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【J2:第16節 神戸 vs 鳥取】レポート:神戸の良さを消した鳥取の戦略。首位陥落と13試合ぶりの白星はこうして生まれた。(13.05.27)

試合後、神戸のポポはこんなコメントを残している。「(今日の鳥取は)取ったボールを前に蹴り、ワンチャンスをものにできたらというサッカーをやろうとしていたと思いますし、狙い通りの戦い方を相手がやった、それだけだと思います」。

実際、鳥取は守備ラインを下げてブロックを組み、ボールを奪うと迷わず前へ。それを住田貴彦、永里源気、久保裕一が必死で追うシーンも目立った。だが、本当に“ワンチャンスをものにできたらいいな”というだけのサッカーだったのだろうか。鳥取の小村徳男監督は「神戸の良さを消すようなプランで戦って、それがある程度ハマった」と振り返っている。シュート数を見ても神戸15本に対して鳥取11本と大差はない。64分に神戸が岩波拓也の退場で数的不利になった影響もあるが、後半のシュート数だけを見れば鳥取が2本上回っている。鳥取が単に神戸の良さを消すだけではなく、攻守を連動させていた証拠と言えるかもしれない。

例えば、29分過ぎ。DFとボールの間に身体を入れてドリブルする住田の突破に対し、神戸の岩波がユニフォームを引っぱってイエローカードを受けたシーン。鳥取はこのシーンの約10分前から起点を右サイドにボールを集めて何度か突破を試みた。おそらく密集する中央を避けたのだろうが、このエリア、つまり神戸の大屋翼が高い位置を保つことで、神戸の左サイドにスペースができることを選手たちは共通理解していたと思われる。また、神戸はボランチのエステバンがこのエリアのカバーリングをして難を逃れていたが、逆に言えばエステバンを突破すればビッグチャンスになる。32分にはボールを保持していたエステバンに、鳥取のボランチ田中雄大と住田が素早く寄せて高い位置で潰すことにも成功している。そして直後の34分にゴールが生まれた。

鳥取はセンターラインやや後方で、神戸のマジーニョに約4人でプレスをかけ、横パスをインターセプトすると再びボールを右サイドへ展開。左サイドから右に流れていた永里源気がタテへの突破を仕掛ける。それに反応したエステバンに一度はカットされるが、そのこぼれ球を尾崎瑛一郎が拾って敵陣深くボールを運ぶ。高い位置にいた大屋の戻りが間に合わず、フリーでボールを持った尾崎はドリブルでためを作って味方の上がりを待ってセンタリング。ファーサイドに走り込んだ久保が頭で合わせてアウェイの鳥取が先制に成功した。ボールの追い込み方から得点まで、絵に描いたようなカウンター劇だった。

後半に入っても鳥取は、神戸の猛攻をしっかりブロックを組んで守りながら、外から中へ向かうドリブルを多用するマジーニョからボールを奪える時は奪ってカウンターを仕掛けた。神戸もリズムを変えようと55分にボランチの田中英雄に代えて橋本英郎を投入。神戸の安達亮監督の狙いは次の通りだ。「田代とポポが横並びになっている時間が長かったので、田代を一番前にして、ポポとマジーニョを1.5列目に。(中略)小川をちょっと左側から離して。すると真ん中がぽっかり空いてしまうので、ボランチのエステバンと橋本が2人並んでいるよりは前後に並んだ方がいいかなと思って」。つまり、マジーニョを一つ前のエリアでプレーさせ、鳥取のブロックをこじ開けるようなイメージだろう。

だが、その狙いも10分足らずで変更せざるを得なくなる。64分に前半と同じような形で、神戸の岩波がこの試合2枚目のイエローカードを受けてピッチを去り、攻守のパイプ役として入った橋本英郎がセンターバックに下がらざるを得なくなったからである。
そして神戸は、74分に有田光希、78分に都倉賢を立て続けにピッチへ送り込み、パワープレーで1点を狙いに行ったが最後までゴールをこじ開けられず。岩波の退場があったとはいえ、全体的に鳥取がプラン通りに試合を運んだ一戦となった。

自分たちの良さを全面に出すのではなく、相手の良さを消すサッカー。特にJ2ではよく見られるケースだが、試合後に岩波は「自分としては、あまりああいう相手と今季戦ったことがなかったので…」と話している。だが、これに勝っていかないとJ1昇格はない。スカウティングがさらに進む今後は、もっと厳しい戦いも予想される。今季ホーム初黒星で首位陥落という結果になってしまったが、神戸がこの敗戦でつかんだ教訓はきっと大きな財産になるに違いない。
また、13試合ぶりの歓喜となった鳥取は、この金星を浮上のきっかけにしたいところ。アウェイ水戸戦を控える神戸、ホームで松本山雅を迎える鳥取、共に次節の戦いは大事な一戦になりそうだ。

以上

2013.05.27 Reported by 白井邦彦
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