５月吉日。株式会社ファジアーノ岡山スポーツクラブから、「政田サッカー場クラブハウス内覧会のご案内」と書かれた１枚のハガキが届きました。これは28万人以上の署名のおかげで練習場とクラブハウスが整備されたことへ、クラブの感謝の気持ちとして、スポンサー、株主、ファンクラブ会員の方々に送られた招待状です。オープンから約２カ月後の開催となったのは、今年４月の竣工で、リーグ戦を戦いながら引っ越しの作業を行なっていたため、この時期になってようやく準備を整えることができたということです。

しかし訪れる人にとっては、まっさらの、未だ使われていないクラブハウスを見学するより、憧れの選手たちの使用感のあるクラブハウスを見学するほうが断然、見応えがあります。受付では落成記念のハウス内マップ入りのクリアファイルをプレゼントされ、続いてラウンジ的空間が用意されていました（写真１）。壁面には選手たちの目標が掲げられ、Ｊリーグに昇格した２００９年からのポスターも飾られています。また今季のプレー映像が背景に流れる中、ファジカラーのワインレッドのクロスがかけられたテーブルには、ゲストを迎えるにふさわしいブーケとスウィーツがセッティングされ（写真２）、クラブスタッフとボランティアスタッフがお茶を用意してくれます。

ハウス内を順番に見学します。縦に長いクラブハウスは、通路の左右に部屋が設けられています。コーチングスタッフ室、会議室に続いて、トレーニングルームへ。しかしトレーニングバイクマシーンとバランスボールはありますが、まだ器具が揃っていないため、広々としたスペースはトレーニング前のストレッチ等で利用されているそうです。その向かいにある休憩室（写真３）はカーペット敷きにソファが２つ、まだ配線がつながっていないテレビが２台あり、快適な印象です。選手たちが２部練習の合間に過ごすとのことですが、「クラブハウスができてから、ＤＦで話をする機会が増えたんです」と教えてくれた竹田忠嗣選手たちは、ここでミーティングをしているのかもしれません。

さらに進むと、鮮やかなファジカラーのロッカールーム（写真４）、続いて温浴槽、冷浴槽とシャワーを完備したバスルーム、通称「政田風呂」（写真５）があります。影山雅永監督が連戦の最中、「田中奏一なんかがキャッキャ言いながら冷水に首まで浸かってましたよ」と言われてましたっけ。もうひとつ小さめのロッカールームが用意されていますが、これはＣ契約選手や若手選手のためのもの。「あっちの専用ロッカールームに行くんだ！」というモチベーションも自然と湧いてくる仕組みです。建物のいちばん奥は、選手とコーチングスタッフの入口になっており、使い勝手がいいようにアイシングに使う製氷機と容量30kgの洗濯機が置かれた洗濯部屋があります。

内覧会に訪れた方に話を聞いてみました。岡山市在住のかおるさんは「選手がこんないい環境で過ごせているんだ、と思うと感激して３往復もしちゃってます。チームの雰囲気の良さは、ここに来ればわかりますね。目に焼き付けて帰ります。ここを作ってくださった岡山市と署名してくださった方々、ほかのクラブのサポーターの方々に心からありがとう、と言いたいです」。

クラブハウスの外では天然芝コートの一部と人工芝コートが開放されていました。天然芝の上で素足で立ってみる人、寝転んでみる人、にんまりされています。人工芝のコート（写真６）にはボールが用意され、小さなお子さんや、「ＰＫ、ＣＫ、スローイン、やりたかったことはすべてやってみました」と教えてくれた若いお嬢さんもいました。

２０１０年夏に始まった「ファジアーノ岡山の専用練習場整備を要望する署名」は、３カ月間で28万４６７３名の署名を集め、２０１３年春、政田サッカー場とクラブハウスはオープンしました。そしてこの日、政田サッカー場クラブハウス内覧会に訪れたのは１０４２人。昂揚する気分の中で、１００年以上続いていくクラブの歴史が今、目の前にあるのだ、という思いを強くした一日でした。

３月31日、政田サッカー場オープンに際しては、株式会社ファジアーノ岡山スポーツクラブ代表から、このようなコメントがクラブホームページに掲載されました。

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2013.05.30 Reported by 尾原千明