積み上げたい。
熊本にとってはリーグでの連敗を止める大きな1勝。順位は1つ上げたにとどまり、まだ厳しい状況に置かれていることに変わりはない。しかし試合後に藤本が話したように「ゲームの中で感じたことを伝え合って反映させ、中での状況を見ながら、変えるところは変えて臨機応変にできた」ことはプラスに捉えたい。加えて、大迫、齊藤と若い選手が試合を決める働きをしたこともチームを前に進める大きな力となる。「誰が出ても変わらない仕事をしてくれて、そういう意味で全体のレベルが上がってきているし、気持ちも同じレベルにある」と池谷監督は話したが、試合後のゴール裏スタンドに集ったサポーターも、おそらくその思いは同じだ。いよいよリーグ戦も残り9試合。これからが本当の勝負である。

以上

2013.09.17 Reported by 井芹貴志
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