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【J2:第6節 札幌 vs G大阪】レポート:ともにポゼッションを重視して挑んだ試合は、自力で優るG大阪が完勝。(13.04.01)

「トータルで言うと力の差を感じた」。試合後の会見で札幌の財前恵一監督は、そうシンプルに振り返っている。シュート数は15本対14本と札幌が上回ったものの、中身としてはアウェイのG大阪がホームの札幌を圧倒した試合だった。

G大阪は言わずと知れたパスサッカーのチーム。技術力の高い選手を複数揃え、緩急をつけたパスワークで人数をかけて攻め込んでいく。特にこの試合では日本代表のW杯予選でチームを離れていた主軸の遠藤保仁が今野泰幸とともに復帰をしており、その攻撃はよりバリエーションが増すことが予想された。

そんなG大阪に対し、札幌も果敢にポゼッションサッカーで勝負を挑んだのである。ただし、ここで言う札幌のポゼッションの意図はボール支配で相手を上回ろうというのではなく、「相手に支配される時間帯が多くなるはず。だからこそ、少ない自分達の攻撃時にはマイボールを大事にしなければいけない」(財前監督)。攻撃力のあるG大阪に対して簡単にボールロストをしてしまうようでは、終始押し込まれる展開を強いられてしまう。そうした状況を避けるべく、札幌はポゼッションを意識した。

そうした志向はメンバー選考にも反映されていた。この日の札幌は左右MFに宮澤裕樹、上里一将というゲームメーカータイプの選手を配置。本来は攻撃の起点を担うタイプの選手をアウトサイドにも配置することでキープ力を高めようと考えたのだろう。
そして立ち上がりの4分過ぎ、札幌は最終ラインと中盤との交換で10本以上のパスをつなぎ、それを最後は右サイドを駆け上がったサイドバックの上原慎也へと渡してチャンスを演出してみせた。攻撃力の高いチームを相手にした場合、堅守速攻の戦い方を徹底するのもひとつのやり方だが、札幌はできるだけ自分達のスタイルを打ち出そうとしていた。

両者がともにパスをつないで攻めるゲーム。非常にテクニカルで見応えのある展開でスタートしたのだが、時間が進むにつれてパワーバランスにズレが生まれ出した。G大阪が力技で押し込むようになってきたのだ。
パスをつなぐ意図は見て取れるものの、パス交換の大半が自陣かセンターサークル付近という札幌に対し、G大阪はダイナミックに札幌陣内でボールを動かす。そこが両者のポゼッションの差であり、ゲーム展開にモロに反映されていく。

G大阪は、軽快な動きを見せていた攻撃的MFの倉田秋がバイタルエリア付近の狭い場所でも積極的にパスを呼び込み、ここに遠藤から正確なパスが入るプレーをスイッチとして攻撃がスピードアップ。サイドバックの加地亮、藤春廣輝も強引に敵陣へと飛び出していく。敵陣でパスを動かすプレーというのは、攻撃を活性化させるだけでなく、相手のラインを押し下げることもできる。やはり、G大阪の攻撃は力強かった。

そして43分、倉田のクロスにレアンドロが合わせてG大阪が先制し後半に折り返すと、ここからは運動量が落ちた札幌に対し、テンポよくパスを回して完全に主導権を掌握してしまう。
59分に二川孝広からの浮き球のパスを、家長昭博が左足で豪快に蹴り込んで加点すると、81分には岩下敬輔がヘッドで押し込んでG大阪が勝負を決めた。

「相手のポゼッションに翻弄されてなかなかボールを奪いに行けなかった」。札幌の財前監督は敗因のひとつとして、この部分を挙げた。試合中に2人の負傷退場者が出てしまった不運もあるが、やはりG大阪のパスワークを封じきれなかったことが大きかったということなのだろう。

「今日みたいなサッカーができれば、次の試合も勝てると思う」と遠藤は満足げに試合を振り返った。開幕からここまで、なかなか勝ちきれない試合が続いていたG大阪だが、この試合が一気に調子を上げるきっかけになるかもしれない。順位も3位としており、今後もJ2の絶対的な注目チームであることは間違いない。
そして敗れた札幌だが、相手との力関係により結果としてカウンター中心の攻撃となってしまったものの、G大阪を相手にもグループとしてボールを動かして攻めようという姿勢は興味深いものだった。チームとしての連係や質が高まれば、より高いエリアでパスを動かせる攻撃的なチームへと成長する可能性も秘めているだろう。そしてもちろん、注目を集める存在になる可能性も秘めている。
いずれにせよリーグはまだ6節が終わったばかりで、「今の順位はほとんど気にしていない」と今野が話すように、まだ何も決していない。両チームの今後の戦いぶりを楽しみにしたいところだ。

以上

2013.04.01 Reported by 斉藤宏則
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